251 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
願いと呪い
しおりを挟む
「…………お……ま……え、は……」
『……本当に……本当に———迷惑をかけました……
私のこと……ながら、貴方に謝罪しなければならないようです、白郎』
「まさか、本当に……本当に……そこにいるって言うのか……そうなんだな、師匠!」
ああ、この話し方、声色、呼び方……全部師匠のものだった。
『……あまり近付かない方がいいです。いつヤツに戻るか、私にも分かりませんから』
「いや……でも…………そこ、に、いる……のは、師匠……なんだろ、師匠———なんだよな……?」
『———はい。
……いやあ、あの時と同じですね、周りが血だらけ———だなんて、はは』
———久し、ぶりだ。
そんな笑う顔を見たのは。
ここ最近ずっと、不敵に笑う不気味な顔しか見てなかったから。
そんな———昔の貴方みたいに、無邪気に笑ってみせたのを……とても懐かしく思って。
「ぁ…………ぅ、あぅ…………っ、」
『泣いて……いるのですか……仕方ありませんね、数年ぶりの再会なのですから。
———でも』
「で……も………………?」
『貴方は、私を———殺さなければならない。
……分かって、いますよね』
「———あぁ」
『よく聞いていてください。いつまで保つか分からないので。
……もう既に誰かから伝え聞いているかもしれませんが———この体は、無数の人間の呪い———魂より変質したソレによって、その命が肩代わりされている状態です。
これを止めるには、一つしかない。……そう、その全てを———貴方が殺し尽くす、と言うことしか。
……だから……頼みます。この体を、何度も何度も何度も何度も、切り刻んで殺し尽くしてください。
貴方には酷なことかもしれません。様々な思い出が邪魔をするかもしれません。
……でも、終わらせて———ほしいのです。
貴方に託しましたよ、私の弟子の———貴方に。…………もちろん、『もう誰も傷付かない、みんなが笑顔で暮らせる世界』のことも———貴方には任せられる。
雪斬流の教え———分かりますか?』
教え………………アレかな。
「無辜の者を……守る剣。罪のない者に振るわないための———力」
『そう……ですね。
ですが、もう私は———数えきれないほどの罪を重ねました。
だから……殺してください。
せめて最後は、貴方の手で逝きたいのです』
本当に。
本当に、それでいいのだろうか。
俺は———俺だって、多分貴方より、数えきれないほどの罪を抱えている。
何人だって殺した。何人だって切り裂いた。何人だって食べてきた。
でも、こうして生きている。
サナと話してて、分かったんだっけな……自分なりの幸せを見つけるために生きる。それを贖罪にする、って。
師匠、貴方は———俺を救ってくれた。貴方がいなければ、俺はこんなところまでは来れなかった。
だからこそ、その恩返しがしたい。いつもいつも、ずっとずっと考えていた。できることなら、生きているのなら、その恩返しをしたいんだって。
———でも、いるぞ。
今そこに、師匠はいる。
例え刹那の意識に紛れていたとしても、あの体の中に、師匠の意識は———ある。
だったら、救ってやりたい。
俺がしたのと同じように、師匠を———あの中から、助け出してやりたい。
この俺の手で。例えどれだけ時間がかかったとしても、希望が見えたんだ。
殺すわけには、いかない。償えない罪があると言うのなら、どれだけ長い時を生かしてでも償わせる。
……だから。
「…………いいや、ごめんな師匠。……その約束、守れないよ」
『———、残念です』
……いいや、残念に思わないような結果にしてやる。
ここまで———ことごとく奇跡は起きなかった。
ずっと、現実は非情で。俺に何度も何度も別れを経験させてきた。
……だったら、せめて最後くらいは———奇跡を起こしてやる。
救ってやるんだよ、師匠を。
『…………お話は、終わりましたか?』
「———ああ。
テメェをブチ殺す決意は、整ったよ」
『……本当に……本当に———迷惑をかけました……
私のこと……ながら、貴方に謝罪しなければならないようです、白郎』
「まさか、本当に……本当に……そこにいるって言うのか……そうなんだな、師匠!」
ああ、この話し方、声色、呼び方……全部師匠のものだった。
『……あまり近付かない方がいいです。いつヤツに戻るか、私にも分かりませんから』
「いや……でも…………そこ、に、いる……のは、師匠……なんだろ、師匠———なんだよな……?」
『———はい。
……いやあ、あの時と同じですね、周りが血だらけ———だなんて、はは』
———久し、ぶりだ。
そんな笑う顔を見たのは。
ここ最近ずっと、不敵に笑う不気味な顔しか見てなかったから。
そんな———昔の貴方みたいに、無邪気に笑ってみせたのを……とても懐かしく思って。
「ぁ…………ぅ、あぅ…………っ、」
『泣いて……いるのですか……仕方ありませんね、数年ぶりの再会なのですから。
———でも』
「で……も………………?」
『貴方は、私を———殺さなければならない。
……分かって、いますよね』
「———あぁ」
『よく聞いていてください。いつまで保つか分からないので。
……もう既に誰かから伝え聞いているかもしれませんが———この体は、無数の人間の呪い———魂より変質したソレによって、その命が肩代わりされている状態です。
これを止めるには、一つしかない。……そう、その全てを———貴方が殺し尽くす、と言うことしか。
……だから……頼みます。この体を、何度も何度も何度も何度も、切り刻んで殺し尽くしてください。
貴方には酷なことかもしれません。様々な思い出が邪魔をするかもしれません。
……でも、終わらせて———ほしいのです。
貴方に託しましたよ、私の弟子の———貴方に。…………もちろん、『もう誰も傷付かない、みんなが笑顔で暮らせる世界』のことも———貴方には任せられる。
雪斬流の教え———分かりますか?』
教え………………アレかな。
「無辜の者を……守る剣。罪のない者に振るわないための———力」
『そう……ですね。
ですが、もう私は———数えきれないほどの罪を重ねました。
だから……殺してください。
せめて最後は、貴方の手で逝きたいのです』
本当に。
本当に、それでいいのだろうか。
俺は———俺だって、多分貴方より、数えきれないほどの罪を抱えている。
何人だって殺した。何人だって切り裂いた。何人だって食べてきた。
でも、こうして生きている。
サナと話してて、分かったんだっけな……自分なりの幸せを見つけるために生きる。それを贖罪にする、って。
師匠、貴方は———俺を救ってくれた。貴方がいなければ、俺はこんなところまでは来れなかった。
だからこそ、その恩返しがしたい。いつもいつも、ずっとずっと考えていた。できることなら、生きているのなら、その恩返しをしたいんだって。
———でも、いるぞ。
今そこに、師匠はいる。
例え刹那の意識に紛れていたとしても、あの体の中に、師匠の意識は———ある。
だったら、救ってやりたい。
俺がしたのと同じように、師匠を———あの中から、助け出してやりたい。
この俺の手で。例えどれだけ時間がかかったとしても、希望が見えたんだ。
殺すわけには、いかない。償えない罪があると言うのなら、どれだけ長い時を生かしてでも償わせる。
……だから。
「…………いいや、ごめんな師匠。……その約束、守れないよ」
『———、残念です』
……いいや、残念に思わないような結果にしてやる。
ここまで———ことごとく奇跡は起きなかった。
ずっと、現実は非情で。俺に何度も何度も別れを経験させてきた。
……だったら、せめて最後くらいは———奇跡を起こしてやる。
救ってやるんだよ、師匠を。
『…………お話は、終わりましたか?』
「———ああ。
テメェをブチ殺す決意は、整ったよ」
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~
こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇
戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。
そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。
◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです
◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。
誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください
◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います
しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…




サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる