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番外編 騎士が花嫁こぼれ話
40. 三日間の休日 - リノ
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こんなに欲しくなるなんて知らなかった。
ジュリさんと初めて結ばれたのは一昨日の夜。
やっと取れたまとまったジュリさんの休みの日の前。
ジュリさんは俺のために後ろの準備をしてくれ、そして初めて男を抱く俺を気にかけてくれた。
俺はと言えば、インティアに教わったことを最初は覚えていたが、あっという間にぶっ飛んでしまい本能のままにジュリさんを貪った。
けど。
ジュリさんのほうが上手で、知らないうちに俺に無数のキスマークをつけていた。
休みの初日の朝。
俺が朝のお茶をジュリさんのために淹れた。
ところまでよかったんだけど、そのまま二人で二度寝してしまい、次に起きたら昼過ぎだった。
午後はだらだらと過ごすつもりが、ジュリさんと離れたくなくてくっついていたら、ムラムラっときてしまい、まだ日があるうちに二度抱いて、夜も二度抱いた。
休みの二日目。
朝は起きられるはずもなく、昼前にもそもそと起きだしてしまった。
これまでの疲れが溜まっているのか、ジュリさんも同じで「すまない」と照れたようにしていた。
今は、休みの日だけど基礎練習をしてくる、とジュリさんはクラディウス様の敷地内の訓練場に行ってしまった。
俺は一人、部屋でだらだらしている。
随分ひどいことをしちゃったから大丈夫かなぁ。
俺はジュリさんがあんなに色っぽい目つきで人を見るだなんて知らなかった。
切羽詰まった熱く濡れた緑の目は、綺麗で綺麗で見惚れてしまう。
そんな目をして手を差し伸べられたら、食べちゃうでしょう!
それはもう、がっつんがっつん食べましたとも!
暴走する俺をジュリさんは全部受け留めてくれた。
昨日は、その前の初めてのときのように「俺が萎えるかも」とあまり不安にならなかったみたい。
それどころかちょっとは萎えてほしい、俺。
今、まさにのっぴきならない状態になっている。
少しでもあの時のジュリさんのことを想い出しただけで、こうなっちゃう。
痛いほど反り返っている。
あうあう、どうしよう…
ジュリさんいないから、部屋でやってもいっかなぁ。
俺は用心のためにドアに鍵をかけ、自分のベッドに横になった。
早くしないと、ジュリさんが訓練場から帰ってくる。
あそこから、この本館までどれくらいかかったっけ?
ジュリさんの休みは明日まで。
明後日からまた、騎士様として勤務される。
だから明日の夜はジュリさんを抱かない、と俺は決めている。
それで、今夜はどうする?
俺としては欲しい。
まだ足りない。
もっとジュリさんが欲しい。
もっともっともっと。
三日連続ってどうなのかな?
今、インティアに聞くわけにもいかないしさ。
なんか生々しすぎるじゃん。
次にお休みが取れるのはいつだろう。
いつまた繋がれるんだろう。
いやいや、休みのたびにこんなことしてるのもなぁ。
一緒にどこかに出かけたりもしたいし、ジュリさんの都合もあるだろうし、
そうしたらいつもいつも昼まで寝てるわけにはいかないし。
あ、それと切実な問題が…
あの…その、うー、なんだ。
潤滑油がなくなりまして…
まさか、俺、こんなにヤるとは思ってなくて…
ジュリさん、呆れてないかなぁ。
俺のほうが不安だよ。
インティアにすっごく言われてたんだ。
「とにかく、痛いのは絶対にダメ!
いいね、リノ」
だから潤滑油をいっぱい使ってた。
こぼしたり、こぼれたりはしていないから使いすぎとは思わないんだけどな。
それこそ、「適量はどれくらいなの?」なんてそんなことインティアに聞けないしさ!
それに「もう一本ちょうだい」なんて言えるはずないだろ!
いけないのはジュリさんだ。
普段、クラディウス様の斜め後ろに控えていて、俺を甘やかすだけ甘やかしてくれるジュリさんが、短く喘いで乱れるだなんて、もう!
伸びた赤い髪が乱れてそれが白い肌にかかって、綺麗。
なんてことを思い出すと、それに反応するように俺の手の動きも激しくなり、あっという間に昇り詰めて弾けてしまった。
こんなに欲しくなるなんて知らなかった。
本当に知らなかった。
もっともっと欲しい。
だけど、やっぱりやめておこう。
ピニャータ王様が亡くなって新しいマグリカ王様に決まるまでの5か月間、ジュリさんはきっと休む暇もなかったはず。
戻ってきたとき、痩せていた。
やっと取れた三日間の休みを俺とのセックスで消耗するだけで終わらせたらいけないよ。
今夜と明日はゆっくり休んでもらおう。
またお茶を淹れてあげるのもいいな。
無事に帰ってきただけでも幸せなのに、俺は知らないうちに欲張りになっている。
いつまでも髪をなでて「おかえり」と伝えたい。
約束通り帰ってきてくれてありがとう、と伝えたい。
と、思っていたのに!
夜、先にお風呂に入って、昼間決めた「よーし、今夜はジュリさんを甘やかして休ませる作戦」を実践に移そうと待ち構えていたのにさ!
俺の次にお風呂に入り、上がってきたジュリさんたら上半身、ははははは裸!
見慣れてるよ!
そりゃ、こういうことになる前からも何度も見ているけれど、セックスしたあとだと、いろいろ思い出すことが多すぎて「ただのエロい裸!」になるんだよ、ばかあっ!
ほら、背中のくっきりとした肩甲骨のくぼみとか、背骨のラインとか。
以前についた傷はあるけどしっとりした白い肌とか筋肉とか。
ちらちらと見え隠れする砂漠の赤い砂のような乳首の色とか。
まだ寝衣のズボンははいているけれど、そこにきゅっと引き締まった形のいいお尻が隠れていて、そこに俺のを挿れて、あああああああああああああんっ、もうっ!!!
俺は自分のベッドの上で上掛けにくるまってジュリさんに気づかれないように悶え苦しんでいた。
つもり。
ずっと「格の違い」を見せつけられている感じだから、俺も「動揺しない男」を目指すんだもんね。
昼間、ジュリさんでヌいた、だなんて気づかれないように。
今現在、欲情してちょっとどうしようもなくなっている、だなんて気づかれないように。
ってか、あああああああ、一昨日も昨日もヤって昼にもヌいてるのに今も半分勃ってるだなんて、どうなの俺?!
「リノ、どうした?
暑くないのか?」
「ナニモナイデス。
アー、ツカレチャッタナー。
モウ、ネヨウカナー」
ジュリさんは何も言わずにオイルランプの明かりを落とした。
いつも一声かけるのに。
おかしい。
「ひゃあっ?!」
突然、上掛けが乱暴にはぎとられた。
そしてジュリさんの大きな両手が俺のほっぺを包んだかと思うと、ぶっちゅりとキスされた。
え。
声を上げる間もなく、キスが終わるとジュリさんは俺を横抱きにして運び、ジュリさんのベッドに放り投げた。
「なにす……ンっ」
いつになく乱暴なジュリさんに戸惑い、ちょっとイラついて怒鳴ろうかと思ったけど、すぐにキスで口を塞がれた。
ん。
ジュリさん、それ、だめ。
厚い舌が俺の口の中を蠢く。
あ、そんなに絡めたら、んんっ。
ジュリさんは俺に覆いかぶさるようにして、俺の唇を貪っている。
苦しくてジュリさんの腕にすがったら、俺の指とジュリさんの指を絡ませるように手を繋いでベッドに押し付けてきた。
一通り食べたのか、やっとジュリさんが唇を離してくれたときには、俺は相当目がぐるぐるしていた。
「ジュ、ジュリさ…ん、突然、なに…?
ああんっ!
耳舐めたらだめだって!
あうっ」
耳の穴に舌が入ってきた!
やややややめて、ジュリさん!
だめだめだめだめ。
「欲情しているのはリノだけじゃない」
耳元で、いつもより低く濡れた声で囁かれ背中に痺れが走った。
それから、もう!
俺はジュリさんにされるがままだった。
首筋から胸、腹、脇、爪先、くるぶし、膝。
ありとあらゆるところにさわられ、キスされた。
どこをさわられても、声が上がる。
こんな俺、自分でも知らない…
一方で冷静な自分もいる。
次はジュリさんのおへそも舐めてみよう。
背中のキス、ジュリさんは好きかな。
ここのぎりぎりのところをさわってみよう。
俺なら、こうするかも…
でもそんなことはすぐにどこかに行ってしまった。
だってだってだって!
「や。ジュリさん、そこはだめっ、あ、んんんんっ!」
気がついたら、寝衣は脱がされていまして。
それで。
なんと。
ジュリさんが。
先っぽを舐めてる。
と思ったら、つけ根から先に向けて舐め上げる。
「ちょっ、ジュリさんっ!
そんなことされたら、俺、出ちゃ…んんんっ!」
「出せばいい」
「そんな」
「口でされるのは初めて?」
「そそそそうですよ!」
「筆おろしではしてもらわなかったのか?」
「はああああんっ、それ、もう、だめだってばっ!
べ、別料金だからお願いしちゃだめ、って先輩が言ってたから」
「では、俺が初めてか」
「そうですよ!
あああああああっ!」
ジュリさんが根元まで咥えた。
それはジュリさんの中に入ったときとはまた全然違っていた。
柔らかく湿っていて、舌が蠢いて、これまで体験したことのない刺激に身体が跳ねる。
俺は思わず、ジュリさんの頭を向こうに押しやる。
もう、これ以上されたら。
「もうやめてください」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
また咥えられた。
「じゃあ、気持ちいい?」
「はあああああんっ」
それ、俺、ジュリさんに聞けなかった言葉。
ジュリさんは俺ががっかりするんじゃないかと気にしていたけれど、心配なのはこっちなんだって!
