上 下
19 / 25
第2章 本土爆撃阻止(サイパン、グアム、レイテ攻略作戦)

第15話 グアム爆撃

しおりを挟む
 各空母の甲板や格納庫では、整備兵や甲板員が忙しなく動き回っていた。

「愛護の雲雷には50番親子爆弾と25番親子焼夷弾を詰め!偵察機材は全て降ろせ!武装に変えろ!」
「「「はい!!」」」
「彗星には6番と墳進弾を載せろ!」
「天山と流星は50番親子爆弾と6番焼夷弾だ!急げ急げ!」
「烈風は、墳進弾だけでいい!」

 各空母の格納庫では、整備兵や手の空いた甲板員が出撃する機体へ爆弾やロケット弾を搭載する作業で慌ただしく動き回っていた。
 雲雷は偵察兵装の大半を下ろし、胴体に50番(500キロ)親子爆弾を2発、胴体近くの主翼に25番(250キロ)焼夷親子爆弾を4発、主翼に4発、計8発を懸架している上に機首に九九式20ミリ五型機銃を2基、九七式25ミリ二型機銃を1基搭載することで対地攻撃、夜間戦闘機としても運用可能なように設計されている。
 対地攻撃用に搭載されている50番親子爆弾は、対地対艦用に開発された爆弾で内部に500発の子爆弾を内包し、1発の爆弾よりも広範囲を爆撃できるため、拠点攻撃や航空支援などに用いられる。
 25番親子焼夷弾は、滑走路破壊ように開発された爆弾で、焼夷弾と付いているが実質的には成形弾薬で高い貫通力を有しており、滑走路を穴だらけにして使用不能に航空機は当たれば、燃料、弾薬に引火して爆発する。

「各空母の状況は?」


 艦橋で第5航空艦隊司令官である角田 覚治少将は各空母の状況を副官に確認する。

「は!正規空母の愛護、安威、敦御の3隻は、攻撃機への搭載にあと十分ほど掛かるとのことです。それ以外の祥鳳、瑞鳳、龍譲、龍鳳は全機完了とのことです!」
「正規空母の雲雷隊は?」
「すでに兵装の換装、燃料の補給、搭乗員も万全です。いつでも出撃できます」
「すぐに雲雷隊を発艦させろ。後続部隊は巡航速度を早めて進行するように支持を出せ、我々の艦隊はギリギリまで近づく!」
「は!すぐに知らせます!」

 角田 覚治、この世界では海軍の軍人で典型的な武人で砲術科出身で、航空運用については無知な事が多く、見敵必戦の猛将であったが第四艦隊司令官に任命されたがスラバヤ沖海戦時には通常ならありえない戦法を取り、空母で敵基地まで近づき、そのまま搭載の高角砲で敵輸送船や基地を砲撃する戦法を取ったほか、ダッチハーバー攻撃の際には、空母龍譲の艦攻隊や空母隼鷹の艦爆隊では攻撃隊だけでは攻撃力が足りないと思ったのか、攻撃力を補うなために重巡洋艦に搭載されていた九五式水偵4機に爆弾を搭載させ、2機を喪失させるなど強引な用兵方法する事が多かった。
 最後は、テニアン島の戦いで自ら司令壕を出て手榴弾などを持ち部下と共に参戦し、その後の消息は不明である。
 向こうの世界の角田 覚治は、強引な戦法を取るが敵の意表をつく戦法を得意とし、ハワイ攻略戦の際には、味方上陸部隊の援護のために自身が乗船していた空母信濃をギリギリまで近づけ、搭載していたニ式10センチ墳進砲の墳進弾の信管を着発式変更させ、砲撃支援を行うなど奇想天外な事をやってのける事が山口多聞中将に気に入られ、良き友人となっている。


「偵察から戻ったと思ったらもう出撃かよ!」
「1日休めただけでも良いと思いますよ?」
「酷い時なんて2日間飛び放しだったしな」

 偵察に出ていた搭乗員達は待機室で今回の作戦の愚痴を言い合っていた。

「お前ら出撃だ!ずくに作戦を説明したらすぐに機体に乗り込め!」

 その部屋を飛行長が扉を開き、声をかけて搭乗員達を艦橋近くの黒板に集め、作戦の方法を説明し、それが終わると飛行甲板に並べられている機体に乗り込んで行った。
 その中の1機にはアメリカの国旗にバツ印が6つ描かれている機体があった。
 愛護の一番機を務める雲雷のエース、高出勇中尉は、雲雷の特性を活かし、複数の対地攻撃任務の最中に接敵したアメリカ軍の戦闘機を合計で4機、哨戒任務の際に哨戒型のB17を2機撃墜して雲雷のエースパイロットになっている。

「愛護一番、高出機、発艦準備完了!発艦許可を」
『了解。高出機、発艦を許可する。無事に帰投することを願う』
「了解」

 カタパルトまで機体を進め、機体をカタパルトに繋げたのを甲板員からの合図で確認して、発艦の合図の電灯を確認してエンジン出力を上げるとカタパルトから勢いよく射出された。その他のカタパルトからも雲雷が発艦して各空母事に編隊を組み、グアムに向う。
 雲雷隊が発艦したと同時に艦隊は、進路をグアムに変更し、後続の攻撃隊の航続距離まで近づき次第、攻撃隊の本隊を発艦させる。


