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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
(あまりにも)ゴリ押し物量戦
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「……で、ここ?……ここが……センが向かった場所だっての?」
先程の地点より歩くこと———体感10分。
もはや瓦礫以外何も無くなった焦土にて、ぽっかりと下に空いた穴。
どこまでも吸い込まれそうな暗闇が続いているそれは、かつて階段の形を成していたようにところどころが角張っていた。
「…………ではマスター、私はここで失礼させていただきます」
「は……?」
ここまで案内してくれたコックがそんなことを言うんだから、ここがセンの向かった場所———神核へと通じる道というのは分かるのだが。
「え……えと、コック……お前は行かないのか?」
「私は行かない……え、ええ!……もちろん行きませんとも! 死にたくないですし!」
———?
なんだその言動……コックらしくない……というか、コックならばここで喜んで俺に着いてきそうな……そんな行動を取るはずだと思うのだが……
と言うか、コックは自分の命に執着があったのか?
「どうしたお前……コックらしくないな……人格を弄られでもしたか? その……バージョン、2とか言うのになる時とかにさ」
「人格……いじくられ……?」
何を言っているのですかマスター、だなんて言葉を飛ばして来そうな顔で告げるのはやめてくれないか。
「火之迦具土神、だろう?」
何やらワケを知ってそうなクラッシャーが横から口を挟む。
「ひの……かぐ……つち……?」
だがしかし俺にはその名前に一切の見覚えがなかった。
ヒノカグツチ。その名前の意味するモノなど、この頃眠り惚けていた俺には全くもって知る由などないのだから。
「……下等生物さん?……貴方に発言の権限を与えたつもりはありませんが?」
「ならばもっと前にそれを言えってんだ……」
結局コックが魔族を下等生物呼ばわりするのは変わってないんだな、ならばその行動の真意って———?
「っと、とにかく!……私はここで退散させていただきます、さらば~っ!」
「あっこらコック待て、待て~っ!…………なんなんだ、アイツ……?」
目にも留まらぬ猛スピードで飛び立つコックを、俺が追う事なんてできやしなかった。
———しかし、なんでだ?
アイツ、なんか明らかにおかしかったぞ、一体どうして———。
「……テメェに対しての……気遣いか、機巧天使だってえのに、そこはどうにもならねえ、と……」
「クラッシャー?……お前、何か知って……」
「テメェに対しての、気遣いさ……つまり詮索はするな、とそう言うことさ。あの化け物にも、自らが望む場所で戦う権利ぐらいあるだろうさ」
何を言ってるのか分かんねえけど……多分アレか、さっきのヒノカグツチってやつだろうな。
それを俺のことを気遣って隠した?
……意味が分からねえ、アイツは結局のところ何を俺に対して隠したかったんだ……?
「……しろ、行かない……の……?」
「あ……おおう、そうだな、完全にお前らほったらかしにしてた、スマン」
「んんぅこれは放置プレイっ!……白ちゃん、そんなのも趣味だったなんて…………いけすかない男よねホント」
「お前は何を言い出すんだカーオっ?!」
「くだらねえ茶番はそこらで終わりにしとけぇ……こっからは文字通り戦場、ふざけてたらそれが命取りになるぞ?……それに、行くと言ったのは貴様だろう……?」
「———そうだな、何が待ってるかは分からない、俺だって用心してるさ……よし、なんでも来い———
———来いぃっ?!」
穴———βポイントに突入後、しばらく歩いた後。
「やっぱりいやがったか……ロストっ!」
俺たちが出くわしたのは、星の数ほどいる無数のロスト。
……しかも、この縦長く狭い通路空間内にて、敷き詰めるようにそれらがあったのだから。
「……カーオ、爆剣は……あんまねえよな、ハハ……」
相手は人間じゃない、ロストだ。
そりゃあ消却でもしない限り、そう簡単にここを通らせちゃくれな———。
「流石にこの数……爆剣じゃあ、どうにも処理しきれないわね……アテナちゃあんっ!」
「最終兵器機構、断片解放……!」
———おい……!
「おっとお……こいつぁ流石に避けなきゃマズいかあ……!」
……まさか、そんな簡単にぶっ放すとは思っちゃいなかった。
アテナが発した……白きビーム的な何かによって、通路内のロストは完全に消し炭と化した……流石は機神だと褒めてやりたいところだが———、
「……なあ、アテナ。…………崩落したらどうしよう、だとか考えなかったのか?」
「………………たらればの……話、は、するだけ……無駄。…………悲観的に、なっちゃ……ダメ……!」
「違う……そーゆうことじゃねえアテナ……んなもんポンポンぶっ放してたら通路がどうやっても保たねえだろ……?……次はそう簡単にすんなよ、お前の残存……神力だって、いつまで保つか分からないんだぞ」
「…………わかた、気を……つける」
わかた……って、省略の仕方がアホすぎるだろ。つーかなんでそんなとこ省略した……?