ジュリさんは感じているようだったし、何も言わなかったけれど。
今だってそう。
こんなに舐められて吸われて、おかしくなってしまいそうで。
その前に身体中にされた愛撫も気持ちよくて気持ちよくて。
でも、俺はジュリさんを気持ちよくさせてる?
勢いで一昨日も昨日もやっちゃったけど、気持ちよかった?
ジュリさんほどうまくないのは知っている。
それでも、怖くて聞けなかった。
ジュリさんは、どうなの?
なんて考えている間に、俺はジュリさんの口と舌に翻弄されていた。
「やっ、やっ、もう、離してっジュリさんっ!
あ、で、やああんっ」
ジュリさんは空いた手で俺の内腿をなで、玉を揉みながら、吸った。
「でっ、でっ、出ちゃうぅぅぅ…んんんっ、んああああ」
内側からこみ上げるものに振り回され、気持ちよくて、でもイきたくて。
どうにもならなくて、身体をくねらしたり、声が出たりした。
そして、最後にイった。
なにこれ…
がっくりと力が抜ける。
肩で大きく息をする。
も、それしかできない。
でも。
目の端に写ったのは。
ジュリさんが何かを飲み込み、喉仏が大きく動いて、指で口の端を拭った姿だった。
がばっと起き上がる。
「え、ジュリさん、飲んだのっ?」
「ああ」
「あ、え、ん…。
えええええええええ!
み、水っ!
水飲んで!
うがい?
吐かなくていい?
気分悪くない?」
「それは必要ない。
それで、リノ、気持ちよかった?」
は?
俺の動きが止まる。
なに言い出すの、この人。
「まだ答えてもらっていなかったから。
嫌だったか?
気持ちよくなかった?」
この人、本気?
俺にあそこまでして、あんあん言わせて。
初めてあんなに喘ぎましたよ!
お陰で喉ががらがら。
俺はジュリさんから視線を離せなかった。
「あー、もうっ!」
俺はジュリさんを抱き寄せた。
そして抱きしめながら言った。
「気持ちよかったです!
サイコーに気持ちよかったです!
俺、今日はもうしないでおこう、って決めてたのに!
今夜はジュリさんに腕枕かなにかして、甘えてもらっておとなしく寝ようと思っていたのに!
あんなことされたら、俺、止まらなくなるじゃん!」
俺はジュリさんの顔を覗き込んだ。
ジュリさんは満足そうにしていた。
「俺だけかと思ってました、こんなにがっついているの。
でも、ジュリさんも欲情していて嬉しかっ」
言い終わらないうちに、ジュリさんがまた最初のときのように俺の上から覆いかぶさってきて、キスをした。
「あ、俺、今日、食べられちゃうの…?」
ジュリさんの大きな手が俺の髪をなでた。
「食べてほしい?」
「うー、どっちかというと俺が食べたい」
今度は優しくキスされた。
「だーめ!」
俺は唇を離す。
「これ以上はだめだよ、ジュリさん」
「どうして?」
「さっきの、すごく気持ちよかったけど、でも、俺、やっぱりジュリさんの中に入るほうが好き。
これ以上されたら、もっと欲しくなる。
止まらなくなる」
って言ってるのに、ジュリさんは誘うようにキスをする。
「だーめえええ!」
首をかわいく傾げてもだめですよ、ジュリさん。
今夜はもう寝るんです。
「どうして?」
俺は仕方なく、正直に言った。
「本当にジュリさんが欲しくて止まらなくなりそうなんです。
でも……あの…潤滑油がなくなっちゃって…」
「いつもの引き出しにある」
「はあっ?!」
俺はジュリさんの下から這い出て、ジュリさんのベッドのそばのチェストの引き出しをそっと開ける。
「あ、あった…」
見慣れた小瓶。
取り出して蓋を開けるとふわりと花の香り。
間違いない。
俺がインティアからもらったあの潤滑油!
なんで?
なんで?
俺がジュリさんのほうを向くと、うつ伏せになっていたジュリさんは肩越しに俺を見ていた。
そして、
「きて」
と、悩ましい声で言った。
本当に、もう。
ジュリアス、なんて人。
「じゃ、また舐めてくれる?
さっきイったから、このままじゃジュリの中に入れない」
ジュリさんは素直に従った。
俺はベッドのヘッドボードに背中を預けて座り、ジュリさんが舐めているのを見ている。
これ、視覚的刺激が強い。
さっきは翻弄されてなにがなんだかわからなかったけど、こんなにやらしい音を立てて舐めていたんだ。
これまでの後ろの準備も口でするのも、全部俺のためにしてくれている。
俺に気持ちよくなってほしくて、してくれている。
息が上がってくる。
ああ、気持ちいい。
だから、ジュリさん、あなたの中に入らせて。
あなたの中でイかせて。
「ジュリさん、ありがと。
も、いいから…」
俺はジュリさんの後ろに回り腰を上げてもらうと、小瓶の蓋を開けた。
花の香りが二人を包む。
手に取り温め、潤滑油を絡めた指でそっとジュリさんの孔の周りに触れる。
あ、よく見たら赤くなってる。
ごめん、あと一回だけ、ね。
俺はジュリさんのお尻のほっぺに軽くキスをすると、そっと指を一本、第一関節まで入れた。
それから少しずつ潤滑油を足して、指をなじませていく。
今夜もジュリさんは準備をしてくれていたみたいだし、二日連続でセックスしているせいか、いつもより随分柔らかで、熱くて、絡みついてくる。
ジュリさんの抑えた声も聞こえる。
俺、さっきあんなに喘いでしまったのに、ジュリさんはあんなふうにならない。
いつかもっと喘がしたい。
俺の名前しか呼べないくらい、ジュリさんを俺で一杯にしたい。
「あっ…はぁっ…リノ……」
「ほんとに今日は俺を煽りますね、ジュリさん」
「リノ、きて…」
もう、ばかぁ。
俺は三本に増やしていた指を引き抜き、ジュリさんの唾液で濡れている俺のに潤滑油をたっぷりとつけた手でしごきながら塗ると、ジュリさんの後ろにあてがった。
「ジュリアス、いくね」
「ぅんっ」
ジュリさんの返事を待たずに俺が挿れると、ジュリさんが呻いた。
「うわっ、すごっ」
俺も思わず声を上げた。
今までと全然違う、ジュリさんの中。
最初はまだお互いによくわからなくて、どちらも探り探りだったのに、今日は馴染んでる。
それも俺のだとわかっているみたいにぎゅっと包んで抱きしめてもらっている感じ。
そんな温かくて優しくて嬉しい気分になれる一方で。
蠢いて手でされるのとも口でされるのとも違う締め付け方で俺のを圧迫し刺激する。
ヤバい、持っていかれる!
俺は余裕がない中、深呼吸をした。
そして少し腰を引き、浅いところで出し入れしてみた。
「あっ、あっ、んっ」
声が変わった。
ジュリさんの感じ方が違う。
嬉しくなって小刻みに腰を動かす。
ジュリさんの腰も揺れている。
ね、気持ちいい?
今度はもっと奥にも行きたくて、今度はぐっと腰を進める。
ジュリさんの声が濡れた漏れる。
大きく腰を動かす。
ジュリさんの身体も揺れる。
左腕をジュリさんの腰に回し、右手を伸ばしてジュリさんのにさわる。
おっきい…
あ、手の中でびくびくってした。
俺の動きでジュリさんの腰も動き、手の中のジュリさんも反応している。
右手もそっと包むようにして上下に動かすと、ジュリさんの背中がしなった。
すぐに手が濡れる。
ジュリさんの先走りもいっぱいだね。
ああ、かわいいな。
動きを緩やかにして、背中に軽いキスをたくさんする。
俺の唇が背中に触れるたびに、ジュリさんの身体がぴくんぴくんと跳ねる。
なんて素直な人。
俺の動きにすべて反応する。
今なら、聞けるかな。
「ね、ジュリさん」
俺は背中に唇を寄せたまま言った。
「気持ちいい?」
ジュリさんの身体に力が入り、びくっと震えた。
え、これって…
しばらくして、小さな声で「…ああ」とジュリさんが言った。
「ほんと?」
確かめてみる。
「ああ」
「じゃあ、言って。
気持ちいい、って言って」
「き…もち…い…」
ぐんっと腰の動きが大きくなった。
仕方ないでしょ!
そんなかわいい言い方するとは思ってなかったんだから!
「ジュリさん、気持ちいい?」
「…ん…、きもちい…」
んああああああっ!
ごめん、ジュリさん!
