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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
『正体』
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「……何をした、刹那っ!」
一体を大きな揺れが襲う。……この浮遊都市オリュンポスで地震———何をするつもりだ……!
『私ではなく———あの御方がようやく目覚めるのですよ。
計画の鍵、貴方と同じ器を持つ、全能を模せし偽神……!』
「……どうでもいい、今はお前を確実に殺すっ!」
はらわたが煮えくりかえってたまらなかった。溢れ出る情動を、怒りを、抑えることなど今の俺にはできはしなかった。
「お前を殺さなきゃ、俺は、俺は……アイツの死を悔やみきれないっ! お前だけは———生かしておいちゃいけないんだぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」
刀を振りかざした、その時。追い風をかけるように、後ろから声が響く。
『白っ、ソイツの———ソウルレスの弱点は、頭よ!
頭にある赤い球体! それを壊せば、ソウルレスは自壊に陥る!』
「だああああああああっ!」
言われた通りに、無抵抗の刹那の脳天を、その刃で両断する。
「っさあ、どこだ……テメェの命っ!」
何度も何度も、その脳髄を引きづり出す。返り血がいくらつこうと関係ない、今はコイツを殺すことだけを———え?
「な…………ない、ないぞ、そんな球体、影も形も……っ!」
「そんな……だって、ソウルレスは……!」
『フフフフフフフフフハハハハハハハハ!……ソウルレス……?
不死性に気付いたことは賞賛に値する……が……』
ズタズタに引き裂かれた脳天、その骨と肉塊の中から、刹那の声が発され続ける。
『…………私は、ソウルレスなどではない…………!』
……引き裂いた、はずなのに。あまりにも一瞬に、まるで時が戻ったかのように、その地肉は収束し、再生しきってしまった。
『そも、ソウルレスなどというものは不完全……コアを砕かれれば灰となり死せる、そのようなものはエターナルの完成形ではない……
エターナルの完成形……『永遠に死することなく、如何なる条件が揃おうと、その命を落とすことのない生命体』…………その完成形こそ———、
この私、なのですよ』
「………………うそ、だ……ろ…………!」
———再生しきったヤツの脳天。
元々ヤツが付けていた仮面は割れ、その素顔が白日の下に晒されていた。
『フフ……ハハハ、ようやく……ここまで来て、ようやく貴方は気付いたのですね、私の正体に……!』
その顔は。その白く長い髪は。
その穏やかな声は。その何もかも見透かしたような視線は。
全て———一番最初に俺が失った、とあるものだった。
「……な……ぁ、何で…………何でさ、お前がここにいるんだよ……
お前は……そうだろ、俺に『無辜の人々を護る剣』を教えてくれた……そのはずじゃ、なかったのかよ……なら、ならなんでお前は…………ここにいるんだよ、なあ!
———答えろよ、答えてみせろよ、雪斬宗呪羅っっっっ!!!!!!」
『数年ぶりの……再会ですね』
「…………今は、あえてこう言わせてもらう…………
何やってんだよ、師匠…………っ!」
一体を大きな揺れが襲う。……この浮遊都市オリュンポスで地震———何をするつもりだ……!
『私ではなく———あの御方がようやく目覚めるのですよ。
計画の鍵、貴方と同じ器を持つ、全能を模せし偽神……!』
「……どうでもいい、今はお前を確実に殺すっ!」
はらわたが煮えくりかえってたまらなかった。溢れ出る情動を、怒りを、抑えることなど今の俺にはできはしなかった。
「お前を殺さなきゃ、俺は、俺は……アイツの死を悔やみきれないっ! お前だけは———生かしておいちゃいけないんだぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」
刀を振りかざした、その時。追い風をかけるように、後ろから声が響く。
『白っ、ソイツの———ソウルレスの弱点は、頭よ!
頭にある赤い球体! それを壊せば、ソウルレスは自壊に陥る!』
「だああああああああっ!」
言われた通りに、無抵抗の刹那の脳天を、その刃で両断する。
「っさあ、どこだ……テメェの命っ!」
何度も何度も、その脳髄を引きづり出す。返り血がいくらつこうと関係ない、今はコイツを殺すことだけを———え?
「な…………ない、ないぞ、そんな球体、影も形も……っ!」
「そんな……だって、ソウルレスは……!」
『フフフフフフフフフハハハハハハハハ!……ソウルレス……?
不死性に気付いたことは賞賛に値する……が……』
ズタズタに引き裂かれた脳天、その骨と肉塊の中から、刹那の声が発され続ける。
『…………私は、ソウルレスなどではない…………!』
……引き裂いた、はずなのに。あまりにも一瞬に、まるで時が戻ったかのように、その地肉は収束し、再生しきってしまった。
『そも、ソウルレスなどというものは不完全……コアを砕かれれば灰となり死せる、そのようなものはエターナルの完成形ではない……
エターナルの完成形……『永遠に死することなく、如何なる条件が揃おうと、その命を落とすことのない生命体』…………その完成形こそ———、
この私、なのですよ』
「………………うそ、だ……ろ…………!」
———再生しきったヤツの脳天。
元々ヤツが付けていた仮面は割れ、その素顔が白日の下に晒されていた。
『フフ……ハハハ、ようやく……ここまで来て、ようやく貴方は気付いたのですね、私の正体に……!』
その顔は。その白く長い髪は。
その穏やかな声は。その何もかも見透かしたような視線は。
全て———一番最初に俺が失った、とあるものだった。
「……な……ぁ、何で…………何でさ、お前がここにいるんだよ……
お前は……そうだろ、俺に『無辜の人々を護る剣』を教えてくれた……そのはずじゃ、なかったのかよ……なら、ならなんでお前は…………ここにいるんだよ、なあ!
———答えろよ、答えてみせろよ、雪斬宗呪羅っっっっ!!!!!!」
『数年ぶりの……再会ですね』
「…………今は、あえてこう言わせてもらう…………
何やってんだよ、師匠…………っ!」
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