Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

出発

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「……ってカーオ、どうした?……なんでそんなボーっとして……」

「———ん、あ、ああ、何よ白ちゃん……もしかして……私に見惚れて……」

「見惚れてねえから! 心配しただけだから! 勘違いすんな?!」


 ———鉄の香りがする。





「……マスター、恐れながら1つ提言させていただきます。

 先日———3日前より、この要塞、オリュンポスの底の部分にて胎動する超巨大神力反応点『標的Z』が、その神力を急激に増大させていることが分かっております。

 故に、もはや一刻を争う事態。早急に出発するべきだと私は考えます。……しかしながら、オリュンポス突入作戦は、当初の計画予定よりも数時間ほどズレこんでおります。

 それに神力反応点が消えていないという事は……作戦の成功には未だ至っていないという事。

 もはやいつまで猶予があるのかも予測不能です、新たなお仲間、クラッシャーとの因縁……色々ありましょうが、迅速なご決断を、提案します」

 突入作戦……『標的Z』……俺がコイツらと合流する前に何があったのか———それは分からないが、早く行かないと手遅れになると言うのなら———俺は進む。
 例え戦うなと言われようと。

『今あるこの世界で、カレンさんのような無実の人が死ぬような現状を、変えようとしない…ヤツらのことを。この現状を変えず、現実を変えるだけで……そんな簡単なことに逃げた……ゴルゴダ機関を、その元締めを……俺は絶対に……許さない……!!』

 そう言ったんだ。
 そう誓ったんだ。

 ここに来るまで、ここに至るまで、どんな想いがあったかなど知らない。

 センたちが……人界軍がどれだけ頑張り、どれだけの犠牲を払ったか———そんなもの微塵も分かりはしない。

 それでも、俺は———俺とアテナは向かわなきゃならない。
 後に退くことなど最初から許されちゃいなかった。



 そう、師匠から———あの教えを聞いた時から。

『だから、白郎はもう、罪のない者を誰も殺さないでください。今の白郎には、無実の人を殺す事がどれだけ悪い事か分かるはずです。約束できますか?』

 俺もそれは守らなきゃならない、でも、師匠もアテナも望んでいるのは———。



『……みんなが、みんなをアイせば、ぜんぶ、ぜんぶ———しあわせなのに』

『白郎、私はね、、みんなが楽しく生きられる世界を目指しています』

 そうだ、よくよく考えれば、2人の思想は一緒だった。
 それどころじゃない、俺たちの『アイ』をここまで導いてくれたのは、紛れもない———師匠、あなただった。




 多分そうだ、師匠の追い求めていた世界、それも『みんなが全てをアイする世界』なんだ。
 だから、そのための『エターナル』だったんだ、どこかで歪曲してしまっただけなんだ。


 だからこそ、俺は許さない。……俺が直さなきゃならない、俺とアテナの2人で、ゼウスだとか言うお馬鹿な神サマを、正さなくちゃならない。

 そのために俺はここにいて、そのために俺はここまで来たのだから。


 だったら、ここで止まっちゃいられない。
 俺は立って、立って、進むだけだ。


「…………分かった、俺は———行くよ。戦うなと言われようと、俺がここにいる理由は———それぐらいしかないんだから」
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