万年ネタ切れ作家、勇利愛華の邪推録

さいだー

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身勝手な予告状12

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 天屯から経済新聞の購読者を聞き出した翌日の放課後、私と汐音はまた腰高を訪れていた。

 天屯が腰高内で確実に『経済新聞』を入手可能な人物を四人あげてくれた。


 一人は私達も購読を知っている佐渡晃。
 二人めは天屯猛男自身。
 三人めは三年生の生徒で吉野と言う人物。
 ……そして私が目をつけた四人目の人物。
 その裏取りをするために私達は再度腰高を訪れているのだ。

「汐音。里奈ちゃんにさっき聞くように頼んだ件はどうなってる?」

 目的地を前に最後の確認をする。

「ちょっと待って」

 汐音はスマホを取り出すと、ポチポチと操作をしてから私の方に画面を向けた。

 画面に表示されているのは、汐音と里奈ちゃんのチャット画面。

 汐音の質問。

『今日って脅迫状届いた?』

 に対しての里奈の答えは。

『今日は来ていません!』

 だった。

 つまり、この扉の先にが居なければ、新聞を手に入れる事ができる四人目が犯人である可能性が高まる。

 昇降口横の守衛室に続く扉をくぐり、カウンターの前に立つ。

 この前とは違う守衛がこちらを見ていた。

「なにか御用ですか?」

 しっかりと守衛の制服を着こなした初老の紳士が凛とした表情で私にそう聞いてきた。

「えっと、今日天屯さんはいらっしゃらないんですか?」

「あー、天屯君。天屯君は今日はお休みです。彼になにか御用でしたか?」

「そうですか。用と言うほどのものではないのですが、天屯さんにお話しがありまして、また出直します。いつ来れば、天屯さんはいらっしゃいますか?」

「左様ですございますか。シフトですね……少々お待ち下さい」

 そう言って初老の紳士は振り返り、何かを探しに奥へ引っ込んで行った。

「汐音、脅迫状が入っていた日の曜日って里奈ちゃんに聞いてくれたわよね?」

「うん。もちろん」

 汐音は一つ頷いて、スマホのメモ機能を開いてそれを読み上げる。

「正確か自信は無いって言ってたんだけど、最初が二週前の水曜日、二枚目が先週の月曜日、三枚目が先週の金曜日、そして昨日の四枚目が金曜日だって」

 それを聞いて私は静かに一つ頷く。

 つまり、脅迫状が放り込まれていたのは月水金の三日間という事になる。

「すいません。おまたせしました。彼のシフトなんですけどね、月曜と水曜、そして金曜日みたいですね」


 これは偶然かもしれないけど、脅迫状が投函されていた曜日と一致している。

「ご丁寧にありがとうございます。ついでに、もう一つお伺いしても宜しいでしょうか?」

「はい。何でしょうか?」

「この前ここで天屯さんに会った時、あまり良い勤務態度とは思えなかったのですが、それは認められているのでしょうか?」

「あー、天屯君またやってしまいましましたか……」

 初老の紳士は申し訳無さそうに首を横に振りながら言った。

 と言うって事は、普段から横柄な態度を取っていたという裏付けにもなる。

「あまりこういう事を言いたくはないのですが、スマホをポチポチといじっていましたね」

 少し私怨もあるけれど、彼の非礼を報告しつつ新たな情報を得るために話しを続ける。

「あー、またインターネットでギャンブルをやっていたんだね。何度も注意しているんですけどね。不快な思いをさせてしまいましたよね。申し訳ありません」

「いえいえ。大丈夫ですよ。そんなに気にしていないので。……ところでギャンブルって天屯さんは何をやっているんですか」


「あー、なんて言ってたかな……たしか、エスエックス。エフコックス?エキノコックス?みたいな名前のギャンブルだったかな。それで『ふぁいあ』するのが目標だって言っていました。老いぼれには横文字多い会話は難しいです」

 紳士は、深く刻まれた皺を歪ませてそう答えた。

「そうなんですか。私も横文字は苦手なのでよくわかりませんね」

 文字通りなんのことやらよくわからない。天屯が何をしていたのか、少し調べる必要がありそうだ。

 後でメモを取らなきゃと考えていたら汐音がスマホにメモをしてくれているのが見えた。

「では、長居してはお仕事のお邪魔をしてしまうかもしれないので、失礼させていただきます。お話し聞かせていていただきましてありがとうございました」


「いえいえ。お嬢様方みたいな若い方と話せるだけで若返った気分になれますよ。天屯君にはキツく注意をしておきます」

 紳士のお世辞を聞き流して、会釈をすると踵を返し、私と汐音は腰高を後にした。
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