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泥棒にはご注意ください!
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領地の屋敷へ帰ることに決めた夜、用意された客間でのんびりと過ごしていた。今日は、アンジェラもジョージアと一緒に寝ると決めたようで、別室ですでに眠っている。
……アンジェラに選んでもらえないことが、こんなに寂しいなんて。
屋敷にいないことが多い私より、ジョージアを選ぶ傾向があるアンジェラに寂しさを感じながら、暗い部屋で天井を見つめている。
寝ようと思っていたのだが、どうにも眠れそうにない。少しベッドでコロコロとしていると、窓の外から明かりが見える。私は、不審に思い、そっと窓に近づく。ランプか何かの明かりのようで、小さな光だ。動く光を追いながら、どこに向かうのかと当たりをつけていく。私が別にしなくても、領地の屋敷を守る人物なら知っているかもしれない。
私は厚手のコートを夜着の上から羽織、光源を辿ることにした。
研究室から出るための時間があるので、窓からだいたいの位置を確認して、抜き足差し足で外に出た。また、アデルに叱られる案件ではるが、私に気が付かないアデルが悪いと都合のいいように責任逃れをして、走っていく。少しずつ光源に近づいていけば、少しの高揚感。いつもとはまた違うウキウキとした気持ちで、そっと覗いた。よくよく見ると、兄弟なのか、二人の少年がこっそりひとつの布で囲われた一室へと入って行った。
……トマトの植えられているところよね?
気付かれずについていくと、中でカゴを持った子が、トマトを盗んでいるところだった。
「赤いのを採れよ?」
「にぃちゃん、そんなこと言ったって、見えないからわからないよ!」
「ほら、こうしたら見えるだろう?」
コソコソとしながら、もいだトマトを弟の方が見惚れている。余程おなかが空いていたのか、兄が後ろを向いた瞬間に、弟はトマトを齧った。
夏場のトマトとは少し違い、酸っぱい匂いがした。それでも、美味しかったのか、小さな口で、一口、また一口と口に運べば、すぐに無くなってしまった。兄の方はトマトを食べる音か、口に入れる音によって気が付いたのか振り向き、弟にげんこつをお見舞いしている。優しくしてくれたとしても痛かったのだろう「痛い!」と抗議している声が聞こえてくる。
「家に帰ってからだって言っているだろ?」
「お腹すいちゃって……にぃちゃん、このトマト、とてもおいしい」
涙目を指で拭っている。そのあと、近くにあった熟れたトマトを兄に差し出した。
「……もう、食うなよ?」
「わかった。これだけにする。でも、兄ちゃんも共犯だよ?」
「共犯だなんて、難しい言葉をよく知っているな?」
「昨日、領地でやってる学校の勉強会に行っていたんだ。すごいだろ?」
「あぁ、すごいな。将来は学者さんかなぁ?」
微笑ましい会話をしているが、どう見ても、トマトを盗みに来ている様子に、どうぢたものかと考えた。
夢中でトマトを採っているのだが、そもそも、ここはヨハンたちの研究所であるから、部外者であるはずの二人は、ここへ入ってはいけない。
……さてと、声でもかけますか?でも、アンバー領で子どもがこんなことをしているなんて、珍しいわね?どこかから流れて来た子たち?
後ろからそっと近づき、二人の首根っこを掴む。警戒をしていなかったせいで、突然現れた私に驚いたようだ。逃げ出す兄。弟は私に首根っこを捕まっているので、逃げられそうにない。
「あばれても無駄だよ?君たち、何をしているのかな?」
「……」
「だんまりはよくないわよ?人のものをこんな時間に採りに来ているだから、どうなるかはわかるよね?」
兄の方は私を睨むが、正直怖くもなんともない。こっちにいらっしゃいと、私は研究室へ向かって歩いていく。素直についてくるとはあまり期待することもなく、先を歩く。人質となっている弟は静かに私に手を引かれる。そのまま屋敷に入ろうとしたところで、兄の方が酷い顔をしているが、入ってくるしかないので、ついてきた。厨房へ向かい、夕飯の残りがあるので、温め直すことにした。
「そこに座って?」
「……」
「トマトより、おいしいと思うけど?」
「……」
「ほら、どうぞ。あったかいの食べて?」
二人はたったまま湯気の立つシチューを睨んでいた。
「毒なんて入っていないわ。外は寒いんだもの。食べていきなさい」
そういうと、弟が先に動いた。まだ小さいので、たぶんあまり理解せずに、本能のままだ。お兄ちゃんのほうは、遠慮がちに、されど、がっつく弟を止める。
「いいのよ、食べなさい。昨夜の残りだから、もう食べきれないのだし」
二人に進めて、私も手近にあった椅子を引き寄せた。泥棒をした二人、見覚えのない子どもたちではあったが、弟につられて兄もシチューを味わい始める。ホッとしたような票用の二人が印象的であった。
……アンジェラに選んでもらえないことが、こんなに寂しいなんて。
屋敷にいないことが多い私より、ジョージアを選ぶ傾向があるアンジェラに寂しさを感じながら、暗い部屋で天井を見つめている。
寝ようと思っていたのだが、どうにも眠れそうにない。少しベッドでコロコロとしていると、窓の外から明かりが見える。私は、不審に思い、そっと窓に近づく。ランプか何かの明かりのようで、小さな光だ。動く光を追いながら、どこに向かうのかと当たりをつけていく。私が別にしなくても、領地の屋敷を守る人物なら知っているかもしれない。
私は厚手のコートを夜着の上から羽織、光源を辿ることにした。
研究室から出るための時間があるので、窓からだいたいの位置を確認して、抜き足差し足で外に出た。また、アデルに叱られる案件ではるが、私に気が付かないアデルが悪いと都合のいいように責任逃れをして、走っていく。少しずつ光源に近づいていけば、少しの高揚感。いつもとはまた違うウキウキとした気持ちで、そっと覗いた。よくよく見ると、兄弟なのか、二人の少年がこっそりひとつの布で囲われた一室へと入って行った。
……トマトの植えられているところよね?
