ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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一度帰ります

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「なんだかんだと、アンナは手広くしているんだな?」
「手広くしていかないと……公爵家は古参ですけど、私は新参者ですから」
「確かに、アンナが公爵になって、そんなに経っていないんだな。ずっと前から、当たり前のようにしているけど?」
「アンバー領のほうは、学生の頃から少しずつ土地を買ったり、石切りの町を動かしたりしてましたからね?それでも、私は他国のものですし、アンバー領に協力者がいたわけではないので、知らないことのほうが多いです」
「……それなら、俺は机上のアンバー領しかしらないことになる。この地で生まれこの地で育ったのに」
「ジョージア様は、大事に育ててもらっていたから、当然の気が……」


 苦笑いすると、ノクトが笑い始める。どうしたの?と聞くと、私の幼いころの話をまるで見てきたかのように言われ、次の言葉が出ない。


「……なんで知っているの?私、話したことあったっけ?」
「そんなの聞かなくても、だいたいわかる。ウィルも似たようなものだろう?」
「ウィルは、小さい頃から、年の近い子より体が大きかったからって言ってた」
「アンナは体が小さくても飛び跳ねているだろ?」
「本当、私のこと見てたでしょ?って言いたいわ」
「見てなくても、アンジェラもそうだからな」
「どうして、ジョージア様に似ないのかしら?家系?私の血筋って……そういう家系なのかしらね?」


 ため息をつけば、「可愛いからいいじゃない」とアンジェラの頭を撫でながらジョージアが笑っている。


「そもそも、アンナがそうじゃなければ、俺もアンナと結婚すら出来てないし、この領地にこれ程人は集まっていないよ。アンナとアンジェラのおてんばは、俺にとっても、みんなにとっても可愛いものなんだよ。ほら、デリアがよく怒っているけど……」
「あれは、本気で叱られていますから……そこは、ジョージア様のように甘くはないです」
「そうなんだ?デリアもそろそろ帰ってくるし、アンナは迷惑かけないように気をつけなよ?」


 はいと返事をして、小さく息をはく。下から心配そうに見上げてくるアンジェラに、大丈夫と言えば、微笑んだ。デリアには叱られるだろうが、これからも出歩くだろう。とくにアンジェラを連れて領地を出歩くことになりそうだから、そこは叱られることを覚悟のうえ、行動を考えないといけない。


「そういえば、植樹はどうするんだい?道ができるまでに時間がかかるって聞いているけど?」
「農園にする当たりの整備は終わったようですよ?肥料も撒けたそうなので、明日か明後日には植え始めると報告がありました」
「じゃあ、ここはノクトに任せて、一度、領地の屋敷へ戻らないか?イチアも呼び戻しにきたんじゃないの?」
「……よくわかりましたね?」
「そうだったの?」
「えぇ、こちらの視察も兼ねて、アンナ様をお迎えに。屋敷でも確認していただきたい案件もありますし、セバスの結婚式の準備もありますから」
「まだ先だと思っていたけど、それほど時間はないのよね……わかったわ!明日の植樹だけ見て、戻りましょう!」


 イチアに今後の予定を聞けば、そろそろ、私も領地の屋敷へ帰ったほうがいい時期ではある。定期的に、馬で見学にくるくらいなら、時間にも余裕があるが、泊りがけでというのは、しばらく難しそうだ。


「私も1日見て回りたいので、帰るのは明後日にしてもらえませんか?視察に出るのが、なかなか難しくてですね?」
「構わないわよ?あと、視察に出たいなら、出てくれて構わないから。私やジョージア様がいるときなら、いつでも」
「……アンナ様が屋敷にいること事態が珍しいので、無理ではないですか?」
「……返す言葉もありません。私、しばらくは、大人しく執務をするから、いいわよ?出歩いても」
「そうですか?では、屋敷へ一度戻り、少し、領地を回る時間をください。水車が出来たと言われても、見たことがないですし……」
「それなら、観光地にするなら、どういうのがあればいいなとか、提案してほしいの。行く先々でお願い出来ないかしら。領地の中にいる人って、なかなか、気が付きにくいけど」
「あまり、視察に出ない私なら、観光気分で見て回れるからという理由ですね?」


 コクと頷くと、請け負ってくれる。領地にいるあいだは、護衛が必要なので、誰かを必ずつけるように言っておく。


「ヒーナを連れていったらどうだ?」
「ヒーナをですか?それはかまいませんけど……何かあるのですか?ノクト様」
「いや、ヒーナも領地の視察は出たことがないんじゃないかと思ってな」
「アンナ様、よろしいですか?」
「もちろんよ!護衛としても一級品だし、ある意味、外の世界を知るいい機会だわ。私の回りにいるより、きっと、そのほうが、ヒーナのためにもなるし」


 イチアとヒーナの領地視察が決定した。私がいられるのは、始まりの夜会の1週間前までなので、それまで、向かってくれるだろう。許可だけだせば、後は二人で日程調整はしてほしいと伝えると、わかりましたとイチアは頷いている。
 この二人、あまり関わりのない者たちだが、大丈夫なのだろうか?と考えてみるが、イチアが大人なので、うまく立ち回ってくれるだろうと考えるのを放棄した。
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