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第一章

次から次へと②

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◇◆◇◆

 ────継母逃亡から、早一週間。
今のところ、捜査に進展はない。
強いて言うなら、私達の疑いが晴れたことくらい。
もちろん、まだ疑っている人は一定数居るだろうが。
それでも、もう屋敷をひっくり返すような勢いで捜索されたり、各々のアリバイや証言を徹底的に確認されたりすることはなかった。

 一先ず、いつも通りの日常に戻れて良かったけど……お継母様は一体、どこに身を隠しているのかしら?
これだけ探しても見つからないということは、誰かに匿ってもらっていると考えるのが妥当よね。
さすがに宿を転々としたり、ホームレスのような暮らしをしたりするのは無理だろうし。

 継母の性格を思い返し、私は『暖かいところでゆっくりしているだろう』と結論づけた。
────と、ここでヴィンセントがテーブルに置かれた三通の手紙を手に取る。

「さて、今考えるべきことは────狩猟大会・・・・をどうやり過ごすか、だね」

 そう言って、ヴィンセントは皇室主催のイベントの招待状を睨みつけた。
というのも、今回の運営に携わっているのが────最も血の気の多い第二皇子だから。

「ご丁寧にこんな挑発までしてくれている」

 封筒から便箋を取り出し、ヴィンセントはある一文を指さす。
そこには、『各家門の若人達と是非交流を持ちたい』と書かれていた。
これだけなら別になんてことはないのだが……問題は第二皇子も狩りに参加する気であること。
要するに、『各家の子供を最低一人は狩りに参加させろ』と要求しているのだ。
狩り組と待機組は基本序盤と終盤しか、関わりを持てないから。
狩り組に入らなければ、第二皇子の要望を満たせない……つまり、無視した形になる。

 今のエーデル公爵家は皇室に大分お世話になっているから、それは不味い……。
きっとロジャー皇帝陛下は気にしないだろうけど、周りから一体どう思われるか……。

 微妙な立場に居るエーデル公爵家を思い、私は頭を抱えた。
と同時に、ルパート殿下が顔を上げる。

「すまない。多分、私のせいだ。兄上は皇位継承権争いに多大な影響を与えるであろう、エーデル公爵家とクライン公爵家を警戒しているんだと思う」

 『謂わば、牽制だな』と主張し、ルパート殿下は申し訳なさそうに目を伏せた。
巻き込んでしまったことを悔いる彼に対し、私とアイリスはブンブン首を横に振る。

「ルパート殿下のせいでは、ありません。殿下にアイリスの講師をお願いした時点で、こうなることは何となく分かっていましたから」

「お姉様の言う通りです。それにルパート殿下には、返し切れないほどの恩があります。たとえ、殿下のせいであったとしても全く迷惑だとは思いません」

 『むしろ、これでようやく釣り合いが取れるというもの』と言い、アイリスは殿下を励ました。
訓練を通して随分と仲良くなったのか、かなり口調が柔らかい。
『アイリスがここまで心を開くなんて』と少し感動していると、ルパート殿下がスッと目を細めた。

「そう言ってくれると、有り難い」

 どこかホッとしたような素振りを見せ、ルパート殿下はヴィンセントから招待状を一枚受け取る。
恐らく、殿下自身の分だろう。
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