気付かれずについていくと、中でカゴを持った子が、トマトを盗んでいるところだった。
「赤いのを採れよ?」
「にぃちゃん、そんなこと言ったって、見えないからわからないよ!」
「ほら、こうしたら見えるだろう?」
コソコソとしながら、もいだトマトを弟の方が見惚れている。余程おなかが空いていたのか、兄が後ろを向いた瞬間に、弟はトマトを齧った。
夏場のトマトとは少し違い、酸っぱい匂いがした。それでも、美味しかったのか、小さな口で、一口、また一口と口に運べば、すぐに無くなってしまった。兄の方はトマトを食べる音か、口に入れる音によって気が付いたのか振り向き、弟にげんこつをお見舞いしている。優しくしてくれたとしても痛かったのだろう「痛い!」と抗議している声が聞こえてくる。
「家に帰ってからだって言っているだろ?」
「お腹すいちゃって……にぃちゃん、このトマト、とてもおいしい」
涙目を指で拭っている。そのあと、近くにあった熟れたトマトを兄に差し出した。
「……もう、食うなよ?」
「わかった。これだけにする。でも、兄ちゃんも共犯だよ?」
「共犯だなんて、難しい言葉をよく知っているな?」
「昨日、領地でやってる学校の勉強会に行っていたんだ。すごいだろ?」
「あぁ、すごいな。将来は学者さんかなぁ?」
微笑ましい会話をしているが、どう見ても、トマトを盗みに来ている様子に、どうぢたものかと考えた。
夢中でトマトを採っているのだが、そもそも、ここはヨハンたちの研究所であるから、部外者であるはずの二人は、ここへ入ってはいけない。
……さてと、声でもかけますか?でも、アンバー領で子どもがこんなことをしているなんて、珍しいわね?どこかから流れて来た子たち?
後ろからそっと近づき、二人の首根っこを掴む。警戒をしていなかったせいで、突然現れた私に驚いたようだ。逃げ出す兄。弟は私に首根っこを捕まっているので、逃げられそうにない。
「あばれても無駄だよ?君たち、何をしているのかな?」
「……」
「だんまりはよくないわよ?人のものをこんな時間に採りに来ているだから、どうなるかはわかるよね?」
兄の方は私を睨むが、正直怖くもなんともない。こっちにいらっしゃいと、私は研究室へ向かって歩いていく。素直についてくるとはあまり期待することもなく、先を歩く。人質となっている弟は静かに私に手を引かれる。そのまま屋敷に入ろうとしたところで、兄の方が酷い顔をしているが、入ってくるしかないので、ついてきた。厨房へ向かい、夕飯の残りがあるので、温め直すことにした。
「そこに座って?」
「……」
「トマトより、おいしいと思うけど?」
「……」
「ほら、どうぞ。あったかいの食べて?」
二人はたったまま湯気の立つシチューを睨んでいた。
「毒なんて入っていないわ。外は寒いんだもの。食べていきなさい」
そういうと、弟が先に動いた。まだ小さいので、たぶんあまり理解せずに、本能のままだ。お兄ちゃんのほうは、遠慮がちに、されど、がっつく弟を止める。
「いいのよ、食べなさい。昨夜の残りだから、もう食べきれないのだし」
二人に進めて、私も手近にあった椅子を引き寄せた。泥棒をした二人、見覚えのない子どもたちではあったが、弟につられて兄もシチューを味わい始める。ホッとしたような票用の二人が印象的であった。
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