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お忍び視察
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今日はどこを周るとか何も考えていない。とにかくダリアと町をぶらつこうと思って出てきただけなので、中心部へと向かう。
歩いて行ける距離ではないので、途中で乗合馬車に乗ることにした。
「どうして乗合なのですか?屋敷で用意できましたよ?」
「逆にアデルに聞くけど、どうして乗合はダメなの?」
馬車には私たち三人と御者しかいないので、疑問に思ったことを聞いてくる。私は質問を質問で返した。すると、悩んでいるアデル。答えは簡単なのだが、思いつかないようだ。
ダリアが見かねて話に割って入ろうとしたので、私は首を横に振る。アンバー領で働くなら、これくらい答えを導いてほしい。今よりもっと難しい護衛はたくさんこなしているはずなのに、思いつかずに残念だ。
だんだん、憐れになってきて、小さくため息が漏れてしまう。過剰に反応してしまうのはアデルで何か言わなくてはと焦っている。
「簡単なことよ。乗合だとおしゃべりしていう領民と一緒に馬車に乗れるということよ?」
「あぁ、それならわかります」
「答え合わせをする?」
「お願いします!」
そう言ってアデルは、自分が考えることを話してくる。答えは完璧で理解している。やはり、領地の問題を考えてくれているのはよくわかった。
「アンナ様は、こうして領地を回られるのですか?」
「いいえ。今回は思いつきだから、いつもは馬で周るわよ?視察と言うより、ダリアと出かけたかっただけだから」
「そうだったのですか?お邪魔にはならないようにしないとと思っていたのですが」
「全然。邪魔だなんて思っていないわ。コーコナ領のことをダリアにも知ってほしかったから、今日は、いろいろなことを忘れて、楽しみましょう!」
ダリアに微笑みかけると、予想外の答えだったようで、驚いたあとで目を見開いていた。
迷惑だったかな?と思うところもあるが、出かけることは悪いことではないだろう。
「そういえば、セバスとアンバー領や公都はもう周ったかしら?」
「まだですよ。少し仕事が立て込んでいたので、それが落ち着いてからとなりました」
「なるほどね。そのほうがいいわね。セバス、アンバー領でも、公都の文官たちの中でも忙しいからね……」
「それは聞いているので、大丈夫ですよ!」
「寂しくなったら言って。セバスにいいつけるから」
「滅相もないです。ちゃんと家に戻ってきてくれることが、私に取って嬉しいことです」
そういって笑い、セバスのことを考えながらダリアと二人、乗合馬車の中で笑いあう。アデルもそれを微笑ましく見守っていてくれた。
歩いて行ける距離ではないので、途中で乗合馬車に乗ることにした。
「どうして乗合なのですか?屋敷で用意できましたよ?」
「逆にアデルに聞くけど、どうして乗合はダメなの?」
馬車には私たち三人と御者しかいないので、疑問に思ったことを聞いてくる。私は質問を質問で返した。すると、悩んでいるアデル。答えは簡単なのだが、思いつかないようだ。
ダリアが見かねて話に割って入ろうとしたので、私は首を横に振る。アンバー領で働くなら、これくらい答えを導いてほしい。今よりもっと難しい護衛はたくさんこなしているはずなのに、思いつかずに残念だ。
だんだん、憐れになってきて、小さくため息が漏れてしまう。過剰に反応してしまうのはアデルで何か言わなくてはと焦っている。
「簡単なことよ。乗合だとおしゃべりしていう領民と一緒に馬車に乗れるということよ?」
「あぁ、それならわかります」
「答え合わせをする?」
「お願いします!」
そう言ってアデルは、自分が考えることを話してくる。答えは完璧で理解している。やはり、領地の問題を考えてくれているのはよくわかった。
「アンナ様は、こうして領地を回られるのですか?」
「いいえ。今回は思いつきだから、いつもは馬で周るわよ?視察と言うより、ダリアと出かけたかっただけだから」
「そうだったのですか?お邪魔にはならないようにしないとと思っていたのですが」
「全然。邪魔だなんて思っていないわ。コーコナ領のことをダリアにも知ってほしかったから、今日は、いろいろなことを忘れて、楽しみましょう!」
ダリアに微笑みかけると、予想外の答えだったようで、驚いたあとで目を見開いていた。
迷惑だったかな?と思うところもあるが、出かけることは悪いことではないだろう。
「そういえば、セバスとアンバー領や公都はもう周ったかしら?」
「まだですよ。少し仕事が立て込んでいたので、それが落ち着いてからとなりました」
「なるほどね。そのほうがいいわね。セバス、アンバー領でも、公都の文官たちの中でも忙しいからね……」
「それは聞いているので、大丈夫ですよ!」
「寂しくなったら言って。セバスにいいつけるから」
「滅相もないです。ちゃんと家に戻ってきてくれることが、私に取って嬉しいことです」
そういって笑い、セバスのことを考えながらダリアと二人、乗合馬車の中で笑いあう。アデルもそれを微笑ましく見守っていてくれた。
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