55 / 99
第55話 変わった世界観
しおりを挟むそして、目を開ける。目の前にあったのは──薄暗い洞窟のダンジョン。
けど、いつもと違って魔物はいない。
「あれ、賽銭箱ですか? 鳥居もありますね」
「ああ、神宮でも見たのじゃ。こっちの世界の物じゃろ?」
確かに、洞窟内。目の前にあったのは大きな鳥居と賽銭箱。どう考えても不自然、他には何もない。
「とりあえず行ってみるか」
他に見るべきものは特にない。あそこに行くと何かあるのか?
そしてと賽銭箱の前に近づくと──。
シュゥゥゥゥゥゥゥ。
すぐに光の柱のようなものが現れる。なんだと思うと、光の柱の中に人影。光が徐々に薄まっていくと、その人物があらわになる。
「からすみさんご一考ですね、お待ちしておりました」
「知ってるぞ、巫女さんというやつなのじゃ」
ネフィリムの言葉の通り、白い巫女服の黒髪で背が高い女の人がそこにいた。
彼女に、璃緒がそっと話しかける。
「え、え、えっと──こんにちは~~」
「こんにちは」
「その、案内役の方ですか?」
「その、案内役の方ですか?」
巫女服の女の人はコクリと頷いた。今回は和風な雰囲気なのか? 今までとは違う雰囲気を感じる。
「はい。本日は、47(仮)をご利用いただきありがとうございます」
「巫女さん。かわいいのじゃ。説明の方、よろしくなのじゃ」
「このダンジョンは、半年後に開放予定となっております。しかし、その前にダンジョンを歩くサンプルを欲していました」
「それが、わらわたちだったという事か」
「はい、からすみさんたちは実績も十二分にあり不測の事態にも十分対応できると思っています。ですので、サンプルとしてダンジョンの冒険をしてほしいのです。という設定です」
「どんなダンジョンなんだ?」
「全国の四十七都道府県をモデルにした、47の試練が待っています。まあ、従来のダンジョンとは違った、昔の日本のような奮起を醸し出しています」
なるほど、だから47なのか。変わったダンジョンんだな。設定も俺たちが新たに作られたダンジョンを冒険するという設定なのか。なんか新鮮で、楽しみだ。
“なるほど、初めて見た設定だな”
“試作ダンジョンか──他とは違うものが待っているのだろうか”
“もしかして──またクソダンジョンとか”
“あり得る。からすみはクソゲーを呼び寄せてるからな”
“わかるわかる。俺もそのつもりで見てる”
視聴者たちもこのパターンは初めてなのだろう。ちょっと盛り上がっている。それにしても、俺=クソダンジョンという評判が広まってしまっている。
風評被害なのかこれ??
ちなみに、コメントを見たネフィリムはぷっと笑って苦笑いをしていた。
「もしかしたら、澄人がクソダンジョンを引き寄せているかもしれないのじゃ」
「かもしれません。そういう人って、たまにいるんですよね。この47(仮)も、からすみさんが来たせいで運命が決まってしまったのかもしれません」
璃緒までからかうような笑みと言葉を向けてくる。そこまで言わなくても。
……まあ、ここまできて逃げ出すわけにもいかない。行くしかないだろう。
「わかった、参加させてもらうよ」
「ありがとうございます」
巫女の人が、優しく笑みを浮かべて言葉を返してくる。
「それでは、送りますね」
巫女の人が、両手を重ねて祈るようなポーズをとる。少し経つと、巫女の人が白く光り始め」続いて俺たちの身体も光り始める。
「楽しんでいってください」
「わかりましたなのじゃ。楽しんで行ってくるのじゃ」
そして俺たちの視界が一瞬光を浴びたように真っ白になる。どんなダンジョンなのか?
はたまたクソダンジョンになってしまうのか? とても楽しみだ。
視界が戻っていく。
どんな世界が待っているのだろうか──。
目の前にあったのは──どこかの田舎にありそうな風景。夕焼けの、オレンジ色の空。
田園風景が広がっている。
「なんか、私の実家みたい」
「ほう? 璃緒殿のふるさとはこんな風景なのか? きれいじゃのう」
ネフィリムは、初めて見た景色なのだろう。でも俺もあまり見たことはない。大昔、子供のことに遠い親戚の所に行ったとき以来か? ダンジョンなのに、日本のふるさとを具現化したような光景をしている。
そして、ここから何が起こるのだろうか。とても気になる。
周囲を確認する。地面はヒビからは雑草が生えている古びたコンクリート。電柱を確認。広島県芸備市。広島県?
そんなことを考えていると、背後から叫び声みたいな声が聞こえた。
ギッッ──ギャァァァァァァァァァァァッッッッ!!
慌てて振り向くと、田畑の中に白くて大きな化け物が走っている。その前には、逃げまどう高校生くらいの女の子。
間違いなく逃げているのがわかる。ネフィリムと璃緒に視線を合わせて──・
「助けるのじゃ」
「行きましょう」
すぐに女の子を助けに行く。白い化け物は今にも女の子に追いつきそうになって、手をかけようとしたその時。
「やらせませんよ!」
「させないのじゃ!」
3人でとびかかり、一撃で化け物を切り裂いた。八つ裂きになった化け物は蒸発するように消滅。
そして、女の子がこっちに来て行儀良く頭を下げた。
「バビゴンを倒していただいて、ありがとうございました」
12
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる