252 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
この体尽きてまでも
しおりを挟む
『……しかし……っくく、『私』は好き勝手やってくれたようですね……!』
「———好き勝手やってるのはテメェの方だよ、刹那。
俺はお前を、許す気はない」
『……決別といきましょうか、白郎』
「師匠でもないくせに、師匠の顔と声で喋るな、偽者!
お前は俺が倒す。ここに至るまでの地獄は、この俺が断ち切ってみせる!
もう———お前の好き勝手に、させてなるものか!」
『笑止っ!』
消えた刹那の姿。たった後ろにその気配を感じ、その方向に刀を振る———が、手応えはなく。
ならばと、今度は自らの腹に刀を突き刺す。———大当たりだ。
『なっ……貴様、自傷行為を……!』
「もう見飽きたんだよ、その術…………っぶ!」
刀を引き抜いた瞬間、真上にはその槍を脳天めがけ落とさんとする刹那が。
マトモに動きそうのない腹は———すぐに再生した。痛みさえ乗り越えれば、後は———!
「あとは、こっちの……!」
上に向けて、斬り落とすのみ!
「もんだぁっ!」
『ふがぁっ?!』
その宙に舞った体を、横から斬りつけ下へと叩き落とす。
……終わってない。
「ふうっ!」
すぐさま刀を引き抜き、もう一度突きの姿勢に持ってくる———が、ヤツは一瞬で再生し……
『無駄……なのだよ!……ぐほぉっ!』
迎撃体勢をとられるものの、突き出された神威はそれすらもすり抜けた。
『っはあ……っ、ああ……っ、貴様は……私、と、ヤツを……分離したいと考えている……!』
「だから殺すんだよ、貴様をっ!」
『無駄だ……無駄だ無駄だ無駄だ! そんなことできるはずもないだろう、貴様も分かっているだろうに……!』
「無駄であろうと、奇跡を起こしてみせる」
『奇跡ぃ…………?……はっ、そんなものは———起きない!
貴様は護れたか? 大事な人を!
救うはずだった機神を! 愛するはずだった機神を! 己が側にいた親友を! 己が兄を! 己が所属していた部隊の、隊長を!
護れたか……救えたか?! 今の貴様に、それが救えたのか?!』
「…………」
『だから無理なのだよ……奇跡は起こらない! 貴様には、もう何も……ないんだよ!』
「———」
『終わりだ、救世主……貴様の大事なものは、全て崩れ去った!
もはや私に勝ったところで……だ。貴様はもはや、その心が朽ちゆくのを待つしかできないのだよ!
———勝つことすら、できはしないが』
瞬間、俺の両目は———真紅に包まれた。
「…………!…………っ、———!」
明らかにおかしい状況だった。声にならない声。苦痛と認識されない苦痛。いつまで経っても再生し始めない目。
もう、何をされたか———、
『…………頭を貫きました。……もちろん、貴方の今の魂の権化———その核、諸共。
さらばです、雪斬白郎。……まったく、どこまでも往生際の悪い人間でしたが、これでそれも終わりです』
……貫かれた?……コア、を?
———じゃあ……死ぬじゃん、ソウルレスでも。
「み……見え、見え……ない……!」
落とした刀が拾えない。そもそも敵の姿も、今ここにいる事実すらも見えはしない。
『言ったであろう、奇跡は起きん、と。
奇跡は起きん、逆転もない。そんなもの、貴様には———』
「っ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛!!!!」
『不似合いなのだよ、人斬りぃっ!』
その目を、頭の中から抉り出される。
……ああ、もう———何も見えないし、もう……取り返しがつかない。
『終わったな……ソウルレス、そのコアが破壊されれば、あとはその命が、元あった無に還るのを待つのみ!
……はははははは、貴様には、この私を殺し尽くし、世界を救うことも———、
師匠を助け出し、己が理想を叶えることも———、
師匠の掲げていた夢を、叶えることも———、
己が幸せを手にすることも……できはしない!
だから無駄と言ったのだ!……阿呆め……ここに来たその決断を! 己の非力を、己の無能を恨むがいい!』
———ここで、死ぬ……か。
俺は、ここで……終わるのか。
今度こそ、今度こそ。本当に奇跡なんて起こらない、この場所で。
違う、だろ。
受け入れちゃダメだろ、適応しちゃダメだろ……!
抗え……抗うんだ、こんな絶望的な状況の中でも……!
「………………っ、負けられは……しない、んだよ……!
たとえ、この体———灰に尽きたとしても……絶対に!
