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第一章
優しくて狡い人
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オリヴァー様ほど、都合のいい証人は居ないけど……昨日もたくさん迷惑をかけたし、これ以上彼の好意に甘える訳にはいかない。もし、少しでも証人になることを躊躇っているなら、きっぱり断らなくては……!
「私は全然構わないよ。というか、むしろ話し合いに参加させて欲しいくらいさ」
「そ、それなら構いませんが……皇帝陛下はなんと?」
「私の好きにしていいと言っていたよ。ホールデン家に恩を売るのは、ルーメン帝国としても喜ばしいことだからね。まあ、私は損得勘定抜きで君の力になりたいと思っているけど」
柔らかい笑みを浮かべるオリヴァー様は淹れたての紅茶を一口口に含み、『あっ、これ美味しいね』と絶賛する。
かなりリラックスしている彼の様子から、嘘を言っている訳ではなさそうだった。
皇帝陛下からの許可も下りてるなら、これ以上遠慮するのは逆に失礼になるわね。ここはオリヴァー様の好意に甘えておきましょう。
「そういう事なら、是非立ち会いをお願いいたします。父への報告は私の方からしておきま……」
「いや、それは私がやっておくよ。ニーナ王女は、昨日の後始末で忙しいだろう?それに君を介して話をするより、陛下と直接話した方が早いからね」
「わ、分かりました。では、父への謁見申請だけしておきますわ」
「ああ、ありがとう」
爽やかな笑みを浮かべるオリヴァー様は、残りの紅茶を綺麗に飲み干した。
ティーカップをテーブルの上に置き、ゆっくりと立ち上がる。
私もそれにつられるように、慌てて席を立った。
「それじゃあ、私はここら辺で失礼するよ。お昼休みを邪魔して悪かったね」
「い、いえ!気にしないでください!」
オリヴァー様の言葉に、私は『とんでもない!』とばかりに首を横に振った。
「こちらこそ、何のお構いも出来ず失礼しました。そのお詫びと言ってはなんですが、客室までお送り致しますわ」
「いやいや、結構だよ。突然押し掛けたのに、そこまでしてもらうのは気が引けるからね。それに君の貴重な時間をこれ以上奪うのは、申し訳ない」
「で、ですが……」
「見送りだけで十分だよ。気を遣ってくれて、ありがとう」
そう言って、オリヴァー様は私の頭をポンポンッと優しく撫でてくれた。
その手つきがあまりにも優しくて……何も言えなくなってしまう。
昨日から、オリヴァー様の好意に甘えてばかりね……。でも、不思議と悪い気はしない。もちろん、申し訳ない気持ちはあるけれど。
「それじゃあ、僕はこれで……。あまり無理をし過ぎないようにね」
扉の前まで来たオリヴァー様は『体に気をつけて』と言い残し、部屋を後にした。
パタンと閉まる扉の音を聞き流しながら、私はそっと自分の頭に触れる。
────まだそこにオリヴァー様の温もりが残っているような気がした。
本当に狡い人……。
「私は全然構わないよ。というか、むしろ話し合いに参加させて欲しいくらいさ」
「そ、それなら構いませんが……皇帝陛下はなんと?」
「私の好きにしていいと言っていたよ。ホールデン家に恩を売るのは、ルーメン帝国としても喜ばしいことだからね。まあ、私は損得勘定抜きで君の力になりたいと思っているけど」
柔らかい笑みを浮かべるオリヴァー様は淹れたての紅茶を一口口に含み、『あっ、これ美味しいね』と絶賛する。
かなりリラックスしている彼の様子から、嘘を言っている訳ではなさそうだった。
皇帝陛下からの許可も下りてるなら、これ以上遠慮するのは逆に失礼になるわね。ここはオリヴァー様の好意に甘えておきましょう。
「そういう事なら、是非立ち会いをお願いいたします。父への報告は私の方からしておきま……」
「いや、それは私がやっておくよ。ニーナ王女は、昨日の後始末で忙しいだろう?それに君を介して話をするより、陛下と直接話した方が早いからね」
「わ、分かりました。では、父への謁見申請だけしておきますわ」
「ああ、ありがとう」
爽やかな笑みを浮かべるオリヴァー様は、残りの紅茶を綺麗に飲み干した。
ティーカップをテーブルの上に置き、ゆっくりと立ち上がる。
私もそれにつられるように、慌てて席を立った。
「それじゃあ、私はここら辺で失礼するよ。お昼休みを邪魔して悪かったね」
「い、いえ!気にしないでください!」
オリヴァー様の言葉に、私は『とんでもない!』とばかりに首を横に振った。
「こちらこそ、何のお構いも出来ず失礼しました。そのお詫びと言ってはなんですが、客室までお送り致しますわ」
「いやいや、結構だよ。突然押し掛けたのに、そこまでしてもらうのは気が引けるからね。それに君の貴重な時間をこれ以上奪うのは、申し訳ない」
「で、ですが……」
「見送りだけで十分だよ。気を遣ってくれて、ありがとう」
そう言って、オリヴァー様は私の頭をポンポンッと優しく撫でてくれた。
その手つきがあまりにも優しくて……何も言えなくなってしまう。
昨日から、オリヴァー様の好意に甘えてばかりね……。でも、不思議と悪い気はしない。もちろん、申し訳ない気持ちはあるけれど。
「それじゃあ、僕はこれで……。あまり無理をし過ぎないようにね」
扉の前まで来たオリヴァー様は『体に気をつけて』と言い残し、部屋を後にした。
パタンと閉まる扉の音を聞き流しながら、私はそっと自分の頭に触れる。
────まだそこにオリヴァー様の温もりが残っているような気がした。
本当に狡い人……。
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