俺は暴走し始めた。
腰が止まらない。
「お…俺も、気持ちいいよ、ジュリ…っ」
もっと奥へ。
もっと深く。
優しくしようなんて思っていたのが、また吹き飛んでしまった。
それに、ジュリさんの中はひどく動いてねっとりと絡みついて、刺激がたまんない。
ジュリさんがずっと俺の名前だけを呼んでいる。
俺、ここにいるよ。
あなたの中、入ってる。
あなたの中は熱くて、気持ちよくて、俺、とろけそうだ。
このままあなたを内側から溶かしたい。
「ジュリ…ジュリ…、俺、もイきそ…」
「リノ…」
そんなふうに呼ばれたら、俺。
「愛してる、ジュリ」
俺の中から溢れる思いと熱は、言葉になり出て行く。
ジュリの中が大きく大きくうねり、俺をぎゅっと締め付けて離さない。
気持ちい…
あっ、それ、も…
「んああああっ、イくっ、俺…くっっっ!」
イくときに腰をこれまでにないくらい、打ちつけた。
ジュリさんも弾けて、俺の手の中で果てた。
この夜は一回だけだったけど、とても満ち足りた。
離れたくなくて、嫌がるジュリさんをなだめて一緒に風呂に入った。
俺が中に出したのを掻き出さなくちゃいけなくて、俺に先に上がるように言う。
「見たい!」って言ったら、すっごい力の入った目で「だめだ」と言われた。
でも「どうしても離れたくないから」と言って、俺は湯船に入りジュリさんには背中を向け、ジュリさんは洗い場でそれをすることになった。
時々漏れてくるジュリさんの声にまた反応しそうになった。
けど。
「うっわああああああっ!!」
ジュリさんの後始末も終わり、ジュリさんに後ろから抱きつかれる格好で二人で湯船に浸かっていたとき、気がついた。
「どうした?」
「ジュリさん、これ…
また増えてない…?」
最初に身体中につけられていた赤い痕の数が増えてる。
「あ、こんな服を着ても隠せないところにまで?!」
「大丈夫だ、そこはぎりぎり見えない」
「ぎりぎり、ってジュリさん!」
「俺がいなくても、俺を感じることができるだろう?」
ぎゃあああああああっ!
やめてよっ、のぼせちゃう!
そ、そんな恥ずかしいこと、平気で言っちゃえるの?!
「リノ、大丈夫か?
湯あたりした?」
「い、いや…ジュリさんには勝てないです…」
「?」
「もういいです」
二人でさっぱりして、二人で照れながらシーツを替えて、そして二人で抱き合って寝た。
ジュリさんのお休みの最後の日は、クラディウス様の庭を二人で散歩したり、たくさんおしゃべりしたり、ちょっと昼寝をしたりして穏やかに過ごした。
夜はきちんと俺は自分の考えを言った。
ジュリさんも「ありがとう」と言い、小さなキスをいっぱいして眠った。
寝る前に休みが終わりになり「寂しいな」と呟いたら、「俺もです」とジュリさんが言った。
夢のような三日間が終わった。
翌朝、ジュリさんのお茶から一日が始まった。
俺もユエ先生のところに行く。
今日から二人で仕事だ。
玄関までジュリさんを見送りに行くと、クラディウス様とインティアがいた。
そして、インティアはジュリさんを見るなり俺に怒鳴った。
「ちょっと、リノ!
これってどういうことなのっ!」
「あ…え?なに?」
「自覚ないの?」
ジュリさんと俺は顔を見合わせ、首を傾げた。
「ジュリさん、なにかおかしい?」
「いや、別に変ったところはありませんが」
だよね?
クラディウス様もおかしそうにしていたけれど、ジュリさんを伴って王宮に向かわれた。
夕方、ユエ先生が気を遣って少し早めに上がらせてくれた。
インティアも一緒。
するとクラディウス様もジュリさんももうすぐ帰ってくるというので、玄関のところに出迎えにいった。
え?
いつもはクラディウス様が前を歩き、その斜め左後ろをジュリさんが歩いているのに、今日は反対だった。
「ど、どうかしたのっ?」
俺はジュリさんに駆け寄った。
「どうもこうもないよ、リノ。
なんとかしてくれないか」
クラディウス様が疲れたようにおっしゃった。
え、なにが?
「今日は仕事にならなかったぞ。
みんな、ジュリアスの色気にやられてふらふらして失敗ばかりして」
「そんなことはない。
あの失敗の原因はそれぞれだ。
俺のせいじゃない」
「ではなにか?
おまえの尻を何気なくさわろうとした輩はいなかったというのか?
俺が何度いなしたか、教えてやろうか?
それもさわろうとした輩のせいだというのか?」
えええええ!
ジュリさんのお尻…さわる…?!
「だーかーらー、僕が朝、言ったでしょう!
ジュリアスの色気が半端ないから危険だ、って!
どうやって赤熊をあんなふうにしたの、リノ!
ちょっとやりすぎだよ!」
「や…、そんな…。
昨日はなにもしてないし…」
「ああ、当分なにもしないでくれ」
クラディウス様があくびをしながら行ってしまう。
インティアがついていきながら、
「初めてだから止まらないとは思ってたけど、あれはすごいよね。
三日間籠りっぱなしだったけどさ。
ジュリアスの色気にやられた騎士ってどれぐらいいたの?」
「騎士だけじゃないぞ。
大臣だの貴族だの、それはもううじゃうじゃと。
ジャスティが面白がっていたから、今度聞いてみるといい」
なんて会話していた。
残されたのはジュリさんと俺。
そ、そんなにジュリさんが色っぽかったかな?
いや、色っぽいですよ!
熱を孕んだ視線とか、かわいい声とか。
でもそこまで…?
俺はちらりとジュリさんを盗み見た。
うわっ!ジュリさんと視線が合った。
「ただいまかえりました、旦那様」
「おおおおおかえりなさい。
大変でしたね」
「騒ぐほどではありませんでしたよ」
「そ、そうなんですか?」
「そういうことにしておいてください。
さ、食事に行きましょう。
お腹空いたでしょう?」
促されてジュリさんの隣を歩き出す。
少しして、俺はぎゅっとジュリさんの手を握る。
ジュリさんが俺を見る。
「浮気、しないでください」
「しませんよ、あんなに愛してくれるのはリノだけです」
ば、ばかぁっ!
ジュリさんと初めて結ばれたのは一昨日の夜。
やっと取れたまとまったジュリさんの休みの日の前。
ジュリさんは俺のために後ろの準備をしてくれ、そして初めて男を抱く俺を気にかけてくれた。
俺はと言えば、インティアに教わったことを最初は覚えていたが、あっという間にぶっ飛んでしまい本能のままにジュリさんを貪った。
けど。
ジュリさんのほうが上手で、知らないうちに俺に無数のキスマークをつけていた。
休みの初日の朝。
俺が朝のお茶をジュリさんのために淹れた。
ところまでよかったんだけど、そのまま二人で二度寝してしまい、次に起きたら昼過ぎだった。
午後はだらだらと過ごすつもりが、ジュリさんと離れたくなくてくっついていたら、ムラムラっときてしまい、まだ日があるうちに二度抱いて、夜も二度抱いた。
休みの二日目。
朝は起きられるはずもなく、昼前にもそもそと起きだしてしまった。
これまでの疲れが溜まっているのか、ジュリさんも同じで「すまない」と照れたようにしていた。
今は、休みの日だけど基礎練習をしてくる、とジュリさんはクラディウス様の敷地内の訓練場に行ってしまった。
俺は一人、部屋でだらだらしている。
随分ひどいことをしちゃったから大丈夫かなぁ。
俺はジュリさんがあんなに色っぽい目つきで人を見るだなんて知らなかった。
切羽詰まった熱く濡れた緑の目は、綺麗で綺麗で見惚れてしまう。
そんな目をして手を差し伸べられたら、食べちゃうでしょう!
それはもう、がっつんがっつん食べましたとも!
暴走する俺をジュリさんは全部受け留めてくれた。
昨日は、その前の初めてのときのように「俺が萎えるかも」とあまり不安にならなかったみたい。
それどころかちょっとは萎えてほしい、俺。
今、まさにのっぴきならない状態になっている。
少しでもあの時のジュリさんのことを想い出しただけで、こうなっちゃう。
痛いほど反り返っている。
あうあう、どうしよう…
ジュリさんいないから、部屋でやってもいっかなぁ。
俺は用心のためにドアに鍵をかけ、自分のベッドに横になった。
早くしないと、ジュリさんが訓練場から帰ってくる。
あそこから、この本館までどれくらいかかったっけ?
ジュリさんの休みは明日まで。
明後日からまた、騎士様として勤務される。
だから明日の夜はジュリさんを抱かない、と俺は決めている。
それで、今夜はどうする?
俺としては欲しい。
まだ足りない。
もっとジュリさんが欲しい。
もっともっともっと。
三日連続ってどうなのかな?
今、インティアに聞くわけにもいかないしさ。
なんか生々しすぎるじゃん。
次にお休みが取れるのはいつだろう。
いつまた繋がれるんだろう。
いやいや、休みのたびにこんなことしてるのもなぁ。
一緒にどこかに出かけたりもしたいし、ジュリさんの都合もあるだろうし、
そうしたらいつもいつも昼まで寝てるわけにはいかないし。
あ、それと切実な問題が…
あの…その、うー、なんだ。
潤滑油がなくなりまして…
まさか、俺、こんなにヤるとは思ってなくて…
ジュリさん、呆れてないかなぁ。
俺のほうが不安だよ。
インティアにすっごく言われてたんだ。
「とにかく、痛いのは絶対にダメ!
いいね、リノ」
だから潤滑油をいっぱい使ってた。
こぼしたり、こぼれたりはしていないから使いすぎとは思わないんだけどな。
それこそ、「適量はどれくらいなの?」なんてそんなことインティアに聞けないしさ!
それに「もう一本ちょうだい」なんて言えるはずないだろ!
いけないのはジュリさんだ。
普段、クラディウス様の斜め後ろに控えていて、俺を甘やかすだけ甘やかしてくれるジュリさんが、短く喘いで乱れるだなんて、もう!