俺の理想、みんなの理想、継いだ想い……その全てにかけて、一歩も引くわけにはいかねえ!
殺してみせるさ、お前を———たとえ、この体、尽きてまでもっ!」
『………………は、ははは、ははははははははは!! そうだ、そうだそうだ! その往生際の悪さが、人の強さだった!!
しかし……似ている。その立ち姿も、振り絞る勇気も……イチゴ隊長に似ているなぁ……
———まあ、ヤツは……選択を間違えた愚か者。この私の敵にすらならない、取るに足らない虫ケラ。死んで当然とも言えようか———なあ、雪斬白郎っ!』
「俺の…………母さんを……愚弄するなぁっ! あの人は———あの人は、最後まで立派に生きてみせたんだぁっ!」
その位置———辛うじて、分かる……!
『失言でしたか……しかしそうですね、立派に生きて———無様に散ったぁ!』
「…………っはぁっ!」
ヤツの位置に向かって神威を振り下ろしたが最後、神威を持っていた右腕は斬り落とされた。
……どうなっているか、分からない。
目は潰されたまま。再生はしない。激痛に体は悲鳴をあげているのに、それをカバーするものは何も存在しない。……それどころか、その体諸共塵と化していっている。
せっかく不死性を獲得したってのに……これで俺も人間……いや、それどころか人間以下だよ。
『貴方の父、ヴァーサ・セイバーもそうであった! 機神が日輪列島の4分の1を、神殿国諸共吹き飛ばした際———ヤツはあの場で、1人残り最後まで抵抗した!
……しかし結果は見ての通りだ、ヤツは機神を堕とす事すらできず、その生涯に幕を閉じた!
貴様ら人間には、所詮何もできない! 最後の最後であろうと、無駄に足掻き、無駄に命を散らすのみ!……だと言うのに、なぜ楽になろうとしない! 苦しむことのない世界———受け入れれば簡単であろう!』
「テメェには、分からねえ……っよ、一生かけても……な……!
陰からコソコソ人を操って、自分だけの願いを叶えようとした……お前にっ! 俺たちみんなが叶えようとした願いを、世界を———理解できるはずもないっ!
いいか———テメェが今相対してるのはな……その願いも、想いも、祈りも、その全てを継いだ戦士だ、救世主さ……!」
「———好き勝手やってるのはテメェの方だよ、刹那。
俺はお前を、許す気はない」
『……決別といきましょうか、白郎』
「師匠でもないくせに、師匠の顔と声で喋るな、偽者!
お前は俺が倒す。ここに至るまでの地獄は、この俺が断ち切ってみせる!
もう———お前の好き勝手に、させてなるものか!」
『笑止っ!』
消えた刹那の姿。たった後ろにその気配を感じ、その方向に刀を振る———が、手応えはなく。
ならばと、今度は自らの腹に刀を突き刺す。———大当たりだ。
『なっ……貴様、自傷行為を……!』
「もう見飽きたんだよ、その術…………っぶ!」
刀を引き抜いた瞬間、真上にはその槍を脳天めがけ落とさんとする刹那が。
マトモに動きそうのない腹は———すぐに再生した。痛みさえ乗り越えれば、後は———!
「あとは、こっちの……!」
上に向けて、斬り落とすのみ!
「もんだぁっ!」
『ふがぁっ?!』
その宙に舞った体を、横から斬りつけ下へと叩き落とす。
……終わってない。
「ふうっ!」
すぐさま刀を引き抜き、もう一度突きの姿勢に持ってくる———が、ヤツは一瞬で再生し……
『無駄……なのだよ!……ぐほぉっ!』
迎撃体勢をとられるものの、突き出された神威はそれすらもすり抜けた。
『っはあ……っ、ああ……っ、貴様は……私、と、ヤツを……分離したいと考えている……!』
「だから殺すんだよ、貴様をっ!」
『無駄だ……無駄だ無駄だ無駄だ! そんなことできるはずもないだろう、貴様も分かっているだろうに……!』
「無駄であろうと、奇跡を起こしてみせる」
『奇跡ぃ…………?……はっ、そんなものは———起きない!
貴様は護れたか? 大事な人を!
救うはずだった機神を! 愛するはずだった機神を! 己が側にいた親友を! 己が兄を! 己が所属していた部隊の、隊長を!
護れたか……救えたか?! 今の貴様に、それが救えたのか?!』
「…………」
『だから無理なのだよ……奇跡は起こらない! 貴様には、もう何も……ないんだよ!』
「———」
『終わりだ、救世主……貴様の大事なものは、全て崩れ去った!
