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海辺の館
海辺の館-2
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目の前にそびえるのは、黒いレンガ造りの古風な建物。以前母に連れて行ってもらった、岡崎さんだか岩崎さんだかの邸宅に少し似ている。
国の重要文化物だとかで、一般公開されているやつだ。
この家だって、そうだと言われたらうなずいてしまう、そんな風格。
いかにも昔の建物らしく二階建てで、高さがない分奥行きがあるようにも見えた。
「ちょっと早いハロウィン、って感じね」
僕の隣でミサキが呟いた。そう、まさにそんな感じだ。僕は首を縦に振った。
建物の左右には対称にとんがり屋根。遠くでカラスの鳴き声が聞こえる。
先端は鋭く、なんだか不吉な印象も受ける。
まるで物語に出てくる、お姫様を幽閉するような塔に見えた。
「もしかして、あの塔に誰か監禁されてる、とか?」
僕はこそっと隣のミサキに聞く。
すると、それこそ、警察を呼べばいいだけじゃない。と返されてしまった。
「違うわよ、事件があったのは反対側」
そう言って、ミサキが長い指で指したのは。
「海?」
潮風が彼の長い髪を揺らす。
確かにここに来るまで、バスはひたすらに海岸線を走っていた。
といっても穏やかな砂浜ではなく、そそり立った岩ばかりが目立つような、荒い海だ。
その海岸線沿いに突如と現れたのが、菊名邸だ。
門をくぐった先には薔薇の庭園。
そして、古い洋館。
「じゃあ、誰か海に落っこちちゃった、とか?」
「大正解」
よくできました、とばかりにミサキが僕の頭を撫でた。
すでに海風に乱れた、伸ばしっぱなしの僕の髪はさらにぐちゃぐちゃになる。
「海に落ちて亡くなったのは、菊名剛三。この館の主だ」
建物を睨みつけながら探偵が口を開いた。
「その死を不審に思って妻の菊名千代が、俺のもとを訪れた」
「そ、渋い名前のご夫婦でしょ。だってのにこんな素敵な薔薇園にお出迎えされて、びっくりしちゃう」
さらに僕の髪をわしわしと撫でながらミサキが笑った。
「海に落ちたんでしょう?じゃあ、事故なんじゃないの」
ミサキの手を避けながら、僕は口を尖らせる。
確かに薔薇園は見ごたえがあるだろうけれど、事件でもないのにわざわざ片道二時間近くかかるこんな場所まで呼び出される理由がわからない。
「けれどその人物が落ちたと思われる部屋には、遺書があった」
そこでようやく探偵が口を開いた。
昨日はあんなにはしゃいで(?)いたのに、ここに来る道すがら、ずっと黙ったままだった。
機嫌が悪いのか、それとも必死に何か考えていたのだろうか。
まだ現場も見てないっていうのに。
「そう、その遺書がね」
薔薇の園を歩きながらミサキが言う。
「時代遅れもいいところに、タイプライターで書かれてたって言うのよ」
知ってる?と聞かれ、僕は軽く首をかしげた。
名前は聞いたことがある。けれどどんなものかまでは知らない。
「ほら、やっぱり若い子は知らないってよ」
そう言ってミサキが軽く丸藤の肩を叩いた。
「俺と比較するな」
鬱陶しいとばかりに彼はミサキの手を払う。
まあ、そりゃそうだろうな。ミサキはともかく、丸藤さんはもともと江戸時代の人なんだし、そもそも神様なんだし、比較されて若いと言われても。
「タイプライターっていうのはね、そうねえ、ボタンを押すと、その文字が紙に直接印字されるって機械なんだけど」
困惑する僕に、ミサキが説明してくれた。
「まあこのご時世、一度紙に印刷したらおしまいだなんて、不便で仕方ないでしょうね」
パソコンだとか、いろいろ便利なものがあるのに、わざわざタイプライターなんてもの好きねえ、とミサキは呆れている。
「亡くなったご主人は、アンティークとか、そういうのが好きだったとは聞いたけど」
だから部屋に置いていたらしいわ、とのこと。
と言うことは、普段仕事で使ったりしていたわけでもなさそうだ。
なら尚更。
「これから自殺するんだったら、手書きが一番楽だし早い気がするけれど」
僕は隣のミサキを見上げた
「なんでわざわざそんなものを?」
「そこなのよ」
ミサキが深くうなずいた。
「あれなら筆跡が残らない。なるほど偽物の遺書だって思っても不思議じゃないけれど」
だからなのね、と彼は唇を湿らせる。
「納得いかないって、その奥さんが事務所に来たのよ」
