聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも

文字の大きさ
上 下
18 / 61

迷宮都市最強戦士との決闘

しおりを挟む
 迷宮都市ラピスラズリの冒険者ギルドに戻ってきた事だった。

「……信じられねぇぜ。あのベヒーモスを一撃でなんて」
「信じる信じないはそっち次第だ」
「なにやら騒がしいですね」

 騒がしかった。以前ダンジョンクエストに同行して貰ったSランク冒険者、ダンジョンマスターの異名を持つ男、ラカンと数名の冒険者達が会話をしていた。

「それも錬金術師が。眉唾物だわ」
「……きたきた。あいつだ。あの男だ」
「私がどうかしたのですか?」

 エルクはぽかんとした様子で聞く。

「あなた、ベヒーモスを倒したそうね」
「そもそも、あなた達は誰ですか? いきなりなんです?」
「私達を知らない? 私達はこの迷宮都市で最強と言われるSランク冒険者パーティー『四聖竜』よ」

 魔法使い風の女が言う。明らかに高位の魔法使いといった風格だ。年齢は20代といったところだが、艶のある美女だった。

「……はぁ」

 明らかに名前負けしてると思った。強そうなパーティー名だった。

「あなた達はなんて名前の冒険者パーティーなの?」
「最近Eランクの冒険者パーティーに昇格したばかりの、ラブリーラビットです!」
「ラブリーラビット?」
「はい! ラブリーラビットです!」
「なに? そのパーティー名? 舐めてるの?」

 女は微笑を浮かべる。

「舐めてません。うさぎさんはとっても可愛いラブリーな生き物なんです!」
「そう。それはよかったわね」
「あっ、この人もう私を頭がおかしい子だと思って、相手をしたくないと思いました!」
「よくわかったじゃない。その通りよ」
「それより、嘘だろう? ベヒーモスを一撃で倒したとか。早く名を売りたいからとんでもないオオボラを吹いて、それをラカンが真に受けた。そんなところだろう?」

 男も微笑を浮かべる。黒い鎧に身を纏った男だ。あれは黒竜の鎧と言い、限られた素材からしか作られないSランク相当の鎧である。Sランクのモンスターとして恐れられているドラゴンの素材を使用している。その為強度は恐ろしく高いが、入手難易度も恐ろしく高い。

「その問いに何の意味があるのですか。あなた達は嘘だろうという前提で話をしています。私達が本当に倒しましたと言って、それを信じますか?」
「まあ、信じないだろうな。よくわかってるじゃないか」
「それより、何か私達に用ですか?」
「名乗り遅れたな。俺の名はゼネガル。セネガル・ロードメリア。戦士をやっている。自分で言うのもなんだが、この迷宮都市で最強の戦士と言われている冒険者だ」
「そうですか。私はエルクと申します。しがない錬金術師で、ずっと引き籠もっていた為世情には疎いのです。その為あなた達の事も存じ上げませんでした」
「……そうか。どおりで。他の三人の女も新米(ルーキー)なんだろう? 雰囲気が新米(ルーキー)って感じを醸し出しているぜ」
「そうです。この方達は私が冒険者学校で教えていた教え子達です。つい最近卒業したばかりの駆け出しです」
「そうか。あんたは先生だったのか」
「臨時ですが教師であったという事に関しては本当の事です」
「だったら学校の先生が生徒に嘘を教えちゃいけないだろ? 生徒の前で恰好をつけたかったのか? 高々錬金術師がベヒーモスを倒せるわけないだろ」
「くすくす……だめよ。図星をついたら。可哀想よ」
「な! 何を言ってるんですか! あなた達は! 先生の凄さも知らないで! 失礼にも程があります!」
「……リーネ怒りすぎ。でも気持ちはわかる。Sランクかなんだか知らないけど、この人達は人を見下しすぎ」
「人を馬鹿にするのもいい加減にしてください!」
「人を嘘つき呼ばわりして挑発するのもいい加減にしてください。自制心がある方とは自負しておりますが、私にも限界があるんですよ」
「なんだ? 怒ったのか。錬金術師。だったら見せてみろよ。ベヒーモスを倒したっていうその実力を」
「何をするつもりですか?」
「決まってるだろ。俺と戦うんだよ、錬金術師の先生」
「戦う?」
「ギルドを出てからしばらく行ったところに闘技場(コロセウム)がある。そこで俺と決闘(デュエル)をしようぜ」
「決闘(デュエル)ですか」
「どうだ? 逃げるっていうならベヒーモスを倒したのはただの嘘だと認めるんだな。そうすれば逃がしてやる」
「いいでしょう。その決闘(デュエル)お受けします」
「へっ。いいぜ。そうこなくっちゃな」
「ただし、ひとつだけお願いがあります」
「なんだ? 手加減してくれって事か」
「いえ。逆です。死んでも私を恨まないでください」

 その時のエルクの眼光は鋭く、一瞬の事ではあるがSランクの冒険者であるゼネガルは気圧されていた。

「ず、随分と吹くじゃねぇか。そうこなくっちゃ面白くねぇ」

 ゼネガルは言い放つ。

「さっさと行きましょうか。私達もそれほど暇をしているわけではないのです」
「そうだな。さっさと行って白黒付けるか」

 一同は闘技場(コロセウム)に向かった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

処理中です...