伸びた赤い髪が乱れてそれが白い肌にかかって、綺麗。
なんてことを思い出すと、それに反応するように俺の手の動きも激しくなり、あっという間に昇り詰めて弾けてしまった。
こんなに欲しくなるなんて知らなかった。
本当に知らなかった。
もっともっと欲しい。
だけど、やっぱりやめておこう。
ピニャータ王様が亡くなって新しいマグリカ王様に決まるまでの5か月間、ジュリさんはきっと休む暇もなかったはず。
戻ってきたとき、痩せていた。
やっと取れた三日間の休みを俺とのセックスで消耗するだけで終わらせたらいけないよ。
今夜と明日はゆっくり休んでもらおう。
またお茶を淹れてあげるのもいいな。
無事に帰ってきただけでも幸せなのに、俺は知らないうちに欲張りになっている。
いつまでも髪をなでて「おかえり」と伝えたい。
約束通り帰ってきてくれてありがとう、と伝えたい。
と、思っていたのに!
夜、先にお風呂に入って、昼間決めた「よーし、今夜はジュリさんを甘やかして休ませる作戦」を実践に移そうと待ち構えていたのにさ!
俺の次にお風呂に入り、上がってきたジュリさんたら上半身、ははははは裸!
見慣れてるよ!
そりゃ、こういうことになる前からも何度も見ているけれど、セックスしたあとだと、いろいろ思い出すことが多すぎて「ただのエロい裸!」になるんだよ、ばかあっ!
ほら、背中のくっきりとした肩甲骨のくぼみとか、背骨のラインとか。
以前についた傷はあるけどしっとりした白い肌とか筋肉とか。
ちらちらと見え隠れする砂漠の赤い砂のような乳首の色とか。
まだ寝衣のズボンははいているけれど、そこにきゅっと引き締まった形のいいお尻が隠れていて、そこに俺のを挿れて、あああああああああああああんっ、もうっ!!!
俺は自分のベッドの上で上掛けにくるまってジュリさんに気づかれないように悶え苦しんでいた。
つもり。
ずっと「格の違い」を見せつけられている感じだから、俺も「動揺しない男」を目指すんだもんね。
昼間、ジュリさんでヌいた、だなんて気づかれないように。
今現在、欲情してちょっとどうしようもなくなっている、だなんて気づかれないように。
ってか、あああああああ、一昨日も昨日もヤって昼にもヌいてるのに今も半分勃ってるだなんて、どうなの俺?!
「リノ、どうした?
暑くないのか?」
「ナニモナイデス。
アー、ツカレチャッタナー。
モウ、ネヨウカナー」
ジュリさんは何も言わずにオイルランプの明かりを落とした。
いつも一声かけるのに。
おかしい。
「ひゃあっ?!」
突然、上掛けが乱暴にはぎとられた。
そしてジュリさんの大きな両手が俺のほっぺを包んだかと思うと、ぶっちゅりとキスされた。
え。
声を上げる間もなく、キスが終わるとジュリさんは俺を横抱きにして運び、ジュリさんのベッドに放り投げた。
「なにす……ンっ」
いつになく乱暴なジュリさんに戸惑い、ちょっとイラついて怒鳴ろうかと思ったけど、すぐにキスで口を塞がれた。
ん。
ジュリさん、それ、だめ。
厚い舌が俺の口の中を蠢く。
あ、そんなに絡めたら、んんっ。
ジュリさんは俺に覆いかぶさるようにして、俺の唇を貪っている。
苦しくてジュリさんの腕にすがったら、俺の指とジュリさんの指を絡ませるように手を繋いでベッドに押し付けてきた。
一通り食べたのか、やっとジュリさんが唇を離してくれたときには、俺は相当目がぐるぐるしていた。
「ジュ、ジュリさ…ん、突然、なに…?
ああんっ!
耳舐めたらだめだって!
あうっ」
耳の穴に舌が入ってきた!
やややややめて、ジュリさん!
だめだめだめだめ。
「欲情しているのはリノだけじゃない」
耳元で、いつもより低く濡れた声で囁かれ背中に痺れが走った。
それから、もう!
俺はジュリさんにされるがままだった。
首筋から胸、腹、脇、爪先、くるぶし、膝。
ありとあらゆるところにさわられ、キスされた。
どこをさわられても、声が上がる。
こんな俺、自分でも知らない…
一方で冷静な自分もいる。
次はジュリさんのおへそも舐めてみよう。
背中のキス、ジュリさんは好きかな。
ここのぎりぎりのところをさわってみよう。
俺なら、こうするかも…
でもそんなことはすぐにどこかに行ってしまった。
だってだってだって!
「や。ジュリさん、そこはだめっ、あ、んんんんっ!」
気がついたら、寝衣は脱がされていまして。
それで。
なんと。
ジュリさんが。
先っぽを舐めてる。
と思ったら、つけ根から先に向けて舐め上げる。
「ちょっ、ジュリさんっ!
そんなことされたら、俺、出ちゃ…んんんっ!」
「出せばいい」
「そんな」
「口でされるのは初めて?」
「そそそそうですよ!」
「筆おろしではしてもらわなかったのか?」
「はああああんっ、それ、もう、だめだってばっ!
