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……ど、どうしよう?
てっきり、いつもみたいにほっぺをつねられると思ってた。
俺の両手はアワアワとし、彼女に抱きしめられるままになる。
「あ、あのー、セリスさん?」
「ふぅ、すっきりしたわ」
そう言い、ようやく俺から離れる。
ちなみに、俺はずっとドキドキしっぱなしです。
「それならいいけど……良く頑張ったね」
「ありがとう。ユウマ達も手を出さないでくれて助かったわ。これで、少し自信がついたかも」
「本来の力を発揮すれば、セリスの敵じゃないからね。それじゃ、先に進む?」
「ええ、この感じで行くわよ」
俺達は再び隊列を組んで、森の中を進んでいく。
そして、十分くらい経ち……わかりやすくガサガサという音がした。
「今度の奴は速い! すぐにやってくるぞ!」
「わかったわ! 各自、現れ次第対処! カレン! もしもの時は魔法の許可を出すわ!」
「はいっ!」
俺が何も言うことなく、それぞれきびきびと行動する。
その姿は、前線で共に戦った兵士達には劣るけど頼り甲斐があった。
このメンバーだったら、冒険者活動とか出来そうだ。
「来るぞ! ……コボルト達だ! 合計で四体いる!」
「ガウッ!」
「グルルー!」
ゴブリンとは違い、俊敏な動きで迫ってくる。
一応、ランク的にはゴブリンより高い。
さて、敵の動きが早いけど……慣れないセリスには荷が重いかな?
「セリス、どうする?」
「カレン! いける!? 一体を倒して欲しいわ!」
「はいっ! すぅ……聖なる光の矢よ、敵を射貫け——ライトアロー!」
カレンが光の矢を放ち、それが見事にコボルトの頭に命中する。
そして、一撃で魔石となった……流石は魔物特攻があると言われる光属性だ。
逆に、普通の魔獣には効きにくいというリスクもあるけど。
その場合は、普通の魔法使い……俺みたいのが対応すればいい。
「カレン、ありがとう。それじゃ、あとは各自で一体ずつ!」
「「了解!」」
俺とレオンが同時に返事をして前に出る。
そのまま、交差し……敵の首が落ちた。
居合をした俺は、血をぬぐい鞘に収める。
「ふんっ、こっちも終わったぞ。今度は同時だったか」
「そうみたいだね。そして、今回はセリスもだよ」
振り返ると、既にコボルトを倒したセリスがいた。
どうやら、俺が心配するまでもなかったみたい。
「ようやく、身体が動いてきたわ。さあ、どんどん行くわよ」
「おっ、さっきまで弱々しいセリスとは大違……いひゃい」
「ふふ、何か言ったかしら?」
「にゃんでもないです」
結局、ほっぺを引っ張られることになりましたとさ。
◇
そのまま進んでいき、お昼近くになる。
「ふぅ……少し疲れたわね。二人はともかく、カレンは平気?」
「へ、平気ですっ」
「……私が疲れたから休むとしましょう」
「そうだね、俺もお腹減ったし」
カレンはまだ少し身体が硬いし、自分が足を引っ張るかと思って強張っている。
セリスの提案の仕方は、隊長として理にかなっていた。
うんうん、やっぱり向いてるよね。
「そうなると、休憩する場所が必要になるわ。水辺がいいかしら? 確か、貰った地図に休憩用の川が記されていたし。ユウマが水魔法を使えるとはいえ、それはいつもとは限らないもの」
「うん、それがいいと思う」
「それなら、我の出番だな……水の音……こっちだ」
「それじゃ、編成を変えるわ。レオンを先頭に、私、カレン、ユウマにしましょう」
それぞれが頷き、レオンの先導に従って歩き出す。
その動きには迷いはなく、確実に場所がわかっているようだ。
「なるほど、獣人がいると俺は魔法を使わなくてもいいんだ」
「いつもは風の結界?とかを使ってるって言ってたものね」
「その通りです。あれを使わないだけで、だいぶ楽になるよ」
これは貴重な経験だ。
冒険者になるとしたら、獣人を一人は入れたいな。
レオンは王族として来てるから無理かもだけど……アルトならどうかな?
今度、誘ってみようっと。
「そういえば、ユウマさんの魔力ってどれくらいなんですか? わたしはまだ慣れてないのか、下級魔法を二十回くらい使うと一度枯渇しちゃうんですけど」
「カレンは目覚めたのが最近だから仕方ないよ。俺はどれくらいだろう……試験の時に会長に出した魔法は覚えてる?」
「は、はいっ、あの水の龍ですね」
「あれを三回は撃てると思う」
「へっ? あ、あれって上級魔法ですよね?」
「うん、あれは水魔法の上級魔法だね」
魔法は下級、中級、上級、王級、神級の五段階ある。
神級は使える者が少ないので、ほぼ王級が最強クラスの魔法だと言われている。
大体、中級魔法一回の魔力が下級魔法十回に値する。
同じように、上級魔法一回は中級の十回に値するということだ。
「そ、そうなると、下級魔法を三百発撃てるってことに……凄いです」
「いやいや、それは小さい頃から鍛錬してたから。カレンも、すぐに出来るようになるよ。魔力を枯渇を繰り返しては回復を待って、さらに枯渇を……」
「ちょっと、無茶を言わないでよ。そんなことしたら死んじゃうわ。そもそも学生で上位に入る会長だって、上級は一回撃てるかどうかだって言ってたし。カレン、この規格外は放って私達は地道に頑張りましょう」
「えへへ、それもそうですねっ」
あれ? あの鍛錬って常識ちゃなかったの?
