田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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入学式

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 うーん……寮を出て、すぐ近くにある学校に来たのはいいけど。

 やっぱり、知り合いがいないからぼっちだね。

 新入生が集まった体育館にて、ぼけーと突っ立っている。

 周りの皆は知り合いらしく、わちゃわちゃと話してるけど、そこに入る勇気がない。

 ……そうか、俺って意外と人見知りだったのか。

 そんなことを考えていると、壇上に先生らしき人が現れた。

「みなさん、静粛に……はい、よろしい。ひとまず、入学おめでとうございます。本日、八十名の新入生が入りました。これから三年かけてともに研鑽を積む仲間ですので、親睦を深めていきましょう。自己紹介が遅れましたが、私が理事長のモーリスと申します」

 この人が理事長先生か……白い髭に白髪が似合う初老の男性だ。
 優しそうな雰囲気をしているが、内蔵してる魔力は相当高そう。
 エリスまでとはいかないけど、凄腕の魔法使いの気配がする。

「長々と話すのもあれですから手短に……ここは選ばれた生徒が通う学校です。そして身分や種族関係なく、実力主義の学校です。ですが、身分を振りかざすような真似はしないことです。もちろん、強くても偉そうにしないこと。あとはそれぞれが、当たり前の節度を守って学園生活を送ってくださいね」

 ふんふん、別に当たり前のことしか言ってないね。
 身分や種族によって価値観や考え方が違うから、そこは折り合いをつけないと。
 それより……なんか、俺の方を見てる気がするのは気のせいだろうか?

「私からは以上となります。さて、次に生徒会長の挨拶で終わりにしたいと思います。生徒会長ミレーユ-アストレイ、お願いします」

「はい、理事長先生」

 ……あれ? ミレーユさん? 寮長だけでなく、生徒会長もやってるんだ。
 そりゃ、寮でもみんなが注目するわけだね。
 アストレイ……どっかで聞いたことあるような気もする。

「ご紹介にあずかりました、ミレーユ-アストレイと申します。この学校の生徒会長を務めさせて頂いております。主に生徒間の揉め事やお祭り行事、そして部費の予算などを担当しておりますので、何かご相談がありましたらお気軽にどうぞ……それでは、楽しい学園生活を送ってくださいね」

 最後にミレーユさんが微笑むと、周りから息が漏れる。
 そして、相変わらず優雅に歩いて壇上から降りていく。
 その際に目が合い……ウインクをされる。
 っ!? なんつー破壊力……美人、恐るべし。

「お、おい、今のって俺?」

「はぁ? おれにきまってるじゃん!」

「違う違う! 俺でしょ!」

 ……危ない危ない、俺も勘違いするところだった。
 今のは俺じゃなくて、他の人にやったんだね。



 ◇


 そのまま軽いテストがあるらしいので、呼ばれた者から順に体育館の外に出て行く。

 俺はその間に、知り合いでも作っておこうかなと辺りを見回していると……。

「あっ! ユウマさん!」

「あれ? カレンさん?」

 タタタッと、昨日助けた女の子がかけてくる。
 白のブレザーが初々しく、よく似合っていた。

「わぁー! 同じ学校だったんですね!」 

「そうみたいだね。しかも、同い年だったとか」

「えへへ、偶然って凄いですね……ううん、これは運命?」

 何やら下を向いてもじもじして呟いている。
 さっきから、ほんのりと頬が赤い気がするし……心配して、俺は彼女のおでこに手を当てる。

「顔赤いけど大丈夫? 風邪でもある?」

「ひゃぁ!? へ、平気です!」

「そう? それなら良かった」

「うぅー……」

「……貴方、何をやってるの?」

「あっ、セリス」

 振り返ると、今度はセリスがいた。
 こちらも制服姿がよく似合っている。

「ユウマ、物凄く目立ってるわ。もう、公衆の面前で女の子に触れるだなんて」

「あっ、そうなんだ。ごめんね、カレンさん」

「い、いえ! わたしは平気です!」

「仲よさそう……むぅ」

「あのー、セリス?」

「と、とにかく! ユウマには色々と教えることがありそうですね! 貴女も一緒に来なさい」

「「は、はいっ!!」」

 その迫力に、俺とカレンは同時に返事をして、端っこの方に連れて行かれる。
   物陰に隠れたので、俺たちを見る人も減った。

「ユウマ、また会ったわね」

「はは、そうだね。カレンさん、この方はセリス-ミルディンさんだよ。侯爵家の人だけど、優しい人だから安心していいよ」

「は、はじめまして! カレン-エルランと申します!」

「はじめまして、カレンさん。なるほど、エルラン伯爵家の……娘はいなかったような」

「わ、わたしは養子で……」

「ああ、そういうことなの。それじゃ、わからないことがあったら言ってね」

「……へっ?」

 その言葉に、カレンがぽかんとした表情を浮かべた。
 俺はといえば、自然とそう言える彼女が幼馴染で良かったなと思った。

「カレンさん、セリスは優しいから平気だよ」

「べ、別にこれくらい普通よ」

「そ、そうなんですね……はい、よろしくお願いします!」

「ええ、任せて。それじゃあ、これから学校でもよろしくね」

「はい! わぁー、知り合いとかいないから不安だったんです」

「ふふ、それなら良かったわ」

 二人が握手をして、微笑み合う。
 うんうん、この二人は仲良くできそうで安心だね。
 それに三人でいれば、俺とセリスが一緒にいても変に思われないし。
   仮に婚約者がいても、問題はなさそうだ。

「それじゃ、俺も教えてもらおうっと」

「ユウマ? 貴方は生粋の貴族なんだから覚えてないとまずいでしょうに」

「はは、どうにも苦手でして……」

「もう、相変わらずなんだから」

「ふふ、ユウマさんは貴族っぽくないですもんね」

 二人からそう言われ、俺は頭をぽりぽりとかくのだった。

 んなこと言われても、貴族っぽくってよくわからないし。

 ……俺の父上、あんなんだしね。





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