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金ポデは仲間たちがつなぎ作り出したチャンスに、

“んああーーッ”

雄叫びを上げてゲートキーパーのオークに黒警棒を片手に突貫した。

使用したカードの効果により身体能力は1.1倍に上昇さらに一振りで2回分の斬撃を与えるダブル斬りの効果も得る。

金ポデはポニーテールを乱し黒い旋風となり暴れ回る。
本体のオークはゲートキーパー仕様のスーパーな電子保護シールドを纏い怯みもせず戻ってきた友達をジャグリングしつづけるが、猛攻連打、黒警棒に幾度となく殴打されシールドはビリリと破裂音を立て打ち砕かれた。

無防備となった青い豚面のアタマに向かいジャンピング。
金ポデが跳躍し全力で振り下ろした一撃は脳天を砕き、痛恨のイチゲキをもらったGKスライムジャグラーシューターⅣは散り散りの白となり失せた。

ボス級を一匹葬ったが休んでいる暇はない8秒間限定のダブル斬りの効果は消えたがインファイトに持ち込みもう一体の敵のジャグリングを止める必要がある。
すぐさま着地した金ポデは敵に向かい走り、

お手玉、お手玉、ジャグリング。
あわてないあわてないさすがのゲートキーパーモンスター。
ボックススライムの青色が黒紫へとまたもたくらみ染まっていく。
しかしその間にぼーっと見てる、吐い信者などいない。丘梨栄枯も金ポデの活躍を信じ既に雑魚散らしの援護射撃をやめもう一方の敵へと肉薄していた。

「ふふ、大変お上手です、チンキス!」

ブラック包丁を妖しく撫で上げ、ズプリと美しい所作の一突き。
吐い信者は物怖じしない、巨大な豚のモンスターに深々と突き刺さる。
すると何故か本体のオークの手はビリリと止まり石のように身体が動かなくなった。
スーパーアーマーにもルール無用の一刺、オークのルーティンが止まる。

「手玉を落としてしまうなんてはしたないモンスターです、ええ、ひじょうに!!」

たしかな彼女の観察眼で判断、敵のペースを乱すのは一瞬で十分、謎の一瞬の硬直が解けて慌てて落としたココロの友であるボックススライムを拾い出した本体オークであったが、晒したファニーな動作の隙は大きすぎた。
その間にも尻を刻まれ身体をしばかれ、
暴れる栄枯と金ポデのコンビにまさに袋叩き。

やがてスーパーな電子保護シールドもハードな音とともに砕け、残り一つのお手玉を回収できずに無情にも光の粒へと葬られていった。

不思議な星色と異国のエメラルドが目を合わせてワラい合う。
強敵2体のゲートキーパーを倒しこのままハイタッチ……喜び安堵と行きたいところであったがモンスターハウ巣はまだ壊れていない。


青い安服を着た青年がいない。
丘梨栄枯のプランの後のノープランにひとり単独行動をとっていた。
装備するホットプレートで土で出来たハウ巣の穴を塞ぎ通せんぼうしている、謎の光景がAIカメラと4つの女性陣の瞳には見えており……。

「うぐおおおおおかなしさん金ポデさん頼みます! うおこいつ!? くるなぁ!!」

「あなたは何を戦闘中にふざけているのですか?」

「ふふざけてないっ、です!! そうしろって死鳥舎ががああぁ痛たいたいたい!! ────」

穴から出ようともがくオーク2体を横にした低温ホットプレートでフタをし真剣に競り合う青年に呆れつつ、女子2人は仲間の救援へと向かった。


ぼこ:よし勝ったな
ぼこ:さすが軍師おまえら
ぼこ:完全勝利
ぼこ:おまえらさぁ……
ぼこ:なんか1人ふざけてるけど勝ったな
ぼこ:なんか1人やばいのおるな
ぼこ:目立とうと必死だなホトプレ
ぼこ:モンスターハウ巣にはホトプレで蓋しとかないとね
ぼこ:ここ死のダンジョンなんやで
ぼこ:命懸けのホトプレオーク通せんぼう
ぼこ:なんか硬いし大丈夫やろ
ぼこ:そりゃ低温ホットプレートで玄関蓋されたら出てこれんわ
ぼこ:くそみたいな攻略法
ぼこ:人の命かかってんねんで……
ぼこ:増援来ないからおかしいと思ってたんだわ
ぼこ:死のダンジョンさん痛恨の調整ミス!
ぼこ:よいこは真似しないでねっ!
ぼこ:ホットプレートへの冒涜


丘梨栄枯パーティーは、AI評価全員5でモンスターハウ巣を攻略した。

栄枯が前々から自主的に教えを乞うていた仙人の自由主義な教えの下、ホトプレ青年と金ポデ美少女も各々に適した戦い方を習い構築。ブラック武器とホットプレートの性能を軸に4人はその後も順調にダンジョンを攻略していき、ついに。

4人が入り込んだのは、奥にどっしりとした石造りの祭壇がある部屋であった。
周りはここまでの通路と同じ変哲の無い茶色い岩壁と土床のシンプルなダンジョン構造であり。
目に入ったその灰色の祭壇は変わったものであった、4人が少し段を登った先、祭壇の上には何か青いものが3枚浮遊しており目立っている。

「さんまいのカード?」
「みたい、すね……?」
「……★!」
「クエストカードじゃな」
「クエストカード……これが外の死鳥舎の皆さまが言っていた、そうなのですね。ということは」
「この部屋を見つければ第1死はクリアじゃ。次のステージ、ニシ、へのゲートみたいなものじゃが……まぁちょうど若者3人ためしてみぃ」

