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アンナリーゼはお出かけ準備?

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 1週間の療養を経て、私はやっとリアンからの外出許可が降りた。私を心配してくれているのはわかるが、本当にこの1週間、部屋からでることすら許されなかった。おかげで、すっかり元気になったし、おもしろい戦術書のおかげで有意義な時間を過ごすことができた。もちろん、ウィルもアデルもセバスも……私と一緒に叱られることになったが、こういう時間が1番楽しいと夜遅くまで戦術について話合ったものだ。ジョージアやレオ、カイルなども戦術会議にも入っていたが、まだまだ基礎知識もないので、最後まではついてこれなかった。


「お嬢にもこんなふうに話をする日がくるかと思うと楽しみだな?」
「そのときは、ウィルたちが教えてあげるのかしらね?」
「アンナリーゼ様が教えればいいじゃないですか?」


 戦術書を閉じて、私たちは、執務へと戻ることにした。


 執務室へ入ると、みなが集まっていた。今日から復帰ということは伝わっていたのだろう。


「もう大丈夫ですか?」
「えぇ、心配かけたわ!イチアには、また、無理をさせてしまったかしら?」
「いつものことなので。あの、ひとついいですか?」
「えぇ、もちろん。何かしら?」


 イチアとビルが頷きあっていて、その隣でユービスも何やら訳知り顔になっている。ここの二人で、動くことを考えているのだろうか。話を促してみる。


「アンナリーゼ様はしばらく領地に留まられますよね?」
「その予定よ?多少、領地の視察へ向かうこともあるけど、それが?」
「できればですけど、アンナリーゼ様が領地にいらっしゃる間に、ビルとユービスを案内人として領地を回ってみたいと思っています」
「なるほど、それはいいわ!ここへ来てから、ほとんどがイチアに与えた執務室の中だったものね。旅の資金もこちらで用意するから、領地を見て来てちょうだい。私たちとは違う視点で領地がみれるはずだから、また、その報告を楽しみにしているわ」
「はい。私の気付けることがあって、役に立つのなら」


 イチアの意見で役に立たなかったことなどない。せっかく領地を回ってもらうのだからと、ひとつ、こちらからも提案をすることにした。私の知識ではとてもじゃないが思いつかないから。


「お願いを聞いてくれるかしら?」
「アンナリーゼ様の願いならなんなりと」
「領地をせっかく回ってもらうのですもの。警備隊の配置を考えて宿舎を作りたいと思っているの」
「それは、どうしてです?隣は、バニッシュ領ですから、領地仲は悪くありませんよね?」
「……インゼロ帝国と言えばいいかしら?」
「なるほど。水路から攻めてきた場合、バニッシュ領から入ってくると言うことですね?」
「そう。アンバー領は陸路から考えれば、インゼロ帝国から1番遠い領地ではあるの。水上部隊が編成されていると聞いたことがあるから、もしものために」
「それは、確かにあります。水上を住み家とする部族ですね。海流を読み海を操るとまで言われています。帆船には、大きな商人がついているとかなんとか……噂話を考えればきりはありませんが、確かに、懸念事項ではありますね」


 コクっと頷くと、元インゼロ帝国常勝将軍の軍師は、難しい表情ののち、国境を跨ぐ許可を取ってくる。バニッシュ領もみたいと言うことだろう。


「もし、叶うならで構いません。可能でしょうか?」
「おつかいも頼まれてくれるなら、国境を跨ぐ許可は出せるわ。通行証を作るのは、他の誰でもない私ですもの」
「では、お願いしたいです。バニッシュ領も見ておきたいので」
「うん、それは賛成。実は、エールからもそういう相談を受けているから……あんないい加減そうな人でも、領主に変わりないのね?民を想う気持ちに嘘はなかったから」
「何かあるのですか?」
「春先にお茶会を開くことにしているの。バニッシュ領からエールとミネルバを招待したいと思っているの」
「領地を開けてもいいのですか?」
「ミネルバの子は、もう成人をしているので、問題ないでしょう。次期当主とミネルバからの教育も相当厳しく受けていると思うわ!」


 なるほどと、苦笑いをするイチアに同情するよね?と笑うと、本当ですねと帰って来た。隣人のお付き合いとして、ミネルバは社交上手で、かなりのやり手だと私は思っている。どうやら、イチアも同じように考えているようで何よりだ。


「お茶会の案内を持っていく、伝書鳩の役目をすればいいのですね」
「イチアにお願いするようなことじゃないんだけど……」
「構いませんよ。それくらい。他国へ向かえるのなら、そちらにも価値があります」
「案内してもらえるよう、書き添えておくから」


 ありがとうございますとお礼を言われるが、私はたいしたことはしていない。なので、自主的に話をしてくれたエールに感謝しかない。その帰りがどんな意味を持つお帰りなのかは問わずにいたが、だいたいの予想はつくので、口を噤む。


「何日か滞在をして帰ってくるといいわ。私もまだ、行ったことがなくて……次の領地へ返ってくるときには、行こうかと思っているの。陸繋がりであるけど、国が違うから文化も違うだろうから」
「確かに。向こうは港町ですからね。アンナリーゼ様が喜ぶようなものが、きっとたくさんありますよ。そういった情報も持って帰ってきますから、春のお茶会を楽しみに!」


 イチアに領地外の活動に制限もつけないでいるので、自由に動けるだろう。いいなと羨む気持ちに蓋をして、他の話を聞くことになった。
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