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円卓外の内緒話Ⅴ
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「それは、どういうことだ?インゼロ帝国は、とても豊かな国なんじゃないのか?」
「そうではありませんよ?元々の帝国は、それほど大きな国土ではないです」
「確かに、インゼロ帝国は、戦争で領土を広げていった国だったはず」
「そうです。帝国も同じく不作や凶作で苦しんでいたというのも、領土拡大している理由のひとつです。まぁ、やり方は良くないと思いますけどね?」
ため息をひとつついたあと、カップに口をつける。王太子も頭を悩ませているのはわかる。
「食糧不足を解消すれば、戦争をする必要はないですよね?」
「確かに。ただ、王があの状態だと難しいとは思うが……」
「そこは、ほら。あれですよ?ねぇ?アンナリーゼ様」
珍しく名を呼ぶと思ったら、ニヤッと笑っている。これは、あれだ。公のことを指しているに違いない。
「ウィル、それは、しないよ?ここは、トワイスでもなければ、ローズディアじゃないもの。私はローズディアの公爵だから」
私の言葉にハッとしたような王太子は、侯爵の方をみた。公世子を公にしたことを出来なかと考えているのだろうか。
私たちがいることを思い出したのか咳ばらいをして話を元に戻すよう、侯爵が進言する。
「あぁ、すまない。ちょっと、別のことを。それで、話は戻すが、王の現状だ。あれは、麻薬を使われているで間違いないのだろうか?」
「医者ではありませんし、その手の研究者ではありませんが、症状は近いのではないでしょうか?聞いた話、最近側に置いている従者が、インゼロ帝国の戦争屋だって話は耳に入っていますよ?」
「どこから、仕入れるか、是非とも教えてほしいが……それが本当なら、そうなのだろう。そんな王を頂に置いておくことは、この国にとって、害にしかならないな」
「……あまり、大きな声でいうものではありませんよ?謀反で捕まってしまったら、他に対処できる人がいなくなってしまいます」
指摘すると、確かにと苦笑いする。わざわざ、王宮から離れた場所で会っているのだ。それには理由があることくらいわかってほしい。
「王のことは、なんとかして見せよう」
「それなら、2週間以内に片をつけてください」
「何かあるのか?」
「セバスが円卓に戻るのが、だいたい2週間後を予定しています」
「……円卓の友人か。なるべく早く、事を進めるようにしよう」
「まぁ、少しくらいならいいですけど、あんまり遅いと、私が片付けてしまいます。権力とか使って」
それは怖いなと少し茶化すように王太子は言うが、目はちゃんとわかっていると言っていた。
「あと、後ろ盾の件ですが、お断りしますね?国も違うし、やっぱり……って感じです」
「それは、困ったなぁ……」
「困りましたか?」
「困った。他に話せる人物がいないからな」
「国内に味方くらい作ってあると思いますけど?」
「頭でっかちな貴族主義の老害どもでは、そのあたりは何とも。どの国でもそうだと思うが、王が若ければ、なめられる」
「確かに。公もそのあたりは困っていますね。そのために、貴族の首を総入れ替えしたのですけどね?」
まったくぅ……とため息をつけば、王太子と侯爵はギョッとしている。どうかしましたか?と首を傾げてみれば、それを詳しく知りたいと言ったので、公に当時の貴族当主たちの性癖やら小さな悪だくみやらを片っ端から伝えてあげたと言ったらひいていた。
確かに、あのときの公や宰相の顔はおもしろいことになっていたが、私の情報網にかからないことはない。ただ、ゴールド公爵だけは、いろいろ後ろ暗いことはあっても、引きずり下ろすことは出来なかった。私とのバランスの兼ね合いで。
それだけが、私にとって心残りだ。
「なかなか、過激なのだな?」
「ご存じなかったですか?私、結構な感じですよ?血をたくさん吸っています。この手は」
自身の前に手を出し、手のひらを見せる。ギュっと握れば、驚いた。
「私は、公爵になったときに、約百人の命を奪いました。それも、女子ども関係なく。なんの罪もない人もいたはず」
「……それはどうして」
「私が公爵となった理由をご存じですか?」
「確か、領地を救うためだとか」
「そうですね。聞こえはいいですよね。実際、私は、公爵の地位を得て、国一番の領地になるように力を注いでいる。領民を守るために。その影では、たくさんの人を私のエゴで殺しました。アンバー領の領民から徴収していた税を横取りされていたからです」
「でも、それだけじゃ、それほどの人を死に追いやれないはずだ」
「えぇ、それだけでは無理です。私には、それができる手があった。これ以降は、時間があるときに、ご自身でお調べください。隠すことはいたしませんから」
「過去を聞いても、今の領地の噂を聞いて驚くことの方が多い」
それは、嬉しいですねと笑いかける。私は、平和的解決があるなら、それに手を伸ばす方がいいと王太子に語りかければ、頷いてくれた。
「では、ここからは、商談と行きましょう。エルドアの現状、困っていることは、作物の凶作によって、飢饉が起こりそうだということが1番の問題なのですね?」
「……そうだ。それさえ、解決できるなら、なんとか、持ちこたえられるかもしれない」
「それなら、アンバー領はとっておきの味方をしますよ!ただし……」
親指と人差し指で丸を作り、ニッコリと笑いかける。商談だと言ったので、王太子もなんのことかはわかっていただろう。
「これしだいです!」