そう仙人に促された若者3人は祭壇上の青いカードの1枚1枚へと各々歩み近づき、

それを手に取ると突如、光を発し一つに集った。

光の集った先には大きな円い青いゲートが現れており、
各々が手にした手元に残った札を確認して持ち寄り合わせてみると。


【紫な】【電子な】【鍛冶屋。】



「「紫な電子な鍛冶屋。」」「★★!」

思わず顔を見合わせた栄枯とホトプレ、金ポデたち。
言葉とそれを意味する絵がカードにはそれぞれ抽象的具体的に描かれており、

「紫な電子な鍛冶屋、おそらく当たりじゃな運が良いわい。3枚で1枚、1つの意味を成すということじゃ出来上がったこの青いゲートが紫な電子な鍛冶屋じゃな」
「……えっと、鍛冶屋ってことはゲームみたいに武器を鍛えれたり?」
「ホップよ、まぁその通りじゃなパーソナル成長データといってゲームとはちと違うがわしより賢いAIが教えてくれるじゃろう」
「ええ、ええ、はい、ええ、なるほど」

一同は大きく宙に展開したぼこぼこチューブのビジョンに目をやり、AIが高速で提示した情報を理解していく。


AI栄枯:武器のパーソナル成長データとは例えば丘梨栄枯のパーソナル成長データは以下になります。


ブラック包丁+5
ブラック果物ナイフ+3
ブラック警棒
ブラックイエローフライパン+7
ホットプレート+18


+値が高いほどモンスターを倒すなどして使い込んでおり、本来の武器性能に成長した+値が上乗せされ高い効力威力を発揮出来ます。

パーソナル成長データはその人物に記憶され武器を装備したときに発揮される乗っ取り不可のデータですのでデータ自体は売り買い出来ず武器を成長させたければ死のダンジョンにあなたが来いということになります。

鍛冶屋とは……このワードがクエストカードで出るのはひじょうにラッキーです。武器を鍛えてプラス値を伸ばしてくれるお助けモンスターがこの先いる可能性が高いです。(鍛冶屋にはパーソナル成長データを違法に伸ばす薬カードを売っていることがあります。ええ、しーーっ……ひじょうに)


ぼこ:へぇーそなんだ
ぼこ:何言ってるかわからん
ぼこ:てかホップって誰
ぼこ:ホップは流行らない
ぼこ:ホットプレート+18
ぼこ:↑ホットプレートウーマン!
ぼこ:パーソナル成長データバグってんぞ
ぼこ:ホットプレートの酷使やばかったもんなあいつ
ぼこ:ホットプレートウーマン栄枯!
ぼこ:主婦(31)
ぼこ:てか丘梨ゴール
ぼこ:丘梨、第1死クリアするってよ
ぼこ:あの丘梨栄枯がな(感涙)
ぼこ:栄枯おめでとううううううううう
ぼこ:これ最終回らしいな(号泣)
ぼこ:ったく栄枯ならヤレると思ってたぜ
ぼこ:まぁほぼブラック武器のおかげだけどな
ぼこ:ふつうに強かったなこのパーティー


流れるたくさんのぼこに黙して目を通していった丘梨栄枯は、

「ええ、ありがとうございます死鳥舎の皆さま、ひじょうにここまでを思い返せば感涙ですが、最終回? ふふ、まだまだべらぼぅにつづきますよ……死鳥舎様方が地下鉄でガタゴト会社に通勤したり家で疲れてお酒を飲み寝たりしている間にも死のダンジョンの吐い信者、わたし丘梨栄枯はまだまだダンジョンでべらぼぅです、ふふ、ええ、ひじょうに」

応援のぼこの弾幕の勢いにおもわずくすりと笑い歯をみせる、クールで陽気な丘梨栄枯ちゃんスマイルで全世界の死鳥舎様に感謝をとどけていった。


ぼこ:そう
ぼこ:栄枯が笑うならそれでいいよ
ぼこ:家帰って見たらセックスして寝てたけどなこいつ
ぼこ:猿みたいなふたなりセックスしか見てない
ぼこ:カレー作ってるのみてたら1日終わってたわ
ぼこ:カレーとセックスなけりゃ1時間でここまで来れたろ
ぼこ:↑さすが栄枯死鳥舎を飽きさせない神調整だな
ぼこ:このパーティーでふつうにやったらクソゲーやからね
ぼこ:最終回っぽいセリフやが大丈夫か?
ぼこ:感涙した!
ぼこ:ちっとは涙しぼれぃ!
ぼこ:搾るのは精子
ぼこ:さまようのは生死
ぼこ:↑チンキぃス!
ぼこ:まぁ俺全裸で感涙してるんだけどね
ぼこ:やっぱこれだね、丘梨栄枯ちゃんスマイル!


マリアレポート23☆
クエストカード

ついに出たな青いクエストカード。
死のダンジョンの謎に迫るにはクエストカードの謎を解き明かしていく事が最重要研究課題だろう。
クエストカードは探索者の深層心理の一部を読み解いてカードにそのワードや内容を反映する、一般的に死のダンジョンはランダム迷宮と言われているがメカニズムとしてはこうだ。

え、全然わからないだって?

まぁ誘った探索者の個性や人格や人生が反映されランダム生成ダンジョンは無限以上に生きた呼吸をしている、そういう風に捉えておけば問題ないだろう。

フフフ、じゃあわたしはまさにイマそのクエストカードの研究で忙しいんでこれで失礼するよ。
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