~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
上 下
72 / 99

第72話 ろこさんは、これなら

しおりを挟む

 ろこさんが再び顔を上げて視線が合う。悲しそうな表情をしている。
 そこまで考えこんでたんだ……これはちょっと深刻かな。
 加奈さんのことを、よく考えているんだ。

 普段は明るくて、ムードメーカーみたいな感じの雰囲気だったんだけど、本当はネガティブなところもあって、加奈さんのことをとても考えている。

 だから、ろこさんへの声掛けも一工夫必要。ちょっと考えないと──どうすればいいか考えていると、話しかけたのはネフィリムさんだった。コクリとうなづいて、優しい笑みを浮かべる。


「大丈夫なのじゃ。加奈殿だって、ろこ殿と戦いたがっているはずじゃ」

「それは、見ていてわかります。加奈さん、ろこさんと戦っているとき。とても楽しそうでした。やりがいを感じていたというのがわかります」

 ネフィリムさんもHIASOBIさんも、2人に戦ってほしいと思っているんだ。
 そうだ。こうすれば、ろこさんの心に言葉が届くはず。

 そう確信して、私もろこさんに強気な表情で話しかける。

「私も思います。加奈さん、ろこさんのことをとても大切にしているとみていてわかるんです」

「そうなんか?」


 予想通り、ろこさんの表情が変わったのがわかる。やっぱりそうだ。ろこさんは、自分
 事だけだと、まだネガティブな感情をぬぐい切れていない。でも、加奈さんのためなら、ろこさんは勇気を出して頑張れる。

 自分のためならダメでも、大切な人のためなら頑張れるタイプなんだ。それなら、そこを生かして言葉を返していこう。

「そうですよ、生き生きしてましたもん。戦っているときの その思いにこたえるのが、加奈さんのためでもあると思うんです」

「そうか? せやけど」

「大丈夫です。ろこさんと加奈さんなら、絶対活躍できますって。強いですし、結束力ありますし──一人で怖いなら、最初は私達が一緒にいますから。配信者に生きがいを感じている加奈さんのためにも、ここは勇気を出して頑張りましょう!!」



 強気な表情で、きっぱりと言ってから、ろこさんの両手をぎゅっと握る。

「気丈なふりをして、結構繊細なんですね──でも、ろこさんなら大丈夫さと思います」
「そんなことないで。うち、こう見えて怖がりなとことかあるし──意外と小心者なんや」

 ろこさんの目をじっと見ながら言葉を返す。


「でも、最後まで逃げないで戦ったじゃないですか」

「加奈を見捨てて逃げるなんて、うちには逃げなかったんや。加奈はやさしくて、困っているときに励ましてくれた。いつもうちのことを想ってくれた、それだけは出来んかったんや」

「そう、そこですよそこ。そういう、目の前の損得よりも大切な人のために動けるって素晴らしいと思います。ろこさんは、自分が思っているよりも優しくて、仲間想いで素晴らしい人だと思います」

「め、面々と言われると調子狂うわぁ~~」
 ナイスネフィリムさん!
 そして、優しい笑みでじっと目を見る。

「そうですよ。信じていますから、ろこさんの事」

 ろこさんの目が大きくほらいて、じっと見つめてくる。
 心に響いているというのが、よくわかる。このまま、押し切っていこう。

「うちを……信じる??」

「はい。ろこさんなら、きっと立ち直れると信じています」

 ろこさんの手を、より強く握る。

「だから頑張りましょう。私、応援してますから!!」

「璃緒さんが?」


「はい。ろこさんが立ち直るというのなら──私応援します。コラボだってします。だから、一緒に配信者業頑張りましょう!! それに、ろこさんの活躍を待っている人だっているんだすから。答えましょうよ、配信者なんだから」

「待っている人か。確かに、こんなうちにも待っている人はおる。応援してくれる人か。なんかわかったわ。うち──」

「そうです。私達には、待っている人がいます。応援してくれるファンがいる限り、つらいことがあっても歌い続けるのが私の使命だと考えています」



 HIASOBIさんの言葉に、どこか肩の荷が下りたのかすっきりとした表情になった。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁっ! ワイは──強い魔物なんかに、負けたりせぇへんでぇぇ!! うち、加奈とファンのために立ち上がったる!!」

 ろこさんは立ち上がった後、こぶしを強く握って言った。かなり吹っ切れたような様子。やっと、覚悟を決めてくれたのかな?


 あまりに声が大きかったせいか、周囲の視線を集めてしまう。ろこさんは、それを理解したのか、すぐに座って、顔を赤くして縮こまってしまった。

「うぅ……やっぱり、品のいいとこはうちには合わへんで……調子狂うなぁ」

「強い魔物には、負けないのじゃ──ビクンビクン」

「ネフィリムさん、どこで覚えたんですかそれ……」


「まあ、元気な方がろこさんらしくていいですよ。私達も、しっかりとサポートしていきますから。これから頑張りましょう」


「わらわも、出来ることならてつだいぞい」

 私とネフィリムの言葉に、ろこさんの表情が柔らかくなる。

「本当に、ありがとな。期待に応えられるようがんばるでぇ」

「応援してるのじゃ」

 何とか、ろこさんも戦う決意をしてくれた。大丈夫、ろこさんはとっても意思が強いから、トラウマを克服できるはず。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...