もはや私に勝ったところで……だ。貴様はもはや、その心が朽ちゆくのを待つしかできないのだよ!
———勝つことすら、できはしないが』
瞬間、俺の両目は———真紅に包まれた。
「…………!…………っ、———!」
明らかにおかしい状況だった。声にならない声。苦痛と認識されない苦痛。いつまで経っても再生し始めない目。
もう、何をされたか———、
『…………頭を貫きました。……もちろん、貴方の今の魂の権化———その核、諸共。
さらばです、雪斬白郎。……まったく、どこまでも往生際の悪い人間でしたが、これでそれも終わりです』
……貫かれた?……コア、を?
———じゃあ……死ぬじゃん、ソウルレスでも。
「み……見え、見え……ない……!」
落とした刀が拾えない。そもそも敵の姿も、今ここにいる事実すらも見えはしない。
『言ったであろう、奇跡は起きん、と。
奇跡は起きん、逆転もない。そんなもの、貴様には———』
「っ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛!!!!」
『不似合いなのだよ、人斬りぃっ!』
その目を、頭の中から抉り出される。
……ああ、もう———何も見えないし、もう……取り返しがつかない。
『終わったな……ソウルレス、そのコアが破壊されれば、あとはその命が、元あった無に還るのを待つのみ!
……はははははは、貴様には、この私を殺し尽くし、世界を救うことも———、
師匠を助け出し、己が理想を叶えることも———、
師匠の掲げていた夢を、叶えることも———、
己が幸せを手にすることも……できはしない!
だから無駄と言ったのだ!……阿呆め……ここに来たその決断を! 己の非力を、己の無能を恨むがいい!』
———ここで、死ぬ……か。
俺は、ここで……終わるのか。
今度こそ、今度こそ。本当に奇跡なんて起こらない、この場所で。
違う、だろ。
受け入れちゃダメだろ、適応しちゃダメだろ……!
抗え……抗うんだ、こんな絶望的な状況の中でも……!
「………………っ、負けられは……しない、んだよ……!
たとえ、この体———灰に尽きたとしても……絶対に!
俺の理想、みんなの理想、継いだ想い……その全てにかけて、一歩も引くわけにはいかねえ!
殺してみせるさ、お前を———たとえ、この体、尽きてまでもっ!」
『………………は、ははは、ははははははははは!! そうだ、そうだそうだ! その往生際の悪さが、人の強さだった!!
しかし……似ている。その立ち姿も、振り絞る勇気も……イチゴ隊長に似ているなぁ……
———まあ、ヤツは……選択を間違えた愚か者。この私の敵にすらならない、取るに足らない虫ケラ。死んで当然とも言えようか———なあ、雪斬白郎っ!』
「俺の…………母さんを……愚弄するなぁっ! あの人は———あの人は、最後まで立派に生きてみせたんだぁっ!」
その位置———辛うじて、分かる……!
『失言でしたか……しかしそうですね、立派に生きて———無様に散ったぁ!』
「…………っはぁっ!」
ヤツの位置に向かって神威を振り下ろしたが最後、神威を持っていた右腕は斬り落とされた。
……どうなっているか、分からない。
目は潰されたまま。再生はしない。激痛に体は悲鳴をあげているのに、それをカバーするものは何も存在しない。……それどころか、その体諸共塵と化していっている。
せっかく不死性を獲得したってのに……これで俺も人間……いや、それどころか人間以下だよ。
『貴方の父、ヴァーサ・セイバーもそうであった! 機神が日輪列島の4分の1を、神殿国諸共吹き飛ばした際———ヤツはあの場で、1人残り最後まで抵抗した!
……しかし結果は見ての通りだ、ヤツは機神を堕とす事すらできず、その生涯に幕を閉じた!
貴様ら人間には、所詮何もできない! 最後の最後であろうと、無駄に足掻き、無駄に命を散らすのみ!……だと言うのに、なぜ楽になろうとしない! 苦しむことのない世界———受け入れれば簡単であろう!』
「テメェには、分からねえ……っよ、一生かけても……な……!
陰からコソコソ人を操って、自分だけの願いを叶えようとした……お前にっ! 俺たちみんなが叶えようとした願いを、世界を———理解できるはずもないっ!
いいか———テメェが今相対してるのはな……その願いも、想いも、祈りも、その全てを継いだ戦士だ、救世主さ……!」
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~
こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇
戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。
そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。
◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです
◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。
誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください
◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います
しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる