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夕食

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 私とウィルが向かい合って夕食を取っていた。もちろん、私には休むようにとリアンからお小言ともに軽い食事を並べてもらった。ウィルは健康そのものなので、ガッツリとしたお肉が目の前に並んでいる。


「姫さんの夕食、健康によさそうなものばっかり」
「……うん、おいしいよ?」


 ニコニコと笑いながらウィルに答えると、苦笑いしながら、自分の前に置いてあったブタの煮込みを半分に切って空になった私のお皿に置いてくれる。何も言わない優しさが、嬉しかった。


「体によさそうな野菜もいいけどさ、姫さんにはこっちの方がせいが付くだろ?」


 自身も半分に切った煮込みをさらに細かくして口に運んでいる。ウィルは今日のところ私の護衛で張り付いているが、基本的には、警備隊の訓練を見ていることが多く、体を使うので、料理人も疲れた筋肉や壊れた細胞を作り直すために肉料理を出すことが多い。私は女性と言うこともあり、わりと野菜もの中心の献立が多いのだが、正直、もう少しお肉を増やしてほしいとは思っていた。
 女性は好き好んで肉を食べるという習慣がないようで、領地の料理は、あっさりだ。


「姫さんも頼めばいいのに。肉が食べたいって」
「……うん、そうなんだけど……あまり、こちらには習慣がないそうで、言いにくいのよね。公都の料理人がいるときは、お肉多めの料理にしてくれるのだけど」
「確かに、違うよな。食卓に並ぶ料理が。アンバー領の料理も確かにうまいけど、もう少し味が濃いほうがこのみなんだよな」
「町に出れば、多少なりはあるでしょ?」
「あるにはあるけどさ……」


 言葉を濁すウィルに首を傾げる。どうやら、薄いと言われている領地の料理も気に入っているようだった。


「ここ、味があれだけど、うまいんだよなぁ」
「本当だね」

 そう言って、ウィルにもらったお肉をほうばった。


「そういえば、町に飲食店が増えた気がする」
「そうなの?」


 コクと頷くウィルの。町に出ることも多かったり、街道のを石畳で舗装している近衛向けに公都で作られた物を食べれるようにと領民がかんがえてくれるらしい。
 汗をかくことが多いので、少し塩分が高いめになっているらしいのだが、しっかり朝も夜も肉体労働者むけ料理を提供できることが、味を見ていると微笑みかけてきた。単語ルビ
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