高い果物まで持ってきて、どうしても、主人は殺されたに違いないって言っているらしい。
まあ、家族が自殺したなんて信じたくない気持ちはわからなくもない。遺書だって不自然だ。
そこまでなら、警察だって自殺に見せかけた殺人を疑ったかもしれない。
けれど。
「だが部屋には鍵がかかっていた」
探偵が腕を組む。
「それゆえに、警察はこれは自殺だと判断したらしい」
「鍵なんて、誰にだって掛けられるんじゃ」
僕は疑問に思って口を挟んだ。
「それがまた随分古風な造りのもので、鍵屋に頼んでも作れない代物らしいわ。さらにそのカギは主の遺体の懐に入っていて、部屋は内側から鍵がかけられていた」
ゆっくりと薔薇の間を縫う僕らを、冷たい潮風が冷やす。
「つまり、その部屋の鍵を開け閉めできたのは、主だけだったということだ」
そうして、探偵が締めくくった。
「……ってことはやっぱり、自殺なんじゃ」
結局、僕はそう返すしかなかった。
多分、調査に来た警察の人だって、そう言ったに違いない。
「確かに、話だけ聞けばそう思うだろう」
僕の隣で、探偵が目の前の洋館を睨みつける。
「だがそうやって、すぐに決めつけるのが一番よくない」
そう僕を諭す探偵の顔は、先ほどと打って変わってひどく生き生きとしている。
「自殺に見せかけて人を殺すのは、推理小説じゃよくある手だ。きっとこれも、何かトリックがある違にいない」
そして、唇の端を持ち上げる。
「だがこの俺にかかれば、犯人の誤魔化しなんて一目瞭然だ」
「いやねえ、人が亡くなったっていうのに、そんな楽しそうにしちゃって」
不敵に笑う丸藤に、ミサキがあきれたように手を振った。
「これでも神様なんだから、少しはわきまえなさいよ」
「そりゃあ、そうだけど。……でも、どうしたって死んだ人間は生き返らないんだ」
たしなめられ、一瞬口をつぐんだ探偵が再び口を開く。
「だからせめて犯人を捕まえて、罪を償わせないと。故人も浮かばれないだろ」
そう返す探偵の声には、力がこもっていた。
「罪人には、相応しい罪が必要だ」
そうして、拳を握りしめる。
彼が人だったなら、さぞかし痛いだろう、と思うほどに。
「丸藤さん」
いくら犯人捜しの神様だからって、そんな思いつめなくても。
そう思い声を掛けた時だった。
「すみません、お待たせいたしました」
色とりどりのバラが咲き誇る秋空の下、声が響く。
黒い燕尾服に、すらりとした四肢。
現れたのはそんな人物だった。今の時代を錯覚させるような、そのいで立ち。
「わたくし、執事のEthacia(イサーシャ)と申します。お待たせしてしまい大変申し訳ございません」
そして、慇懃に礼をした。まるで、舞台俳優のように。
「あら、ずいぶん美人なこと」
きれいなものに目のないミサキですら絶句している。僕だってそうだった。
短く切り揃えられた金髪が、秋の陽を受けて輝いている。外国の人なんだろう、名前だってそうだし、優しい形の瞳は青かった。
けれどひどく流ちょうに日本語を話すので、僕は混乱する。
「あの、日本人なんですか?」
「いえ。でも、日本語は得意なんです」
そう言ってほほ笑む姿は、クラスメイトが騒ぐどこかのアイドルなんかより、よっぽど……すごい、としか形容できなかった。
まるでお人形みたいだ。
「奥様がお呼びです、さあこちらへ」
そう言ってつかつかと歩き出すイサーシャに、僕らは慌ててついていく。
大きな扉を開いて、その中へ僕らを誘う。脚が長くて、踏み出す一歩が僕らとは大違いだ。
「ねえ、あの人」
僕は小声で隣のミサキに聞いた。
「男の人かな、それとも女の人?」
そう思うほどに中性的だった。
背の高さだとかは男の人っぽいけど、きれいな顔とか柔らかい声だとかは女の人っぽい。
「それを知って、ナオはどうするの?」
少しいたずらっぽくミサキが返す。
「もしかしてナオちゃん、あの人に惚れちゃったの?」
「そんなわけじゃ」
慌てて返すわたしに、丸藤さんが鋭い目を向けた。
そして、いつも以上に厭味ったらしく口を開く。
「仕事中に、ずいぶん呑気なもんだな」
「だから、そういうわけじゃ」
雇用主に睨まれわたしは身を縮こまらせる。
知らない人にいきなり一目ぼれするほど、僕は人間が好きじゃなかったはずだ。
だから、べつにそういうんじゃ。
「なら、尚更どっちだって別にいいじゃない」
慌てる僕をからかうようにミサキが笑った。
「白黒つけない方がミステリアスでいいじゃない、ほら、アタシみたいに」
