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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
雪斬宗呪羅
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雪斬宗呪羅。
この人に出会わなかったら、俺の人生は始まらなかった。……この人がいなかったら、俺はあの場所で死んでいたはずなんだ。
二千兵戦争。俺が人斬りとしての罪禍を背負うことになるこの戦争の最中、俺を拾ってくれた命の恩人。
———今の俺を『白』たらしめる……大きな要素となった人物。
俺に『無辜の人々を護る剣』を教えてくれた、きっとこの世で一番優しい人だと思っていた、あの人で。俺の一番の師匠で。
———そして、俺の……この俺が、人生で一番初めに失ったはずの、大切なものであった。
「数年……ぶり、の、再会……だって…………?
……そうさ、俺はずっとお前に会いたかった、もう一度会って、もう一度話して、今の俺が正しいのかを問いただしたかった!
………………なのに何で、何でお前がそこにいるんだよ……死んだはずじゃなかったのか、お前っ!」
『———ええ、死にましたよ。
貴方の知る、雪斬宗呪羅は、ですが』
「…………っ!」
じゃあ、じゃあコイツはなんなんだよ。……宗呪羅……師匠なのか?……違うとしたら、何でコイツは俺の知っている師匠と同じ顔をしている……?
「お前は———お前は前に言ったよな、俺に!
『もう誰も苦しむことのない、みんなが楽しく生きられる世界を目指している』…………って。
今のお前がやってることは……真逆じゃねえかよ……俺の知っている宗呪羅はどこに行った、なあ!
いくら師匠とは言え———自分の気持ちを裏切るのなら、俺はお前にだって刃を向けてやるぞ……!」
『ええ、だから目指しているじゃないですか。
そのための『プロジェクト・エターナル』……でしょう?
皆が永遠の存在になれば、それこそもう誰も苦しむことのない完璧な世界が来る!……そうは思いませんか、雪斬白郎!』
「いっちばん……一番大事なところを失念してるよ、お前———みんなが楽しく生きられる世界はどこ行った……!」
『楽しく…………ああ、そんなものは全て消え去ります。……なぜならば、我々がアースリアクターに……大穴にかける願いは1つ。
『全人類をロストに変える』
……そうすれば、感情をも何もかもがなく、知恵を持った人類の原罪をも洗い流され、そして永遠のみが残る素晴らしい世界が出来上がる———』
「俺の知ってるお前は…………どこ、行っちまったんだよ…………雪斬、宗呪羅ぁぁぁぁぁあっ!!!!」
……もはや、足に力は入らない。立ち上がる気力さえ、俺の前からは失われた。
なんで、なんで死んだはずのコイツがここにいるんだよ、なんで師匠はこんなことを繰り返しているんだよ……!
『皆がアイを想えば、みんなが手を取り合える』…………そう言ってたあの師匠は、どこに行っちまったんだよ……!
「———合点が行ったわ。……斬っても斬っても蘇るとされている、かつて不死身と呼ばれた剣士———雪斬宗呪羅。
……その正体は、言葉通りただの不死者だった……何の捻りもなくて、ほんっとにくだらないわねっ!」
俺の前に人影が覆い被さる。…………サナ、なのか。
「白。……白、立って。この人が貴方の師匠ならば、貴方は貴方自身の手で決着をつけなければならない。そうでしょ」
「なんで……自分自身を裏切るんだ、師匠……ししょお……!」
この人に出会わなかったら、俺の人生は始まらなかった。……この人がいなかったら、俺はあの場所で死んでいたはずなんだ。
二千兵戦争。俺が人斬りとしての罪禍を背負うことになるこの戦争の最中、俺を拾ってくれた命の恩人。
———今の俺を『白』たらしめる……大きな要素となった人物。
俺に『無辜の人々を護る剣』を教えてくれた、きっとこの世で一番優しい人だと思っていた、あの人で。俺の一番の師匠で。
———そして、俺の……この俺が、人生で一番初めに失ったはずの、大切なものであった。
「数年……ぶり、の、再会……だって…………?
……そうさ、俺はずっとお前に会いたかった、もう一度会って、もう一度話して、今の俺が正しいのかを問いただしたかった!
………………なのに何で、何でお前がそこにいるんだよ……死んだはずじゃなかったのか、お前っ!」
『———ええ、死にましたよ。
貴方の知る、雪斬宗呪羅は、ですが』
「…………っ!」
じゃあ、じゃあコイツはなんなんだよ。……宗呪羅……師匠なのか?……違うとしたら、何でコイツは俺の知っている師匠と同じ顔をしている……?
「お前は———お前は前に言ったよな、俺に!
『もう誰も苦しむことのない、みんなが楽しく生きられる世界を目指している』…………って。
今のお前がやってることは……真逆じゃねえかよ……俺の知っている宗呪羅はどこに行った、なあ!
いくら師匠とは言え———自分の気持ちを裏切るのなら、俺はお前にだって刃を向けてやるぞ……!」
『ええ、だから目指しているじゃないですか。
そのための『プロジェクト・エターナル』……でしょう?
皆が永遠の存在になれば、それこそもう誰も苦しむことのない完璧な世界が来る!……そうは思いませんか、雪斬白郎!』
「いっちばん……一番大事なところを失念してるよ、お前———みんなが楽しく生きられる世界はどこ行った……!」
『楽しく…………ああ、そんなものは全て消え去ります。……なぜならば、我々がアースリアクターに……大穴にかける願いは1つ。
『全人類をロストに変える』
……そうすれば、感情をも何もかもがなく、知恵を持った人類の原罪をも洗い流され、そして永遠のみが残る素晴らしい世界が出来上がる———』
「俺の知ってるお前は…………どこ、行っちまったんだよ…………雪斬、宗呪羅ぁぁぁぁぁあっ!!!!」
……もはや、足に力は入らない。立ち上がる気力さえ、俺の前からは失われた。
なんで、なんで死んだはずのコイツがここにいるんだよ、なんで師匠はこんなことを繰り返しているんだよ……!
『皆がアイを想えば、みんなが手を取り合える』…………そう言ってたあの師匠は、どこに行っちまったんだよ……!
「———合点が行ったわ。……斬っても斬っても蘇るとされている、かつて不死身と呼ばれた剣士———雪斬宗呪羅。
……その正体は、言葉通りただの不死者だった……何の捻りもなくて、ほんっとにくだらないわねっ!」
俺の前に人影が覆い被さる。…………サナ、なのか。
「白。……白、立って。この人が貴方の師匠ならば、貴方は貴方自身の手で決着をつけなければならない。そうでしょ」
「なんで……自分自身を裏切るんだ、師匠……ししょお……!」
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