お金で解決できることは、してしまいましょうと言えば、さすがに引きつった顔をしている。どこもかしこも作物の育ちが悪かったりの悩みはあるのだから、助けますよと微笑んだ。
「そうではありませんよ?元々の帝国は、それほど大きな国土ではないです」
「確かに、インゼロ帝国は、戦争で領土を広げていった国だったはず」
「そうです。帝国も同じく不作や凶作で苦しんでいたというのも、領土拡大している理由のひとつです。まぁ、やり方は良くないと思いますけどね?」
ため息をひとつついたあと、カップに口をつける。王太子も頭を悩ませているのはわかる。
「食糧不足を解消すれば、戦争をする必要はないですよね?」
「確かに。ただ、王があの状態だと難しいとは思うが……」
「そこは、ほら。あれですよ?ねぇ?アンナリーゼ様」
珍しく名を呼ぶと思ったら、ニヤッと笑っている。これは、あれだ。公のことを指しているに違いない。
「ウィル、それは、しないよ?ここは、トワイスでもなければ、ローズディアじゃないもの。私はローズディアの公爵だから」
私の言葉にハッとしたような王太子は、侯爵の方をみた。公世子を公にしたことを出来なかと考えているのだろうか。
私たちがいることを思い出したのか咳ばらいをして話を元に戻すよう、侯爵が進言する。
「あぁ、すまない。ちょっと、別のことを。それで、話は戻すが、王の現状だ。あれは、麻薬を使われているで間違いないのだろうか?」
「医者ではありませんし、その手の研究者ではありませんが、症状は近いのではないでしょうか?聞いた話、最近側に置いている従者が、インゼロ帝国の戦争屋だって話は耳に入っていますよ?」
「どこから、仕入れるか、是非とも教えてほしいが……それが本当なら、そうなのだろう。そんな王を頂に置いておくことは、この国にとって、害にしかならないな」
「……あまり、大きな声でいうものではありませんよ?謀反で捕まってしまったら、他に対処できる人がいなくなってしまいます」
指摘すると、確かにと苦笑いする。わざわざ、王宮から離れた場所で会っているのだ。それには理由があることくらいわかってほしい。
「王のことは、なんとかして見せよう」
「それなら、2週間以内に片をつけてください」
「何かあるのか?」
「セバスが円卓に戻るのが、だいたい2週間後を予定しています」
「……円卓の友人か。なるべく早く、事を進めるようにしよう」
「まぁ、少しくらいならいいですけど、あんまり遅いと、私が片付けてしまいます。権力とか使って」
それは怖いなと少し茶化すように王太子は言うが、目はちゃんとわかっていると言っていた。
「あと、後ろ盾の件ですが、お断りしますね?国も違うし、やっぱり……って感じです」
「それは、困ったなぁ……」
「困りましたか?」
「困った。他に話せる人物がいないからな」
「国内に味方くらい作ってあると思いますけど?」
「頭でっかちな貴族主義の老害どもでは、そのあたりは何とも。どの国でもそうだと思うが、王が若ければ、なめられる」
「確かに。公もそのあたりは困っていますね。そのために、貴族の首を総入れ替えしたのですけどね?」
まったくぅ……とため息をつけば、王太子と侯爵はギョッとしている。どうかしましたか?と首を傾げてみれば、それを詳しく知りたいと言ったので、公に当時の貴族当主たちの性癖やら小さな悪だくみやらを片っ端から伝えてあげたと言ったらひいていた。
確かに、あのときの公や宰相の顔はおもしろいことになっていたが、私の情報網にかからないことはない。ただ、ゴールド公爵だけは、いろいろ後ろ暗いことはあっても、引きずり下ろすことは出来なかった。私とのバランスの兼ね合いで。
それだけが、私にとって心残りだ。
「なかなか、過激なのだな?」
「ご存じなかったですか?私、結構な感じですよ?血をたくさん吸っています。この手は」
自身の前に手を出し、手のひらを見せる。ギュっと握れば、驚いた。
「私は、公爵になったときに、約百人の命を奪いました。それも、女子ども関係なく。なんの罪もない人もいたはず」
「……それはどうして」
「私が公爵となった理由をご存じですか?」
「確か、領地を救うためだとか」
「そうですね。聞こえはいいですよね。実際、私は、公爵の地位を得て、国一番の領地になるように力を注いでいる。領民を守るために。その影では、たくさんの人を私のエゴで殺しました。アンバー領の領民から徴収していた税を横取りされていたからです」
「でも、それだけじゃ、それほどの人を死に追いやれないはずだ」
「えぇ、それだけでは無理です。私には、それができる手があった。これ以降は、時間があるときに、ご自身でお調べください。隠すことはいたしませんから」
「過去を聞いても、今の領地の噂を聞いて驚くことの方が多い」
それは、嬉しいですねと笑いかける。私は、平和的解決があるなら、それに手を伸ばす方がいいと王太子に語りかければ、頷いてくれた。
「では、ここからは、商談と行きましょう。エルドアの現状、困っていることは、作物の凶作によって、飢饉が起こりそうだということが1番の問題なのですね?」
「……そうだ。それさえ、解決できるなら、なんとか、持ちこたえられるかもしれない」
「それなら、アンバー領はとっておきの味方をしますよ!ただし……」
親指と人差し指で丸を作り、ニッコリと笑いかける。商談だと言ったので、王太子もなんのことかはわかっていただろう。
「これしだいです!」
お金で解決できることは、してしまいましょうと言えば、さすがに引きつった顔をしている。どこもかしこも作物の育ちが悪かったりの悩みはあるのだから、助けますよと微笑んだ。
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