そう言って彼はさらりと自慢の銀髪を振り払った。
光を受けて、銀河のように煌めく。
その姿だけを見れば、あの執事の人にだって引けをとらないんだろうけど。
「おい、いいから行くぞ」
少し不機嫌な探偵にせかされて、僕は慌てて彼らの後を追った。
カツン、と足音が響く。
広いポーチには、剣を掲げた騎士の像。
ここが日本で、天草の海沿いだってことを忘れてしまいそうだ。
「ちょっと、待ってよ」
ミサキの声も良く響く。まるで、地の底みたいだった。
国の重要文化物だとかで、一般公開されているやつだ。
この家だって、そうだと言われたらうなずいてしまう、そんな風格。
いかにも昔の建物らしく二階建てで、高さがない分奥行きがあるようにも見えた。
「ちょっと早いハロウィン、って感じね」
僕の隣でミサキが呟いた。そう、まさにそんな感じだ。僕は首を縦に振った。
建物の左右には対称にとんがり屋根。遠くでカラスの鳴き声が聞こえる。
先端は鋭く、なんだか不吉な印象も受ける。
まるで物語に出てくる、お姫様を幽閉するような塔に見えた。
「もしかして、あの塔に誰か監禁されてる、とか?」
僕はこそっと隣のミサキに聞く。
すると、それこそ、警察を呼べばいいだけじゃない。と返されてしまった。
「違うわよ、事件があったのは反対側」
そう言って、ミサキが長い指で指したのは。
「海?」
潮風が彼の長い髪を揺らす。
確かにここに来るまで、バスはひたすらに海岸線を走っていた。
といっても穏やかな砂浜ではなく、そそり立った岩ばかりが目立つような、荒い海だ。
その海岸線沿いに突如と現れたのが、菊名邸だ。
門をくぐった先には薔薇の庭園。
そして、古い洋館。
「じゃあ、誰か海に落っこちちゃった、とか?」
「大正解」
よくできました、とばかりにミサキが僕の頭を撫でた。
すでに海風に乱れた、伸ばしっぱなしの僕の髪はさらにぐちゃぐちゃになる。
「海に落ちて亡くなったのは、菊名剛三。この館の主だ」
建物を睨みつけながら探偵が口を開いた。
「その死を不審に思って妻の菊名千代が、俺のもとを訪れた」
「そ、渋い名前のご夫婦でしょ。だってのにこんな素敵な薔薇園にお出迎えされて、びっくりしちゃう」
さらに僕の髪をわしわしと撫でながらミサキが笑った。
「海に落ちたんでしょう?じゃあ、事故なんじゃないの」
ミサキの手を避けながら、僕は口を尖らせる。
確かに薔薇園は見ごたえがあるだろうけれど、事件でもないのにわざわざ片道二時間近くかかるこんな場所まで呼び出される理由がわからない。
「けれどその人物が落ちたと思われる部屋には、遺書があった」
そこでようやく探偵が口を開いた。
昨日はあんなにはしゃいで(?)いたのに、ここに来る道すがら、ずっと黙ったままだった。
機嫌が悪いのか、それとも必死に何か考えていたのだろうか。
まだ現場も見てないっていうのに。
「そう、その遺書がね」
薔薇の園を歩きながらミサキが言う。
「時代遅れもいいところに、タイプライターで書かれてたって言うのよ」
知ってる?と聞かれ、僕は軽く首をかしげた。
名前は聞いたことがある。けれどどんなものかまでは知らない。
「ほら、やっぱり若い子は知らないってよ」
そう言ってミサキが軽く丸藤の肩を叩いた。
「俺と比較するな」
鬱陶しいとばかりに彼はミサキの手を払う。
まあ、そりゃそうだろうな。ミサキはともかく、丸藤さんはもともと江戸時代の人なんだし、そもそも神様なんだし、比較されて若いと言われても。
「タイプライターっていうのはね、そうねえ、ボタンを押すと、その文字が紙に直接印字されるって機械なんだけど」
困惑する僕に、ミサキが説明してくれた。
「まあこのご時世、一度紙に印刷したらおしまいだなんて、不便で仕方ないでしょうね」
パソコンだとか、いろいろ便利なものがあるのに、わざわざタイプライターなんてもの好きねえ、とミサキは呆れている。
「亡くなったご主人は、アンティークとか、そういうのが好きだったとは聞いたけど」
だから部屋に置いていたらしいわ、とのこと。
と言うことは、普段仕事で使ったりしていたわけでもなさそうだ。
なら尚更。
「これから自殺するんだったら、手書きが一番楽だし早い気がするけれど」
僕は隣のミサキを見上げた
「なんでわざわざそんなものを?」
「そこなのよ」
ミサキが深くうなずいた。
「あれなら筆跡が残らない。なるほど偽物の遺書だって思っても不思議じゃないけれど」
