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第50話 最高の時間

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 カリッとした音とともに、サクサクの衣と甘くてやわらかい玉ねぎの味が口の中に響き渡る。

 カリカリの衣と甘い玉ねぎとケチャップの程よいハーモニー。

「こんなに美味しいものだとは思わなかったのじゃ」

「俺も思った。チェーン店でも食べたことあったけど、そこのよりずっと美味しい」

 オニオンだけでも、この店の料理がとてもよく作られているというのがわかる。次は──パスタに行ってみよう。生パスタはかなり久しぶり。香りもかなりいいし、かなり期待できそうだ。

 フォークでパスタをくるくると巻いて、一口いれてみる。

「へぇ、すごいじゃん」

「確かになのじゃ。宮殿で出された料理にも、引けを取らないおいしさだぞい!!」

 普段ファミレスで食べている物よりも高いけど美味しい。味が濃い目でコクがあるチーズに、甘酸っぱさとしょっぱさが程よく合わさっている。パスタも、コンビニとかで買っているパスタと比べてももちもちとしている。流石は生パスタだ。

「流石は専門店って感じ」

「そうなのじゃ。前の世界で食べたパスタよりも、格別に美味しいぞい」

「まあ、前のパスタは乾麺ばっかりだったからね」

 それに関しては、保存の関係だから仕方がない。ネフィリムもパスタを美味しそうに食べている。ネフィリムは、さっきのサラダもそうだけど美味しそうに食事をしている。よろこんでいる表情を見るとこっちまで嬉しい気分になる。


 オニオンリングも、カリッとした衣に柔らかい玉ねぎとケチャップがあってとてもいい味だったよく合う。

 そして、パスタを半分ほど食べるとネフィリムがにっこりとして言い出した。

「一口交換するのじゃ」

「え?」

「だって、そっちがどんな味か気になるのじゃ。一口あ~~んして食べさせてほしいぞ」

「あ~~ん、なのじゃ」

 マジかよ……こんなところで。お昼時なだけに人もそれなりにいるというのに。……。流石にちょっと恥ずかしいためらいの感情は当然あったけど、強くせがまれて断り切れなかった。

「わかったよ。ちょっと待っててね」

「ありがとうなのじゃ。そっちのパスタもとっても美味しそうなのじゃ!!」

 満面の笑みで、ソースが絡まったパスタをこっちに向けてくる。

 仕方がないな。恥ずかしがりながら、目をつぶってゆっくりとネフィリムの出してきたパスタに口をつける。

「あ~~んなのじゃ!!」

 うん、こっちもかなり美味しい。
 カルボナーラ特有のチーズの味とコクのあるクリームが絶妙にマッチしている。ちょっとこってり系で俺が食べたパスタとは違うけどこれはこれで美味しい。

「今度は澄人の番なのじゃ、そちのパスタも食べたいのじゃ」

「わかったよ」

 そして、俺も同じようにソースを絡めてパスタを巻いてからそれをネフィリムの元へ。ネフィリムは嬉しそうに目をつぶってそれも口に入れた。

「おおっ、美味しいじゃん」

 濃厚なチーズやクリームの味が口の中いっぱいに広がっている。しっかりした味で、コクがある。

「そうじゃろ。どっちも大成功だったのじゃ」

 時折しゃべりながら、どんどん食事が進む。割とあっという間に、食事がは終わってしまった。
 最後にお冷を飲みながら、渋谷の街を見下ろして会話する。

「うん、とっても美味しいのじゃ。素晴らしいお店だったぞい、褒めてつかわすぞ」

「そう、喜んでくれてよかった」

 にぎやかな街。景色もいいなこれ。

「そういえば、間接キス──じゃったな。あの食べ比べ」

「た、確かに」

 ネフィリムが顔をほんのりと顔を赤くして、俺から視線を逸らす。
 恥ずかしいのか? ネフィリムにも、そんな感情があるのかな?

「思い出したら、ドキッとしてしまったぞい」

「俺もだ。考えたらこういうことをするのって初めてだな」

 俺もちょっと恥ずかしい。間接キス──まさか初めての相手が元魔王だとは。
 どんな運命のめぐりあわせだよ。でも、俺のパスタを口に入れた時の、目をつぶったネフィリムの表情。あれは綺麗だった。キスするとき、あんな表情で顔を近づけてきたら──そう考えるだけで、心臓が爆発しそうになる。本当に、女神って感じだった。どきどきするな。まあ、まだそんな関係とは言えないけど。
 そして間接キスの事実に動揺して、思わず会話が途絶えてしまう。気まずい雰囲気になってしまった。どうすればいいか考えて、一度店から出ることとなった。

 レシートを手に取ってお会計。最初だし、ここは俺が全部払おうか──そう考えて俺が財布を取ろうとするとネフィリムも財布を取った。


「お会計は任せるのじゃ!」

 バリバリ──。

「やめて」

 思わず言ってしまった。というかマジックテープの財布だったのか。紫を基調とした、2つ折りの財布。とりあえず、俺がおごることを伝えるか。慌ててネフィリムの財布に手を置く。

「今日はご馳走するよ。初めてなんだし」


「気にするでない。澄人と一緒にいてとても楽しかった。だから、わらわ出すのじゃ」

 嬉しそうな表情をして言葉を返してくる。まあ、断るのも逆に悪い気がするしここは受け取っておこう。
 半分ずつ代金を支払ってから、店の外に出る。

扉を閉めて、チリンチリンと鈴の音が鳴る。エレベーターで1階へ降りて外に出て、息があったのか思いっきり背伸びをする。

「うん、美味しかったね。本格的」

「来てよかったのじゃ」
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