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第12話 金貨が一枚
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▽
さいわいアイス
材料
・バニラアイス
・ソーダアイス
・ラムネクッキー
▽
白と青、涼しげな透明器の上、どんと盛られた2つの玉にラムネクッキーがブッ刺さっている。
まぁまぁの味のアイスを食しながら。
「ラムネクッキーとはユニークだなぽりぽり」
「まぁまぁぽりぽり」
「ラムネが大きいのがありがたいですねぽりぽり」
▼▼▼
▽▽▽
ラムネとバニラとソーダの妙を楽しみつつも話題は掃除し終え鏡を回収してまだ報告していない請け負ったCランククエストのことだ。
「Gランククエストのことだが」
「そうですね、アレはGどころではないかと申し訳ありませんクエストを選んだ私のミスです」
「気にすんなって、まぁ魔術師アイだから問題はなかったけどさ、望鏡者たちに注意喚起した方がいいんじゃないのか? このところ……多いみたいだしな?」
「魔術師アイが呪われている」
「黒兎、俺のイメージ構築ではその可能性もないとは言えない……!」
「魔術師アイ様は呪われてはいませんが……それは、出来ません」
「ほぉ……なにか理由が」
「すみませんこれは我々ミラー機関内の問題であり、不確かな情報をもってして望鏡者達の利益を損なうような生業の邪魔は出来ません。黒い鏡を回収できれば十華鏡を通して……今回はGランクということでクエスト達成とさせてもらえないでしょうか」
「じゅっかきょう……そうか、新参者の俺のイメージ構築が足りなかったな。じゃあ任せたサティさん」
「助かります、このお礼はかならず」
席から立ち上がったサティは銀髪を垂れ下げながら深々と2人に頭を下げた。
「じゃあDランク昇格は?」
真っ直ぐに見つめる紅い瞳に対して、顔を上げたサティは少したじろぎ引き攣り。
「も……もう少し、お邪魔することになるかと!」
「はははは、Dランク望鏡パーティー紅ノ瞳はおあずけだな黒兎」
「はぁ変なの…………ぽりっ」
▼▼▼
▽▽▽
正直美味かった! な、さいわいユニークアイスを完食しみんなの腹も満たされこれ以上の長居も無用になった。貸し切り状態でのんびりとくつろげたのは良かったけど……。
「ガァちゃんの餌代ひとつギンイチ、合わせてギンシチ確かに受け取った」
サティと店主に誘導されガァちゃん専用ラムネタバコを14本購入した黒兎。
手に持った束の半分を少し様子のおかしいサティに分け渡し。
「烏ってなつくの?」
「なつきますよ! ラミラの人々が烏とともに暮らしているのは当たり前のことです、今回のクエストの鏡の欠片探しはミスくんが協力してくれましたし、でも賢い生き物です礼節を欠かないように……ささ行きましょう!」
「う、うんなんでそんなねっけ……魔術師アイは?」
「はは、俺はいいこっちの支払い済ませておくぜ、魔術師アイだからな」
「魔術師アイ様……!」
アイは深々と頭を下げたサティに苦笑いしつつ。頭を上げたサティと連れられた黒兎の2人は店の外にある枯れ木に待つガァちゃんの元へと向かった。
その一連の後の、妙な間を店主と金髪2人目を合わせ一瞬微笑い合い。
「じゃあこれで次来たときもたのむぜ」
「たしかに分かった、だがな魔術師」
ガサゴソと巾着袋をさがしあけ差し出した1枚の金貨は後ろ手にされ背後から取られていた。
『深入りすんじゃねぇぞ』
「ナ、なんだ!?」
耳元で囁く渋い声、目の前にいるはずのヤツがいない。一瞬目を離した隙に俺は、これは……魔術、それも恐ろしく精巧な水の糸に絡め取られている……。
両腕両脚それに腰、細い水の糸は絡め拘束し動きたくても動けない魔術師として魔術で抗えるが抗うことは許されない、ゾクゾクと身体は反応しイメージ構築で相手の実力を測る。
『望鏡者ならその辺に落ちて濁った鏡拭いてりゃいい』
「はは……天才魔術師アイでもか」
「ハクになってから言えよ追放マイ五の金髪魔術師、フッ」
水の先端だけが凍る、細い鋭利な水氷の触手棘が目の前に無数に展開しアイを指し示している。
もう幾度も飲んだ固唾──
殺せるのに殺されないそんな嘲笑われている状況と運命に魔術師アイならばどうするか。
心はアツく、頭は冷静、イメージ構築の共有は何も味方だけじゃない。魔術師ならば尚更────。
「……チャーシュー麺まぁまぁだな、ちょっと薄かったけどおお!」
繋がっていた細い全てはその繊細さを欠き溶け出し、ぬるりとアイの身体を滑り天へと登る水蛇と化した。
合体魔法というよりは一瞬にして密になった2人の身体を通し合体させられた魔術は天へとぶつかり飛沫の雨を降らした。
「誰かしらねぇが今までどおり隠居するならしとけよ、ハク十の次はマイ五があんたを抜かすからよ」
「……フッ」
雨に濡れた2人の魔術師。
ダークガーネットの瞳はくすんだ混沌の目をワラい睨みつけてその場を去っていった。
残されたぬれた手の中の金貨が一枚。天に弾いて地に堕ちたのは望鏡の女神、それとも鏡の欠片、和を成す華なのか────。
さいわいアイス
材料
・バニラアイス
・ソーダアイス
・ラムネクッキー
