田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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昔のセリス

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 その後、満足したのかガレスさんが帰ってくる。

「いや、すまんのう」

「いえいえ、バルムンクも嫌がってないので。さあ、適当にお帰り」

 そして光を放ち、その場から消え去る。
 ちなみに、何処にいるのかは俺にもわからない。

「ふむ、まさしく自由を愛すると言われた聖剣バルムンクじゃな。同じく、自由なお主に惹かれたのかもしれん」

「そういうもんですかね。自分ではよくわからないので」

「くははっ! ……いや、久々に愉快じゃ。ユウマよ、何か頼みがあればいうと良い。できる限り、願いを叶えると約束する」

「ほんとですか!? では、俺をドワーフの国に! 一回は行ってみたいんですよね!」

 まずは海が見たい! さらには、お刺身とかいう食べ物もあるらしいし!

「ふむふむ、人族は難しいがお主なら……わかった、ワシの方で何とかしておこう」

「おおっ! ありがとうございます!」

「それくらいお安い御用じゃ」

「それと、これは出来たらでいいんですけど……」

「ふむふむ……確約はできんぞ? ワシとて、誇りを持って仕事をしているのでな」

「はい、それで結構です。もし、そういう機会があって……

「うむ、わかったわい」

 よし、これで俺にできることはやった。
 後は機会が訪れるかどうかだね。
 その後、俺はぼけっとしてるセリスに近づく。

「セリス、そろそろ行こうか?」

「へっ? ……あっ、うん、そうよね」

「ごめんね、俺達ばかり盛り上がっちゃて」

「ううん、平気だわ。こっちも良いもの見れたし」

「それなら良かった。それでは、俺達はこれで失礼します」

「うむ、またいつでもくると良い」

 最後にきちんとお辞儀をして、建物から出て行く。
 帰りは絡まれることなく、そのままひと気のある場所にやってくる。

「ふぅ……何事もなかったわね」

「そうだね、視線は感じだけど。ごめんね、俺が行きたいって行ったから」

「ううん、私だって興味あったから。それにしても、ユウマって凄いわ」

「うん? バルムンクのこと? でも、あれはたまたまだよ。多分、お互いに気があったんじゃないかな」

 俺自身が優れているから選ばれたなどと思ってはいけない。
 多分、その瞬間にバルムンクは俺から離れるだろうね。
 俺はあくまでも、彼の力を貸して貰ってるに過ぎない。

「ううん、それもあるけど……気難しいと言われたドワーフとも、あっという間に仲良くなって。学校でもレオン君やアルトさん、カレンだって立場は違うのに」

「うーん……もしかして忘れてるのかな?」

「えっ? 何を?」

「それを教えてくれたのが、君だってことさ」

 俺は当時の記憶を思い出しつつ、歩きながら話し出す。

 ◇  

 当時の俺は、同世代に友達がいなくて孤独だった。
 
 唯一の伯爵子息だったし、あそこには貴族は寄りたがらないから仕方ないのことだった。

 腕っ節も強く、剣の才能もあったし相手がいなかったこともある。

 何より、当時の俺は……後妻ができたことをよく思ってなかった。

 それを見かねたのか、エリスがミレトス侯爵家に連れてってくれたんだっけ。

「こ、こんにちは」

「貴方がユウマ?  僕の名前はセリス。爵位に差はあるけど、セリスって呼んで良いから」

 この時のセリスは、今と違って男の子みたいな格好と髪型をしていた。
 だから、俺も気づいてなかったけど。

「セリス……うん! わかった!」

「よし! それじゃあ遊ぼう!」

 俺にとってセリスは、初めて気を使わない相手だった。
 ある程度成長した今ならわかる、本当は俺が敬わないといけないと。
 それでも、セリスは俺と対等に接してくれた。
 時に剣で打ち合い、泥だらけになったり。
 庭を汚したり、花瓶を割ったりして、オルド侯爵さんに怒られたっけ。
 

 ◇

 そんな思い出話をすると、セリスが微笑む。

「ふふ、そんなこともあったわね。ユウマってば、一緒に風呂に入ろうとするし」

「それについてはごめんなさい。いやー、オルドさんに殺されるかと思ったよ」

「お父様ったら、泥だらけの私を見て大変だったもの。しかも花瓶を割るは、お風呂に入ろうとするは……懐かしいわ」

「うん、そうだね。えっと……何か言いたいかというと、俺に最初に教えてくれたのはセリスなんだよ。相手の身分に関わらず、対等に接したり優しくしたり。引っ込み思案だった俺を引っ張ってくれたしね」

 あれのおかげで、当時の俺は変わった。
 継母との関係や、異母兄弟との関係。
 住民に対する姿勢や、家臣達への態度など。

「そうだったのね……嬉しいわ」

「上手く言えないけど、セリスは人を引っ張ったりするのが上手いと思うかな」

「昔の私は、確かにそんな感じだったわ。うん、そうよね……そういう私に戻れば良いのかしら」

 よしよし、もう人押しって感じかな。

 今度は、俺がセリスを引っ張る番だね。

 それが俺の意識を変えてくれた、彼女への恩返しになると思うから。








 
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