自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

四章

誤解

……あれ？ 何か柔らかい？

それに、気のせいか懐かしい香りがする？

まるで、記憶にはないけど身体が覚えてるような……。

「んっ……ここは」

「クレス、気がついて良かった」

「あぎゃぁぁぁ！？」

く、苦しい！？ 柔らかなものに顔が埋まってる！？

「カルラ様、主人殿がまた気を失ってしまいますよ」

「んっ、それは困る。クレス、おはよう」

「お、おはようございます？ ……カルラ姉上ですよね？」

「そう、貴方のお姉ちゃん」

……あれ？ カルラ姉上ってこんな感じだったっけ？
というか、さっきまでとは様子が違う。
そもそも、そんなに話したこともないし。
物心ついた時には、ほとんど見たことがない。

「……どういうこと？」

「貴方に会いにきた」

「それはなぜですか？」

「……言えない」

「……はい？」

何やら姉上がもじもじしながら、フードを思い切り被る。
どうしよう、全然状況がつかめない……誰か説明して！
周りを見ると、クオンやアスナにルーク、レナちゃんまでいる。
その後ろには、タイガさんたちいるし。

「コホン！ まずは整理しましょう。主人殿が気を失ってる間に、事情は何となく聞いたので。カルラ様は……貴方に会いたいから来たそうです」

「俺に会いたい？ それはなんで？」

「それは可愛い弟に会いたいからとか……ですね？」

「……」

すると、姉上がコクリと頷いた。
というか、全然喋らない……そういや、俺の記憶の姉上も無口だったような。
たまに会うと、じっと見てくるだけだったかも。

「つまりは、どういうこと？」

「私も、さっき聞いて驚いたのですが……どうやら、カルラ様は貴方を可愛いと思ってるそうで」

「……そんな記憶はないのですが？」

「クレスひどい。お姉ちゃんは、ずっと可愛がってきたのに」

俺は一生懸命、記憶を掘り返してみるけど……そんな記憶は見当たらなかった。
転生の記憶を思い出す前から、姉上と会うことは少なかったし。

「カルラ様。それは、どんな風にですか？」

「時に影から見守ったり、寝顔を覗いたり。木の上から眺めたり、外に出れば尾行したり」

「……だそうです。私としたことが、これに気づかないとは」

「無理もない、私の仕事は諜報員だから。というより、人に気づかれた時点で私の負け」

「ということは……姉上は、ずっと俺を見てたってこと？」

「んっ、仕事から帰ってきたらいつも覗いてた」

……どうやら、姉上は俺を避けてるわけでも嫌ってるわけでもなかったようです。

いやいや！ 気づかないってばよっ！





~あとがき~


みなさま、いつも本作品を読んでくださりありがとうございます。

先日、アルファポリス様より「前世では家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる」という作品が発売となりました。


私の作風であるハートフル家族モノになっているので、もしよろしければ買って頂けると嬉しいです🙇‍♂️

それでは、引き続きよろしくお願いいたします。