だからなのね、と彼は唇を湿らせる。
「納得いかないって、その奥さんが事務所に来たのよ」
高い果物まで持ってきて、どうしても、主人は殺されたに違いないって言っているらしい。
まあ、家族が自殺したなんて信じたくない気持ちはわからなくもない。遺書だって不自然だ。
そこまでなら、警察だって自殺に見せかけた殺人を疑ったかもしれない。
けれど。
「だが部屋には鍵がかかっていた」
探偵が腕を組む。
「それゆえに、警察はこれは自殺だと判断したらしい」
「鍵なんて、誰にだって掛けられるんじゃ」
僕は疑問に思って口を挟んだ。
「それがまた随分古風な造りのもので、鍵屋に頼んでも作れない代物らしいわ。さらにそのカギは主の遺体の懐に入っていて、部屋は内側から鍵がかけられていた」
ゆっくりと薔薇の間を縫う僕らを、冷たい潮風が冷やす。
「つまり、その部屋の鍵を開け閉めできたのは、主だけだったということだ」
そうして、探偵が締めくくった。
「……ってことはやっぱり、自殺なんじゃ」
結局、僕はそう返すしかなかった。
多分、調査に来た警察の人だって、そう言ったに違いない。
「確かに、話だけ聞けばそう思うだろう」
僕の隣で、探偵が目の前の洋館を睨みつける。
「だがそうやって、すぐに決めつけるのが一番よくない」
そう僕を諭す探偵の顔は、先ほどと打って変わってひどく生き生きとしている。
「自殺に見せかけて人を殺すのは、推理小説じゃよくある手だ。きっとこれも、何かトリックがある違にいない」
そして、唇の端を持ち上げる。
「だがこの俺にかかれば、犯人の誤魔化しなんて一目瞭然だ」
「いやねえ、人が亡くなったっていうのに、そんな楽しそうにしちゃって」
不敵に笑う丸藤に、ミサキがあきれたように手を振った。
「これでも神様なんだから、少しはわきまえなさいよ」
「そりゃあ、そうだけど。……でも、どうしたって死んだ人間は生き返らないんだ」
たしなめられ、一瞬口をつぐんだ探偵が再び口を開く。
「だからせめて犯人を捕まえて、罪を償わせないと。故人も浮かばれないだろ」
そう返す探偵の声には、力がこもっていた。
「罪人には、相応しい罪が必要だ」
そうして、拳を握りしめる。
彼が人だったなら、さぞかし痛いだろう、と思うほどに。
「丸藤さん」
いくら犯人捜しの神様だからって、そんな思いつめなくても。
そう思い声を掛けた時だった。
「すみません、お待たせいたしました」
色とりどりのバラが咲き誇る秋空の下、声が響く。
黒い燕尾服に、すらりとした四肢。
現れたのはそんな人物だった。今の時代を錯覚させるような、そのいで立ち。
「わたくし、執事のEthacia(イサーシャ)と申します。お待たせしてしまい大変申し訳ございません」
そして、慇懃に礼をした。まるで、舞台俳優のように。
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大きな扉を開いて、その中へ僕らを誘う。脚が長くて、踏み出す一歩が僕らとは大違いだ。
「ねえ、あの人」
僕は小声で隣のミサキに聞いた。
「男の人かな、それとも女の人?」
そう思うほどに中性的だった。
背の高さだとかは男の人っぽいけど、きれいな顔とか柔らかい声だとかは女の人っぽい。
「それを知って、ナオはどうするの?」
少しいたずらっぽくミサキが返す。
「もしかしてナオちゃん、あの人に惚れちゃったの?」
「そんなわけじゃ」
慌てて返すわたしに、丸藤さんが鋭い目を向けた。
そして、いつも以上に厭味ったらしく口を開く。
「仕事中に、ずいぶん呑気なもんだな」
「だから、そういうわけじゃ」
雇用主に睨まれわたしは身を縮こまらせる。
知らない人にいきなり一目ぼれするほど、僕は人間が好きじゃなかったはずだ。
だから、べつにそういうんじゃ。
「なら、尚更どっちだって別にいいじゃない」
慌てる僕をからかうようにミサキが笑った。
「白黒つけない方がミステリアスでいいじゃない、ほら、アタシみたいに」
そう言って彼はさらりと自慢の銀髪を振り払った。
光を受けて、銀河のように煌めく。
その姿だけを見れば、あの執事の人にだって引けをとらないんだろうけど。
「おい、いいから行くぞ」
少し不機嫌な探偵にせかされて、僕は慌てて彼らの後を追った。
カツン、と足音が響く。
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