私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

次から次へと①

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「セシリア、アイリス!」

 お祖父様……?一体、どうしたのかしら?

 声色から焦り具合が見て取れ、私はコテリと首を傾げた。
一先ず話を聞こうと思い部屋の扉を開けると、祖父が直ぐさま中に入る。
後ろ手で扉を閉め、こちらに向き直った。
と同時に、私の肩を掴む。

「セシリア、アイリスはどこに居る?」

「恐らく、中庭だと思いますが……呼んできましょうか?」

「いや、いい……まずはお前に話しておいた方が、いいだろうからな」

「は、はあ……?」

 いまいち状況を掴めず戸惑っていると、祖父は肩を握る手に力を込めた。
どことなく緊張している様子の彼は、真っ直ぐにこちらを見据える。

「落ち着いて聞いてくれ、セシリア」

「は、はい」

「実は先程、皇室から使いの者がやってきて────アナスタシアの逃亡を知らされた」

「なっ……!?お継母様が……!?」

 思わず大きな声を出す私は、慌てて口元を押さえた。
『具体的なことは言ってないから、大丈夫よね?』と不安になる中、祖父は大きく息を吐く。

「それで、屋敷内を少し見せてほしいとのことだ」

「なるほど。私達が……いえ、アイリスが逃亡の手助けをしていないか確認するためですね」

「ああ。でも、していないのはあちらも分かっているだろう。儂らはここ最近、ずっと屋敷に籠っておったからな」

 『あくま形式的なものだと思ってくれ』と言い、祖父はこちらの反応を窺う。
実質公爵家を切り盛りしている立場とはいえ、勝手にあれこれ決めていい訳じゃないため、ちゃんと許可が欲しいのだろう。

「我々の身を潔白するためにも、捜索に協力しましょう。皇室の対応は任せてもいいですか?私はアイリスに声を掛けてきます」

「分かった」

 間髪容れずに頷くと、祖父は直ぐさま踵を返した。
それに習うように私も部屋を出て、中庭へ向かう。
『アイリスはどんな反応をするだろう?』と思いながら合流し、継母のことを話した。
すると、アイリスはどこか複雑な表情を見せる。
死刑の可能性もある以上、逃亡してくれて嬉しいような……家門や皇室に迷惑を掛けて申し訳ないような、微妙な気持ちなのだろう。

 早く捕まってほしいけど……逃亡も罪に加算されたら、死刑の可能性は高まりそう。
それはちょっと……後味が悪いわね。

「大体、どうやって皇城から逃げ出したの……?」

 公爵という後ろ盾と貴族籍を失い、継母は現在ただの平民女性になった。
そんな彼女が騎士達の目を欺き……もしくは買収して、外に出るなど考えられない。

 どこかに協力者が居た……?でも、誰が……?仮にそうだとして、何故お継母様だけを助けたの?
普通は元公爵のお父様を助けない?

 『どちらに恩を売ればいいか』なんて考えるまでもない二択に、私は悶々とした。
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