「俺らの出番はまだ先か」
「部梶一飛曹そんな事を言っても空戦なんてまず起きないですよ。夜間戦闘機がいると言っても雲雷の方が機動性が高いですし、先に爆撃で滑走路が使用不能になってます」

 烈風隊の小隊長である部梶一飛曹がタバコを吸いながらポツリと呟くと小隊の二番機を務める伏見夜曹長が独り言に返した。

「それはそうかもしれんが対地攻撃だけ方が楽でいいんだがな」
「僕は早くエースになるために敵機を落としたいです!」
「そう言うやつほど先に死ぬ。初めの僚機もそうだった。ニ機一組を無視して先走り、横から敵機の銃弾がコックピットに飛び込んで頭を撃ち抜かれ、キャノピーが赤く染まった。俺はそれを見ている事しか出来なかった」

 その話を聞いた伏見夜は、息をのみ固まった。

「そこから俺は誓ったんだ、僚機は絶対に落とさせない、とな。烈風は防弾性が高いが墜ちない訳ではない。当たりどころが悪ければ墜ちるんだ。それを心に刻んどけ」
「は、はい、分かりました」
「俺からの助言、と言うよりは受け売りだな。亡命ドイツ人部隊の一人が言っていた言葉だ。」
『観察―決定―攻撃―反復』

 それを聞いた伏見夜が首をかしげた。

「それはどう言う事ですか?」
「つまり、敵機をよく見て隙があるなら攻撃し、無理ならしない。ひたすらそれを繰り返すと言う戦法らしい」
「簡単ですね?」
「バカ、最後まで聞け。なんでも常に敵機より高度を高く保ち、一撃離脱で攻撃し続ける。その一撃で撃墜出来なければその機体は諦める。敵が気付いても同じだ。ふー、お前にそれができるか?」

 タバコの煙を吐きながら部梶一飛曹は聞いた。もちろん答えは帰ってこない。

「そう言う事だ。無理に攻撃せずに確実にやれる時に攻撃するのが一番だ」
「はい」

 伏見夜は落ち込んでいたがこればっかりは、自分自身に問題がある。
 そうこうしている内に出撃の命令が出た。

「いつまで落ち込んでんだ。行くぞ?」
「は、はい!」

 部梶一飛曹が伏見夜の肩を叩きながら自分の機体に乗り込んで行く。伏見夜もそれに続き自分の機体に乗り込んだ。


 先に出撃した雲雷隊は、グアム島のレーダーに映る前に低空飛行に切り替えて、海面ギリギリを飛行していた。

「少尉!墜ちないで下さいよ!」
「分かってる!」

 はたから見れば、素晴らしい技量なのだが乗っている側からしたら海面に激突しないかと不安になる。

「グアムまでは?」
「あと十分です!」

 夜間飛行なので、コックピットから見える視界ではおおよその距離感と方向しか分からないので、観測手と電探手からの情報で飛ぶ。しばらく飛んでいると無線がなった。

『各機、高度を上げろ!敵航空施設破壊しろ!』
『『『了解!』』』

 無線から司令機の高出中尉からの声を聞き、速度を上げ、一気に高度を上げた。
 数分後には敵飛行場が視界に入り、目標が見えた。
 昼間程ではないがちらほら電灯が付いているため、よく見える。爆撃照準器を格納庫に合わせ、50番と25番を投下した。
 そのまま機体を上昇させて退避すると後方銃手の差崎が声を上げた。

「敵格納庫に命中!中の機体や燃料に引火して爆発しています!」
「派手な花火だ!」
「無駄口はそこまでだ、滑走路の機体を攻撃して離脱する」

 機体を反転させ、滑走路に並んでいるP 51DマスタングやF4Uコルセア、B29が並んでいる。滑走路やいくつかの機体が炎に包まれている。残っている機体に20ミリ弾と25ミリ弾を撃ち込んでいく。戦闘機なら翼が折れ、中の燃料タンクに引火して爆発し、大型の爆撃機ならエンジンや燃料タンクが燃えて行く。

「いくつかの機体は破壊したな」
「はい、少なくとも5機は炎上していました」
「爆撃は成功だな」

 高度を上げ、辺りを見渡すと燃料タンクやレーダー、格納庫が燃えていた。あっちこっちで小口径の機銃や小銃の光が見える。向こうはこちらの姿を捉えられていないようで、見当違いな方向に曳航弾が見える。

「本隊がもうすぐ来るぞ」

 機体の航空時計と腕時計を見ながら時間を確認する。
 
「少尉、後続部隊から入電、『我レ、グアムノ光ヲ確認ス、到着マデ十分』とのこと」
「了解、俺等は敵の増援が来ないか周囲を見張るぞ」

 そう言い、機体の高度をさらに上げて、味方が来るのを待った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

大東亜戦争を有利に

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:267

出撃!特殊戦略潜水艦隊

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:689pt お気に入り:3

大東亜戦争を回避する方法

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:54

B29を撃墜する方法。

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:44

超可変防御装甲戦艦 石見

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:5

日本戦車を改造する。

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:94

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:1,536

ルーズベルト亡き世

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:26

超克の艦隊

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:6,719pt お気に入り:31

処理中です...