「さあ、先に進もうか……見たところまだまだロストはいそうだぜ……『剛鉄襲来』で切り抜ける……ついてこいっ!」
鉄の香りがする。
どこから生み出されたか分からない鉄の一欠片、その全てがクラッシャーの右腕に収束し、二回りほど大きな剛鉄腕を形成する。
「———来いよ、リビングデッド……テメェらにおあつらえ向きな場所を紹介してやるぜ、地獄って言うんだがなあっ!!!!」
先程の地点より歩くこと———体感10分。
もはや瓦礫以外何も無くなった焦土にて、ぽっかりと下に空いた穴。
どこまでも吸い込まれそうな暗闇が続いているそれは、かつて階段の形を成していたようにところどころが角張っていた。
「…………ではマスター、私はここで失礼させていただきます」
「は……?」
ここまで案内してくれたコックがそんなことを言うんだから、ここがセンの向かった場所———神核へと通じる道というのは分かるのだが。
「え……えと、コック……お前は行かないのか?」
「私は行かない……え、ええ!……もちろん行きませんとも! 死にたくないですし!」
———?
なんだその言動……コックらしくない……というか、コックならばここで喜んで俺に着いてきそうな……そんな行動を取るはずだと思うのだが……
と言うか、コックは自分の命に執着があったのか?
「どうしたお前……コックらしくないな……人格を弄られでもしたか? その……バージョン、2とか言うのになる時とかにさ」
「人格……いじくられ……?」
何を言っているのですかマスター、だなんて言葉を飛ばして来そうな顔で告げるのはやめてくれないか。
「火之迦具土神、だろう?」
何やらワケを知ってそうなクラッシャーが横から口を挟む。
「ひの……かぐ……つち……?」
だがしかし俺にはその名前に一切の見覚えがなかった。
ヒノカグツチ。その名前の意味するモノなど、この頃眠り惚けていた俺には全くもって知る由などないのだから。
「……下等生物さん?……貴方に発言の権限を与えたつもりはありませんが?」
「ならばもっと前にそれを言えってんだ……」
結局コックが魔族を下等生物呼ばわりするのは変わってないんだな、ならばその行動の真意って———?
「っと、とにかく!……私はここで退散させていただきます、さらば~っ!」
「あっこらコック待て、待て~っ!…………なんなんだ、アイツ……?」
目にも留まらぬ猛スピードで飛び立つコックを、俺が追う事なんてできやしなかった。
———しかし、なんでだ?
アイツ、なんか明らかにおかしかったぞ、一体どうして———。
「……テメェに対しての……気遣いか、機巧天使だってえのに、そこはどうにもならねえ、と……」
「クラッシャー?……お前、何か知って……」
「テメェに対しての、気遣いさ……つまり詮索はするな、とそう言うことさ。あの化け物にも、自らが望む場所で戦う権利ぐらいあるだろうさ」
何を言ってるのか分かんねえけど……多分アレか、さっきのヒノカグツチってやつだろうな。
それを俺のことを気遣って隠した?
……意味が分からねえ、アイツは結局のところ何を俺に対して隠したかったんだ……?
「……しろ、行かない……の……?」
「あ……おおう、そうだな、完全にお前らほったらかしにしてた、スマン」
「んんぅこれは放置プレイっ!……白ちゃん、そんなのも趣味だったなんて…………いけすかない男よねホント」
「お前は何を言い出すんだカーオっ?!」
「くだらねえ茶番はそこらで終わりにしとけぇ……こっからは文字通り戦場、ふざけてたらそれが命取りになるぞ?……それに、行くと言ったのは貴様だろう……?」
「———そうだな、何が待ってるかは分からない、俺だって用心してるさ……よし、なんでも来い———
———来いぃっ?!」
穴———βポイントに突入後、しばらく歩いた後。
「やっぱりいやがったか……ロストっ!」
俺たちが出くわしたのは、星の数ほどいる無数のロスト。
……しかも、この縦長く狭い通路空間内にて、敷き詰めるようにそれらがあったのだから。
「……カーオ、爆剣は……あんまねえよな、ハハ……」
相手は人間じゃない、ロストだ。
そりゃあ消却でもしない限り、そう簡単にここを通らせちゃくれな———。
「流石にこの数……爆剣じゃあ、どうにも処理しきれないわね……アテナちゃあんっ!」
「最終兵器機構、断片解放……!」
———おい……!
「おっとお……こいつぁ流石に避けなきゃマズいかあ……!」
……まさか、そんな簡単にぶっ放すとは思っちゃいなかった。
アテナが発した……白きビーム的な何かによって、通路内のロストは完全に消し炭と化した……流石は機神だと褒めてやりたいところだが———、
「……なあ、アテナ。…………崩落したらどうしよう、だとか考えなかったのか?」
「………………たらればの……話、は、するだけ……無駄。…………悲観的に、なっちゃ……ダメ……!」
「違う……そーゆうことじゃねえアテナ……んなもんポンポンぶっ放してたら通路がどうやっても保たねえだろ……?……次はそう簡単にすんなよ、お前の残存……神力だって、いつまで保つか分からないんだぞ」
「…………わかた、気を……つける」
わかた……って、省略の仕方がアホすぎるだろ。つーかなんでそんなとこ省略した……?
「さあ、先に進もうか……見たところまだまだロストはいそうだぜ……『剛鉄襲来』で切り抜ける……ついてこいっ!」
鉄の香りがする。
どこから生み出されたか分からない鉄の一欠片、その全てがクラッシャーの右腕に収束し、二回りほど大きな剛鉄腕を形成する。
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