俺はエリスに『皆やってることですから』と言われ、ひたすらその鍛錬をさせられたのに。
帰ったら文句言ってやる……返り討ちにあうのはわかってるけどね!
てっきり、いつもみたいにほっぺをつねられると思ってた。
俺の両手はアワアワとし、彼女に抱きしめられるままになる。
「あ、あのー、セリスさん?」
「ふぅ、すっきりしたわ」
そう言い、ようやく俺から離れる。
ちなみに、俺はずっとドキドキしっぱなしです。
「それならいいけど……良く頑張ったね」
「ありがとう。ユウマ達も手を出さないでくれて助かったわ。これで、少し自信がついたかも」
「本来の力を発揮すれば、セリスの敵じゃないからね。それじゃ、先に進む?」
「ええ、この感じで行くわよ」
俺達は再び隊列を組んで、森の中を進んでいく。
そして、十分くらい経ち……わかりやすくガサガサという音がした。
「今度の奴は速い! すぐにやってくるぞ!」
「わかったわ! 各自、現れ次第対処! カレン! もしもの時は魔法の許可を出すわ!」
「はいっ!」
俺が何も言うことなく、それぞれきびきびと行動する。
その姿は、前線で共に戦った兵士達には劣るけど頼り甲斐があった。
このメンバーだったら、冒険者活動とか出来そうだ。
「来るぞ! ……コボルト達だ! 合計で四体いる!」
「ガウッ!」
「グルルー!」
ゴブリンとは違い、俊敏な動きで迫ってくる。
一応、ランク的にはゴブリンより高い。
さて、敵の動きが早いけど……慣れないセリスには荷が重いかな?
「セリス、どうする?」
「カレン! いける!? 一体を倒して欲しいわ!」
「はいっ! すぅ……聖なる光の矢よ、敵を射貫け——ライトアロー!」
カレンが光の矢を放ち、それが見事にコボルトの頭に命中する。
そして、一撃で魔石となった……流石は魔物特攻があると言われる光属性だ。
逆に、普通の魔獣には効きにくいというリスクもあるけど。
その場合は、普通の魔法使い……俺みたいのが対応すればいい。
「カレン、ありがとう。それじゃ、あとは各自で一体ずつ!」
「「了解!」」
俺とレオンが同時に返事をして前に出る。
そのまま、交差し……敵の首が落ちた。
居合をした俺は、血をぬぐい鞘に収める。
「ふんっ、こっちも終わったぞ。今度は同時だったか」
「そうみたいだね。そして、今回はセリスもだよ」
振り返ると、既にコボルトを倒したセリスがいた。
どうやら、俺が心配するまでもなかったみたい。
「ようやく、身体が動いてきたわ。さあ、どんどん行くわよ」
「おっ、さっきまで弱々しいセリスとは大違……いひゃい」
「ふふ、何か言ったかしら?」
「にゃんでもないです」
結局、ほっぺを引っ張られることになりましたとさ。
◇
そのまま進んでいき、お昼近くになる。
「ふぅ……少し疲れたわね。二人はともかく、カレンは平気?」
「へ、平気ですっ」
「……私が疲れたから休むとしましょう」
「そうだね、俺もお腹減ったし」
カレンはまだ少し身体が硬いし、自分が足を引っ張るかと思って強張っている。
セリスの提案の仕方は、隊長として理にかなっていた。
うんうん、やっぱり向いてるよね。
「そうなると、休憩する場所が必要になるわ。水辺がいいかしら? 確か、貰った地図に休憩用の川が記されていたし。ユウマが水魔法を使えるとはいえ、それはいつもとは限らないもの」
「うん、それがいいと思う」
「それなら、我の出番だな……水の音……こっちだ」
「それじゃ、編成を変えるわ。レオンを先頭に、私、カレン、ユウマにしましょう」
それぞれが頷き、レオンの先導に従って歩き出す。
その動きには迷いはなく、確実に場所がわかっているようだ。
「なるほど、獣人がいると俺は魔法を使わなくてもいいんだ」
「いつもは風の結界?とかを使ってるって言ってたものね」
「その通りです。あれを使わないだけで、だいぶ楽になるよ」
これは貴重な経験だ。
冒険者になるとしたら、獣人を一人は入れたいな。
レオンは王族として来てるから無理かもだけど……アルトならどうかな?
今度、誘ってみようっと。
「そういえば、ユウマさんの魔力ってどれくらいなんですか? わたしはまだ慣れてないのか、下級魔法を二十回くらい使うと一度枯渇しちゃうんですけど」
「カレンは目覚めたのが最近だから仕方ないよ。俺はどれくらいだろう……試験の時に会長に出した魔法は覚えてる?」
「は、はいっ、あの水の龍ですね」
「あれを三回は撃てると思う」
「へっ? あ、あれって上級魔法ですよね?」
「うん、あれは水魔法の上級魔法だね」
魔法は下級、中級、上級、王級、神級の五段階ある。
神級は使える者が少ないので、ほぼ王級が最強クラスの魔法だと言われている。
大体、中級魔法一回の魔力が下級魔法十回に値する。
同じように、上級魔法一回は中級の十回に値するということだ。
「そ、そうなると、下級魔法を三百発撃てるってことに……凄いです」
「いやいや、それは小さい頃から鍛錬してたから。カレンも、すぐに出来るようになるよ。魔力を枯渇を繰り返しては回復を待って、さらに枯渇を……」
「ちょっと、無茶を言わないでよ。そんなことしたら死んじゃうわ。そもそも学生で上位に入る会長だって、上級は一回撃てるかどうかだって言ってたし。カレン、この規格外は放って私達は地道に頑張りましょう」
「えへへ、それもそうですねっ」
あれ? あの鍛錬って常識ちゃなかったの?
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