Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

激突

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「のおわあああああっ?!」

 その通路内にて響き渡ったのは、突然の出来事に気が動転したイデアの叫び声であった。

 それもそのはず、イデアの後方より現れた影は———人型汎用機動兵器、サイドツーのそれであったのだから。








『イデアさん!……大丈夫ですか、助けに来ましたよ!』

 専用に黄色く塗られた機体より響くは、センの声であった。

「ふん……お前に助けられずとも、この俺のみで突破できたと言うのに」
『……ところで、そこの女は誰でヤンスか?』

 おそらく、ヤンスが指し示した女とは、今ここに———イデアの横にいるレイラの事であろう。
 ……だが、今はそのようなことを話している場合ではない。


「……コイツは———味方だ、とりあえず味方だ、何も考えなくていい、とりあえずこの女は———味方だ」

「コイツじゃない、レイラっすよ」

 ———などと不満を垂れる女は置いておいて、さっさとイデアは先に行きたいと思っていたのだが。




『……サナ……さん、レイ……さん、乗って』

 サイドツーのその、人より一回りも二回りも大きい掌が、サナに向かって降ろされる。
 
「ありがとう……くいなちゃん、まさかここまで来てくれるとは思ってなかったわ……ってことは、外の機神も……!」

『もち…………ろん、ぶっ倒した……!…………1体、のがした……けど』



「———を、1体。逃した……だってえ?」
 

『っと、とりあえず皆さん乗ってください!……トバしますよ、機神B———逃した方の機神は『大穴』方面に逃げたんです、何をする気か分かりませんが、決着を早めなくては!

 ……機神ゼウス、その真体の起動も間近に迫ってます、ここで確実に終わらせますよ……!』






『C-キャノン、爆裂……、切り開け、道の先を……っ!』

 Cキャノン、セン機が手に持つ、赤く塗られたその銃身より出た弾は、空中にて轟音を上げつつ破裂———爆裂する。



「……セン、ありがとう。……魔武道大会と言い、また貴方にお世話になっちゃったわね」

『いいえ、サナさん。これは———僕からのお返しです。……ありがとうございます、僕を……ここまで連れてきてくれて』

 Cキャノンの爆発により開けた道を、サイドツー15機は進んでいく。

 どこまでも続いていきそうな鉄の道路、その先にあったのは———。


「ロストはもう見かけなくなってきたが……分かれ道……だと?……ここに来て、分かれ道で撹乱しようと言うのか……!」

 そう、その先にあったのは、4つの分かれ道であった。

『ならばどの道に誰が行くのか———決めないとダメですよね』

「罠があるかもしれんが……時間にも余裕はない、判断する材料もない……ならば、分断して、無線で連絡を取り合いながら進むしかあるまい」





「だったら、私はこの子———くいなちゃんと一緒に、こっちの道を進ませてもらうわ。よろしくね、くいなちゃん?」

『………………わか……った』

 サナの一言に、くいなも反応を示すが……その反応はいつもよりどこかぎこちないものであり、この先に進むことへの不安を体現しているようだった。






「……ならば、俺はセンと行く。いいだろ、セン?」

『はい、僕だってイデアさんと一緒なら……心強いです』

 ……まあ、センが乗っている汎用人型機動兵器の方が、イデアにとってはよっぽど心強いのだが。






『だったら、レイさんは俺と一緒に行くでヤンスか?』

「ええ、わざわざ他人のサイドツーに乗るのも面倒くさいし、そうすることにするわ。……先で何が待ってるか、そんなの私にも分からないけど」





「…………え……で、あっしは誰と……?」

 1人虚しくそう呟いたのは、レイラであった。




『とは言われましても……イマイチ信用できないと言うか……』

「いやいやいや、流石にあっしの扱い雑すぎないですか?!……一応あっしゴルゴダ機関3番隊なんすよ?!」



 イデアは、この時イデアは思ったのだ。

 ……やっちまった、と。


 そう、コイツはゴルゴダ機関。
 そりゃあ……信用されないのは当然だ。
 だからこそイデアは、自分こそがレイラと一緒に行くべきだった、と若干後悔していたのだ。

『え……いや、レイラさん、って……ゴルゴダ機関の一員で……?』

「大丈夫だセン、こいつは味方だ。ちゃんと戦ってくれる……だろう」

『信用はできませんよ……なぜイデアさんがここまでその事を隠してたのかは知りませんが……』

「……それでもいいさ。レイラ、残ったサイドツー部隊、全部持っていけ」


『そうですね、全部……って全部ぅ?!……残り12機、全部持ってくって……』
「その方がいいだろう、他のみんなは大丈夫か?」


 無言。
 無言ということは大丈夫なのだろう。と、イデアは受け取る。

「……まあ……それなら……」




『———で、連絡は無線で行います。分岐点の先に見かけた固形物、人、風景等は無線を用いて共有してください。……それと、白さんは———あっちに置いてきました』



 しれっと明らかにされた事実だが、中々に衝撃的な事実だった。

 白が戦ってしまうと『鍵』の奪還もあり得る、元より目的は『エターナルの不可逆的阻止』なのだ、そこに私情など挟まないのなら、今すぐにでも白を殺してしまおうと、この場の人界軍の誰もが思っていた。

 それでもと、サナはその想いを制限することはせず、白をアテナとともに送り出したというのに。

 ———が、皆が驚くのは次のセンの一言だった。

『置いては、きました。……でも、僕はあの人がここで戦う事を諦めるとは———到底思えません。

 ……だから、もし、もしも白さんがここに来た時の為に……トランシーバーを1つ落としておきます。白さんの声が聞こえたなら、それと思っていただければ』




 そりゃあ、そうだ、と。
 アイツツバサが戦う事を止めるわけがない、と、この中で唯一ゴルゴダ機関であるレイラも、その胸の内にてそのように感じたのだから。


『いいですか、短期決戦、もう敵は、機神真体の起動準備に取り掛かっているはずです。この場所に攻め込まれたことは既に察知されている、ならばこちらもさっさと全てを終わらせるまでです。…………いいですか?』

 そう、この戦いで全てを終わらせるのだ。
 未知なる機神、ゴルゴダ機関、そんな化け物共と人界軍の、長きに渡る戦い。その全てをここで終わらせる為に。



『…………もう、真珠海の悲劇の二の舞は踏まない。……僕たちの手で全てを終わらせる』



 決意は、既に固まっていた———。
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