田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
4 / 60

幼馴染との再会

しおりを挟む
それから野宿をしつつ、走り続け……二日かけてミルディン領に到着する。

「よし、どうにか二日でついた。今はお昼前……時間にも間に合ったと」

父上には、今日のお昼過ぎに出る予定だと聞いていた。

「ただ、流石に風呂も入ってないし着替えてもないのはまずい」

うちはしがない田舎貴族で伯爵家、相手は王都にも顔が効く侯爵家、その力の差は歴然だ。
流石にこのままではまずいので、身だしなみを整える必要がある。
俺は近くにある村には入って準備をしてから、領主の街に向かう。
すると、門の前の兵士達が警戒してくる。

「何者だ? こんなところに子供?」

「ここはミルディン侯爵様の別宅だ。一人で何をしている?」

「すみません、怪しい者ではないです。こういう者でして……」

腰にぶら下げてある刀を差し出し、身分を証明する。
それは、我が家に伝わる宝剣バルムンクだ。
一応、今の主人は俺ではあるけど、父上からの許可も出ている。

「それはバルムンク家の家紋!」

「その持ち主を選ぶという刀を持ってるということは、ユウマ殿でしょうか?」

「ええ、そうです。ユウマ-バルムンクと申します。本日、お呼ばれしたと思うのですが……」

「はっ! 聞き及んでおります! 大変失礼いたしました!」

「いえいえ、それが衛兵さんの職務ですからね」

「………」

「あれ? 何か変なこと言いましたか?」

「い、いえ……それでは、私が案内させて頂きます」

衛兵さんにお礼を言い、そのまま中に入る。
そして、屋敷の扉の前にいる衛兵さんにも挨拶をして、屋敷の中に通された。
そこは広い玄関ホールになっていて、左右奥には階段がある。

「わぁ、懐かしいや。相変わらず広いし」

「そういえば、以前は来てたとか……あっ、奥様がいらっしゃいました」

視線を向けると、階段を優雅に降りてくる美女がいた。
王都にいる侯爵閣下に変わって、この地を守っているローラ夫人だ。
抜群のスタイルと綺麗な金髪に若々しい姿、俺の知ってる頃と変わりはない。
流石は、国一番の美女と言われたお方だ。

「あらあら、いらっしゃっいませ。ユウマ君かしら?」

「はい、そうです。ローラさん、ご無沙汰しております。相変わらずお綺麗ですね」

「ふふ、ありがとう。あの坊やが、こんなに立派な青年になって。もう、私より背が高いわ」

俺の側に寄ってきて、頭を撫でてくる。
もうそんな歳ではないけど、少しむず痒くも嬉しい。
継母のことは好きだけど、やはり甘えたりはできないし。

「一応、百七十五くらいにはなったので」

「まあまあ、ほんとだわ。きっと、あの子も驚くわね」

「あの子? ああ、セリスのことですか? そういえば、あの子はどこに?」

「あら? さっきまで一緒だったのに照れてるのね。ふふ、そうだわ……あの子の部屋に行ってくれない?」

「えっ? 勝手に良いのですか?」

「ええ、貴方なら良いわ」

許可が出たので、昔のように階段を上がっていき、セリスの部屋の前に立つ。

「セリス?」

「えっ? その声は……ユウマ?」

「うん、そうだよ。それじゃ、扉をあけるね」

「ちょっと待って……っ~!?」

「……へっ?」

その姿に思わず固まってしまう。
そこには純白の下着を着た、綺麗な女の子がいた。
サラサラの金髪は輝き、腰は細いのに胸の膨らみは大きい。

「キャァァァァ!?」

「へぶしっ!?」

枕が飛んできて、俺の顔面に直撃する!
それにより扉が閉じ、俺の頭が動き出す。

「へっ? ……お、女の子!?」 

「あらあら、困ったわ」

「ち、違うんです! これは覗こうとかしたわけではなくて!」

「ふふ、わかってるから大丈夫よ。セリス! 早く着替えて出てらっしゃい!」

「わ、わかってます!」

どういうこと? ここはセリスの部屋だけど、綺麗な女の子がいた。
だから別人かと思ったけど、あの子はセリスらしい。
ただ……
混乱していると、扉から女の子が出てくる。