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白と青、涼しげな透明器の上、どんと盛られた2つの玉にラムネクッキーがブッ刺さっている。
まぁまぁの味のアイスを食しながら。
「ラムネクッキーとはユニークだなぽりぽり」
「まぁまぁぽりぽり」
「ラムネが大きいのがありがたいですねぽりぽり」
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ラムネとバニラとソーダの妙を楽しみつつも話題は掃除し終え鏡を回収してまだ報告していない請け負ったCランククエストのことだ。
「Gランククエストのことだが」
「そうですね、アレはGどころではないかと申し訳ありませんクエストを選んだ私のミスです」
「気にすんなって、まぁ魔術師アイだから問題はなかったけどさ、望鏡者たちに注意喚起した方がいいんじゃないのか? このところ……多いみたいだしな?」
「魔術師アイが呪われている」
「黒兎、俺のイメージ構築ではその可能性もないとは言えない……!」
「魔術師アイ様は呪われてはいませんが……それは、出来ません」
「ほぉ……なにか理由が」
「すみませんこれは我々ミラー機関内の問題であり、不確かな情報をもってして望鏡者達の利益を損なうような生業の邪魔は出来ません。黒い鏡を回収できれば十華鏡を通して……今回はGランクということでクエスト達成とさせてもらえないでしょうか」
「じゅっかきょう……そうか、新参者の俺のイメージ構築が足りなかったな。じゃあ任せたサティさん」
「助かります、このお礼はかならず」
席から立ち上がったサティは銀髪を垂れ下げながら深々と2人に頭を下げた。
「じゃあDランク昇格は?」
真っ直ぐに見つめる紅い瞳に対して、顔を上げたサティは少したじろぎ引き攣り。
「も……もう少し、お邪魔することになるかと!」
「はははは、Dランク望鏡パーティー紅ノ瞳はおあずけだな黒兎」
「はぁ変なの…………ぽりっ」
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正直美味かった! な、さいわいユニークアイスを完食しみんなの腹も満たされこれ以上の長居も無用になった。貸し切り状態でのんびりとくつろげたのは良かったけど……。
「ガァちゃんの餌代ひとつギンイチ、合わせてギンシチ確かに受け取った」
サティと店主に誘導されガァちゃん専用ラムネタバコを14本購入した黒兎。
手に持った束の半分を少し様子のおかしいサティに分け渡し。
「烏ってなつくの?」
「なつきますよ! ラミラの人々が烏とともに暮らしているのは当たり前のことです、今回のクエストの鏡の欠片探しはミスくんが協力してくれましたし、でも賢い生き物です礼節を欠かないように……ささ行きましょう!」
「う、うんなんでそんなねっけ……魔術師アイは?」
「はは、俺はいいこっちの支払い済ませておくぜ、魔術師アイだからな」
「魔術師アイ様……!」
アイは深々と頭を下げたサティに苦笑いしつつ。頭を上げたサティと連れられた黒兎の2人は店の外にある枯れ木に待つガァちゃんの元へと向かった。
その一連の後の、妙な間を店主と金髪2人目を合わせ一瞬微笑い合い。
「じゃあこれで次来たときもたのむぜ」
「たしかに分かった、だがな魔術師」
ガサゴソと巾着袋をさがしあけ差し出した1枚の金貨は後ろ手にされ背後から取られていた。
『深入りすんじゃねぇぞ』
「ナ、なんだ!?」
耳元で囁く渋い声、目の前にいるはずのヤツがいない。一瞬目を離した隙に俺は、これは……魔術、それも恐ろしく精巧な水の糸に絡め取られている……。
両腕両脚それに腰、細い水の糸は絡め拘束し動きたくても動けない魔術師として魔術で抗えるが抗うことは許されない、ゾクゾクと身体は反応しイメージ構築で相手の実力を測る。
『望鏡者ならその辺に落ちて濁った鏡拭いてりゃいい』
「はは……天才魔術師アイでもか」
「ハクになってから言えよ追放マイ五の金髪魔術師、フッ」
水の先端だけが凍る、細い鋭利な水氷の触手棘が目の前に無数に展開しアイを指し示している。
もう幾度も飲んだ固唾──
殺せるのに殺されないそんな嘲笑われている状況と運命に魔術師アイならばどうするか。
心はアツく、頭は冷静、イメージ構築の共有は何も味方だけじゃない。魔術師ならば尚更────。
「……チャーシュー麺まぁまぁだな、ちょっと薄かったけどおお!」
繋がっていた細い全てはその繊細さを欠き溶け出し、ぬるりとアイの身体を滑り天へと登る水蛇と化した。
合体魔法というよりは一瞬にして密になった2人の身体を通し合体させられた魔術は天へとぶつかり飛沫の雨を降らした。
「誰かしらねぇが今までどおり隠居するならしとけよ、ハク十の次はマイ五があんたを抜かすからよ」
「……フッ」
雨に濡れた2人の魔術師。
ダークガーネットの瞳はくすんだ混沌の目をワラい睨みつけてその場を去っていった。
残されたぬれた手の中の金貨が一枚。天に弾いて地に堕ちたのは望鏡の女神、それとも鏡の欠片、和を成す華なのか────。
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