~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
71 / 99

第71話 ろこさんの不安

しおりを挟む

 そして、ケーキセットを頼んでから話が始まる。


「配信者、アニメ業界──ネットの歌い手。偶然売れていくと知り合っていくものですよ」

「まあ、たまにあったり情報交換したりしてますね。そういう所から、仕事が入ってきたりしてきますし」

 私はコクリとうなづいた。

 私も、事務所に所属している以上芸能界とのかかわりがないわけではない。色々と情報を仕入れることだって重要なのだ。それに、配信者だっていつまで続けられるかわからない。思わぬ転向をすることになることもあり得る。


 その時に、その業界の人とつながりが必要になるのだ。それだけじゃなく、知名度を上げるために有名人とコラボ配信とかをして、互いにファンそのものを増やしたりすることもある。

 だから、色々な業界の人とつながりを作っていたのだ。互いにファンを作るために。

「やっぱり、一流となるとそういうことも考えているんやな。ワイも同じ配信者として、とても参考になるで」

「まあ、全力は尽くしてますが、それでも何が起こるかわからない、自分で全部何とかしなきゃいけないのがこの職業ですから、ろこさんだってそうでしょう?」

「わかるわかる。うちらも大変やしな。いろんな情報を集めて、悪評立ってるパーティーの戦闘シーンを何度もチェック。一人ひとり苦手な動きや戦い方をリストアップして、綿密に相手のスケジュールの把握をしてから、ひっそりと姿を隠して戦う。万が一無実だったことがわかって、悪さをしてへん人に奇襲なんかしたりしたら、大炎上間違いなしやもんなぁ」

「たしかに、ろこさんの戦い方や配信スタイルってそういうの大変そうですよね。神経を使いそうというか」

 ろこさんの配信は、他とは違う水戸黄門っぽい要素もあるそう言った大変なことがある代わりに「自分しかできないこと」があるというのは魅力的だ。
 配信者はたくさんいて、みんな同業者との差別化に苦労しているのだから。


「璃緒はん、うちらの動画見とったんか?」

「はい。知ってますから、加奈ロコさんの手口と戦い方、覚えておかないと痛い目を見ますから」

「うっわぁ……対策してたんか」

「対策必須ですもん。奇襲してきたら返り討ちにするつもりでした」

「うぅ……」

 苦笑いをして、コーヒーを口にするろこさん。ろこさんは──特に問題を起こしてない私たちを奇襲しようとは考えにくいけど──万が一という事もある。

 他にも、私たちを奇襲して倒して、名を上げようとしている配信者はいる。だから奇襲にだって対応している。ろこさんクラスなら返り討ちにはできるが、思いもよらない策を使って来る人はいた。こっちは、相手がどんな奇襲をしてこようとその場で対処しなければならないのだから。

「まあ、璃緒さんたちパーティーは品行方正で悪いことはしてへん、奇襲なんかしたら、ボコボコにされた挙句にうちらが大炎上間違いなしやからな。他の奴らも、口は悪いけど他のパーティーに危害を加えたりはせぇへんしな」

「そうなのじゃ。璃緒殿のパーティーの動画を見たが、困っている人を助けたり、悪い迷惑系配信者を返り討ちにしたり、まさに正統派の配信者という感じじゃったぞ」

「ほめていただいて、ありがとうございます。ネフィリムさんこそ、癖のある喋りと、強い実力がすごいと思います」

「おおっ。ありがとうなのじゃ」

 そんなところでコーヒーとケーキが来て、ケーキを食べる。

「おおっ、値段だけあって味も抜群やな。コーヒーも普段飲んでるやつより数段美味しいで」

 ろこさんは、そう言ってもぐもぐとショートケーキを頬張る。とても美味そう。

 確かに、私もモンブランを一口食べるが、チェーン店のケーキよりも深みのある味をしている。
 銀色のカップに入ったコーヒーも、本格的な味といった感じだ。

 そして、コーヒーを味わって半分ほど飲んだところで、ろこさんに視線を向ける。

「じゃあろこさん、始めましょうか?」


「な、な、なんや?」

 視線を向けられ、きょどきょどするろこさん。怖がらなくて大丈夫。今日は、ろこさんのためにこの場を用意したんだから」

「決まってるじゃないですか。ろこさん──やっぱり、戦うの怖いですか?」

「あ……」

 私が質問をすると、ろこさんはそう言って言葉を失ってしまう。やっぱりといった感じだ。

「答えを聞くまでも、ありませんね」

「そうなのじゃ」

 ネフィリムさんもHIASOBIさんも表情だけですべて理解した感じだ。ろこさん──自分な感情が顔に出やすいタイプでしょこれ。にっこりと笑顔を作って、話しかける。。

「話、聞かせてもらえませんか?」

 ろこさんが私達から目をそらし、うつむいて話始める。


「うち、不安なんや。このまま戦いを続けたら、加奈を傷つけてしまうんやないかって。うちが痛い目を見るだけならええ。こういいスタイルで戦うと決めたし、それで反撃されたら自業自得やから。けど、加奈のあの表情を見て、迷ってしまっとる自分がいる。このまま、配信者を続けてもええんかなって」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...