「うぅー……覗かれちゃった」

「ふふ、貴女が悪いんじゃない。着替えたのに、どうして脱いだのよ?」

「うぅー……そうだけど。だって、あんな女の子みたいな服着たらバレちゃうし」

「いや、そもそも隠し通せるものじゃないでしょうに」

「……えっと?」

そこにいたのは、まごう事なき美少女。
金髪をサイドテールにし、身長も俺の肩くらいはある。
スタイルも良くて、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
うん、思わず見惚れるくらいだ。

「混乱させてごめんなさいね。実は、セリスは女の子なのよ。ただ小さい頃から男の子みたいな遊びばっかりしてたから……貴方が来た時も、遠慮をして欲しくなくて言わなかったのよ」

「あぁ、なるほど。確かに女の子だとわかっていたら、対応は違ってましたね」

なにせ、当時の俺はセリスと殴り合いもしてたし。
というか、今考えと恐ろしい話だ。
侯爵令嬢を殴っていたとか……怖い怖い。
すると観念したのか、セリスが俺に目線を合わせてくれた。

「セリス、久しぶりだね。それと、覗いてしまってごめんなさい」

「ひ、久しぶり……とりあえず、保留にしておくわ」

「はは、それでお願い。後で殴るなり蹴るなりして良いからさ」

「でもお互い様だし、そこは我慢する。それより……ユウマは怒ってない?」

「いや、びっくりはしたけど怒ってないよ。それと、綺麗になったね」

「な、なっ——!?  何を言ってるのよ!?」 
 
「あれ? ダメだった?」

おかしいな、師匠二人には女性には褒めろって言われてたし。
それに本当に綺麗だから嘘は言ってない。

「だ、ダメじゃないけど……相変わらず天然ね」

「そう? 俺は思ったことしか言ってないよ」

「っ~!? そういうところ!」

「まあまあ、相変わらず仲がいいわね。ほらセリス、ささっと出かける準備をしなさい」

その後、セリスは部屋に戻り、俺は一階にある応接室に案内される。
ソファーに促され座り、対面にローラさんが座った。
メイドさんが出した飲み物を飲んだ後、ローラさんが話し出す。

「まずは、依頼を受けてくれてありがとう。あの子が、学園に入る前に謝りたいって言ってたから」

「ああ、女の子だったって話ですか」

「ええ、そのことで急に会えなくなったことも。セリスが恥ずかしがっていたのもあるけれど、貴方とあの子が女の子と男の子だから」

その話だけで、なんとなく察する。
当然、年頃の男女と同性同士が相手の家で遊ぶとでは意味が違う。
婚約者ならまだしも、ただのお友達のまま付き合うことは難しい。
もちろん、そういう関係もあるとは思うけど。
ただ、うるさいこと言う人はいるだろうね。

「まあ、侯爵家令嬢となると、話は大分変わりますよね。それこそ、婚約者とかいたら同じ年頃の俺とは中々会えませんし」

「ふふ、相変わらず頭のいい子ね。ただ、半分正解ってとこかしら。そもそも、あの子が王都の学校に行ってここにいなかったから。あと別に婚約者はいないのだけど、これから出来るかもしれないってこと」

「ああ、なるほど。学園でってことですか」

王都にある学園というくらいだし、おそらく高位貴族達がいる。
下手すると、王族とかもいそうだ。

「あら、随分とあっさりね? 別にうちとしては、貴方に嫁がせてもいいんだけど……」

「いえいえ、俺なんかには勿体無いですよ。あんなに綺麗になってましたから」

「あらあら、お上手ね……それと女の子だけど、あの子と仲良くしてくれるかしら?」

「ええ、もちろんです。女の子であろうと、俺にとってセリスは幼馴染に違いはありませんから」

幼馴染が実は女の子だったのは驚いたけど、その時の楽しい思い出が変わるわけではない。

だったら俺は、昔のようにセリスに接した方がいいよね。

きっと、彼女もそれを望んでいると思うから。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...