田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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変わろうとする者

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 その後、持っていたタオルで身体を包み、二人を野営地へと送っていく。

 幸い、誰にも見られることなく到着して……砦にいる女性の兵士に受け渡した。

「いやいや、危険が危ないところだった」

「それでは、意味が重複してる気がするが?」

「あっ、レオン……少し混乱中です」

 俺だって年頃の男の子。
 二人共タイプは違うけど、可愛い女の子だ。
 あんな姿を見ては冷静ではいられない……レオンの接近に気づかなかったくらいだ。
 むしろ、よくここまで頑張ったと褒めてあげたい。

「ふむ、どうやら何かあったようだ」

「それは内緒です」

「くく、それは面白いことがあったようだ」

「と、とにかく、俺は少し走ってくる!」

 そして、俺は煩悩を振り払うように野営地の外に走り出すのだった。



 ◇


 ……くそっ、自分が情けない。

 幼い頃から槍と炎魔法を鍛えて、ようやく身を結んできた。

 Sクラスにも入れたし、その中でも上位だという確信がある。

「それがどうだ? ……森の中で迷い、罠にかかり……まさかの時間切れとは」

 怪我を負うような真似はしていないが、それでも情けないことに変わりはない。
 これでは、成績にも響くだろう。

「冒険者になどなるつもりはないが、やはり実績は欲しい」

 何よりなれるのにならないと、ただなれないのでは意味が違う。
 他の奴らに馬鹿にされないためにも、親族から見限られないためにも手柄や実績が必要だ。

「だというのに……!」

 入学してから良いとこなしだ。
 獅子族とはいえ獣人に打ち勝てないわ、更にユウマ殿ような強者がいる。
 セリス殿の実家にも申し込んでいるが……あまり良い返事は貰えていない。

「このままだと役立たずの烙印を押されてしまう……!」

 ただでさえ第二王子という、第一王子の代用品という立場だ。
 最悪、王太子になれなくても何かしらの形が欲しい。
 ……俺が存在して良い理由が。

「そんなことは、母上の前では言えんがな」

 あの人は俺が王太子になることしか考えていない。
 俺が付き合う人や立場を勝手に決めてくる。
 それは俺のためではなく、自分の欲望のためだというのはわかっていた。

「……それでも、たった一人の母親だ。出来るだけ願いを叶えたいと思うのはいけないだろうか? そもそも、俺には親しい人もいない」

 俺に寄ってくるのは甘い蜜を吸おうという者ばかり。
 側近と呼べる者もいなければ、友と呼べるような者もいない。

「はっ……腰巾着なら、いくらでもいるがな。だが、わざわざ俺を探してくれるような者はいない」

 こうしてひと気のない場所に寄りかかっているが、誰も探しには来ないくらいだ。
 これでも、腐っても第二王子だというのに。
 所詮、何も持っていない俺など価値はないのだろう。

「そういえば。ユウマ殿のパーティーは一番の成績だったとか。チームワークも抜群で、いつのまにか仲間が増えていたな……まだ、ここに来たばかりだというのに」

 今思うと、俺に対しても自然に接していた。
 そういうところが、人を惹きつけるのかもしれない。
 少し、羨ましく思う。

「……あのように生きられたなら楽なのだろうか。俺も、獣人と仲良くしたり、もっとパーティーメンバーと仲良くするべきだったか」

 だが、今更そんなことをしていいのか。
 そもそも、周りが許してはくれまい。
 俺は今まで、散々好き勝手にやってきてしまった。

「もういいか……手柄とか、王太子とか……ん? 何やら騒がしい?」

 建物と建物の間にいる俺に、その会話が聞こえてくる。

「何だって!?」

「声が大きい……! 生徒達に聞かれたらどうする……!」

「す、すまん。しかし、本当か? ……魔物の群れが押し寄せているというのは」

「ああ、本当だ。何方向からか、こちらに迫ってきているらしい」

 ……なに? ここに魔物の群れが来ている!?

 「ここ最近の魔物の活性化と関係が?」

「いや、それはわからない。ただ、すぐに生徒達にも気づかれるはずだ。今のうちに、態勢を整えるぞ」

「すまないが、話は聞いた」

 俺は隠れるのを辞め、二人の兵士の前に出る。

「こ、これはカイル様!」

「聞いていたのですか……」

「その戦い、俺にも協力させてくれ」

「それは……どうする?」

「しかし、王子を戦わせるわけには……」

「これは命令と思ってくれて良い」

 気分は良くないが、ここは押し通させてもらおう。

 手柄とか実績とかは、この際置いておく。

 ただ……このまま帰っては、不甲斐なさで自分を許すことができそうにない。
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