田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
10 / 60

寮に到着

しおりを挟む
 ウォォォォォォ! いそげぇぇぇ!

 俺は馬鹿か! せめて場所くらいは確認しとけって!

 風魔法を駆使し、都市の中を飛び回る。

 そして、どうにかそれらしき建物にたどり着く。

 門が閉まりかけていて、その前に兵士らしき人がいる。

「こ、ここかな?」

「わっ!? び、びっくりしました」

「あっ、空からすみません。あの、ここって貴族学校の寮で合ってますか?」

「え、ええ、そうですが……あなたは?」

「失礼いたしました。俺の名前はユウマ-バルムンクと申します。明日より貴族学校に通う者で、こちらの寮にお世話になります。閉めるところで申し訳ないのですが、まだ平気でしょうか?」

 失敗したなぁ、ちゃんとした服で来るべきだった。
 ラフな格好をしてるからいちいち名乗らなきゃならないし、こうして聖剣バルムンクを見せないといけない。
 これ、結構恥ずかしいんだけど。
 本当なら手紙と、家紋が入った格好だけで平気だったはずだし。

「案内状の入った手紙に、バルムンク家の家紋……これは失礼いたしました! はい! まだ平気でございます!ささ、こちらにお入りくださいませ」

「ありがとうございます。お仕事終わるところだったのにすみません」

「いえいえ! ……はぁー、いるところにはいるもんだ」

「はい?」

「い、いえ!コホン……そこにある建物に入って、受付に行ってください。そこでもう一度案内状が入った手紙と刀、お名前を言って頂ければ」

「わかりました、それでは失礼します」

 どうにか間に合った俺は、指示通りにすぐ左側にある建物に入る。
 中は広く、左右には椅子やテーブルがあり、生徒らしき人達が談笑していた。
 流石は貴族学校といった感じだ……というか、うちの屋敷の玄関より広いね。

「お茶とかお菓子とか食べてるし、フリースペースって感じなのかも」

「あの、新入生の方ですか?」

 その声の方を見ると、入り口すぐ横に受付カウンターがあるのを発見した。

「はい、こちらが受付でよろしいですか?」

「はい、そうですね。それでは、お手紙と家紋をお願いいたします」

「では手紙と刀で証明書とさせてもらいます」

「手紙を拝見させて頂きますね……ユウマ-バルムンク様、確認いたしました。家紋の入った刀……バルムンク……!?」

「あっ、刀じゃダメですか? これ、一応一族以外は扱えないのですが」

「い、いえ、むしろこれ以上ない証明になります。これなら問答は必要ないですね、理事長からも聞いてますし……」

 理事長? 俺は国王陛下が父上に頼んだってことしか知らないしなぁ。
 そもそも、学園で何をしたらいいかもわかってないし。

「それで、次はどうしたらいいでしょうか?」

「まずは、こちらの台に手を置いてください」

 そこには板があって、横にはよくわからない装置がある。
 うちの地元では、見たことないものだ。

「これはなんです?」

「こちらは魔力を読み取って、本人にしか使えないカードを作る装置です。冒険者カードなどにも使われてる、ダンジョン内で見つかった古代文明の遺産を元にドワーフ族が作成したものです」

「あっ、そういうものなんですね。それじゃあ……」

 手を置くと何やら暖かいモノを感じ……すぐ横にある装置からカードが出てくる。
 おおっ、これが物を作ることに特化してるドワーフの技術か。
 うちの領地にはいないから、会ったことないんだよなぁ。

「これが生徒の証明になりますので、出来るだけ失くさないように。再発行にはお金がかかりますから」

「わかりました、気をつけますね。ところで、自分の部屋ってどこですかね?」

「それでは、私が案内を……」

「いや、私が案内しよう」

「こ、これは、ミレーユ様!」

 振り返ると、そこには美女がいた。
 身長は俺より少し低いくらいだけど、手足が長くてスタイルがいい。
 服の上からでもわかる胸の大きさ、顔は目鼻立ちがしっかりして気の強い感じだ。
 何より、腰まである紅髪は綺麗の一言だ。

「ミレーユ様?」

「こ、こちらの方は」

「あとで自分で説明するから構わない。ユウマ君と言ったな?とりあえず、私についてきてくれ」

「わ、わかりました」

 仕方ないのでミレーユさんについていき、ロビーを歩いていく。
 すると、一部の生徒達が俺をジロジロと見てくる。
 ミレーユさんも目立ってるけど……やっぱり、俺の格好が変なんだ。
 明日からは基本的に制服で過ごそうっと。

「軽く説明する。ここから右に行くと共同の食堂があるから、そちらで朝と夜は食べられる。左に行くと練武場があるから、そこで鍛錬ができるよ」

「わかりました。それにしても、男女が一緒なのですね」

「いえ、寮自体はこちらが男子、向こう側が女子寮になる。右にある通路で繋がっていて、消灯時間までは行き来できるようになってる。ただし、お互いに一階部分まで。それ以降は扉が閉まるし、守衛の方が随時いる。何かあれば……わかるかな?」

「まあ、ろくなことにはなりませんね」

 もし問題を起こせば退学は確実で、貴族の場合だと廃嫡もあり得そうだ。
 そんな危険を冒すような馬鹿は、そうそういないだろうし。

「ふふ、説明をしなくて楽でいい。ただ、出会いの場でもあるので、そこのところは上手くやっていくといい」

「俺には寄ってこないから平気ですよ。こちとら、ただの田舎貴族なので」

「……それはどうだろう?  さあ、ここの階段を上がるよ」

「あれ? さっきの説明だと……」

「私は寮長だから特別だ。それに、今回は案内も兼ねてる」

「ああ、そうなのですね」

 ロビーの奥にある階段を上っていき、左右あるうちの右側に向かう。
   言った通り、あちこちに守衛の方が立っていた。
 そして、一番奥にある扉の前でミレーユさんが立ち止まる。

「ここが、貴方の部屋になる」

「わざわざ、ありがとうございます。ミレーユさん、寮長ってことは歳上の方ですよね?」

「……本当に、何も知らないのだな。それに、この言葉遣いにも」

「はい? どういう意味ですか?」

「とりあえず、そのカードを窪みにかざして鍵を開けてみてくれ。すでに、貴方専用の部屋になってるはずだ」

「へぇー、便利ですね……おっ、カチャって言った。では、ありがとうございました」

「ええ、また明日以降に。その時に、詳しく説明することになるかと」

 そして、そのまま優雅に翻して去っていく。

 部屋に入った俺は、ようやく落ち着けると思い、ベッドの上にダイブする。

   そして、そのまま……眠りに落ちていくのだった。







しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...