べ、別料金だからお願いしちゃだめ、って先輩が言ってたから」
「では、俺が初めてか」
「そうですよ!
あああああああっ!」
ジュリさんが根元まで咥えた。
それはジュリさんの中に入ったときとはまた全然違っていた。
柔らかく湿っていて、舌が蠢いて、これまで体験したことのない刺激に身体が跳ねる。
俺は思わず、ジュリさんの頭を向こうに押しやる。
もう、これ以上されたら。
「もうやめてください」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
また咥えられた。
「じゃあ、気持ちいい?」
「はあああああんっ」
それ、俺、ジュリさんに聞けなかった言葉。
ジュリさんは俺ががっかりするんじゃないかと気にしていたけれど、心配なのはこっちなんだって!
ジュリさんは感じているようだったし、何も言わなかったけれど。
今だってそう。
こんなに舐められて吸われて、おかしくなってしまいそうで。
その前に身体中にされた愛撫も気持ちよくて気持ちよくて。
でも、俺はジュリさんを気持ちよくさせてる?
勢いで一昨日も昨日もやっちゃったけど、気持ちよかった?
ジュリさんほどうまくないのは知っている。
それでも、怖くて聞けなかった。
ジュリさんは、どうなの?
なんて考えている間に、俺はジュリさんの口と舌に翻弄されていた。
「やっ、やっ、もう、離してっジュリさんっ!
あ、で、やああんっ」
ジュリさんは空いた手で俺の内腿をなで、玉を揉みながら、吸った。
「でっ、でっ、出ちゃうぅぅぅ…んんんっ、んああああ」
内側からこみ上げるものに振り回され、気持ちよくて、でもイきたくて。
どうにもならなくて、身体をくねらしたり、声が出たりした。
そして、最後にイった。
なにこれ…
がっくりと力が抜ける。
肩で大きく息をする。
も、それしかできない。
でも。
目の端に写ったのは。
ジュリさんが何かを飲み込み、喉仏が大きく動いて、指で口の端を拭った姿だった。
がばっと起き上がる。
「え、ジュリさん、飲んだのっ?」
「ああ」
「あ、え、ん…。
えええええええええ!
み、水っ!
水飲んで!
うがい?
吐かなくていい?
気分悪くない?」
「それは必要ない。
それで、リノ、気持ちよかった?」
は?
俺の動きが止まる。
なに言い出すの、この人。
「まだ答えてもらっていなかったから。
嫌だったか?
気持ちよくなかった?」
この人、本気?
俺にあそこまでして、あんあん言わせて。
初めてあんなに喘ぎましたよ!
お陰で喉ががらがら。
俺はジュリさんから視線を離せなかった。
「あー、もうっ!」
俺はジュリさんを抱き寄せた。
そして抱きしめながら言った。
「気持ちよかったです!
サイコーに気持ちよかったです!
俺、今日はもうしないでおこう、って決めてたのに!
今夜はジュリさんに腕枕かなにかして、甘えてもらっておとなしく寝ようと思っていたのに!
あんなことされたら、俺、止まらなくなるじゃん!」
俺はジュリさんの顔を覗き込んだ。
ジュリさんは満足そうにしていた。
「俺だけかと思ってました、こんなにがっついているの。
でも、ジュリさんも欲情していて嬉しかっ」
言い終わらないうちに、ジュリさんがまた最初のときのように俺の上から覆いかぶさってきて、キスをした。
「あ、俺、今日、食べられちゃうの…?」
ジュリさんの大きな手が俺の髪をなでた。
「食べてほしい?」
「うー、どっちかというと俺が食べたい」
今度は優しくキスされた。
「だーめ!」
俺は唇を離す。
「これ以上はだめだよ、ジュリさん」
「どうして?」
「さっきの、すごく気持ちよかったけど、でも、俺、やっぱりジュリさんの中に入るほうが好き。
これ以上されたら、もっと欲しくなる。
止まらなくなる」
って言ってるのに、ジュリさんは誘うようにキスをする。
「だーめえええ!」
首をかわいく傾げてもだめですよ、ジュリさん。
今夜はもう寝るんです。
「どうして?」
俺は仕方なく、正直に言った。
「本当にジュリさんが欲しくて止まらなくなりそうなんです。
でも……あの…潤滑油がなくなっちゃって…」
「いつもの引き出しにある」
「はあっ?!」
俺はジュリさんの下から這い出て、ジュリさんのベッドのそばのチェストの引き出しをそっと開ける。
「あ、あった…」
見慣れた小瓶。
取り出して蓋を開けるとふわりと花の香り。
間違いない。
俺がインティアからもらったあの潤滑油!
なんで?
なんで?
俺がジュリさんのほうを向くと、うつ伏せになっていたジュリさんは肩越しに俺を見ていた。
そして、
「きて」
と、悩ましい声で言った。
本当に、もう。
ジュリアス、なんて人。
「じゃ、また舐めてくれる?
さっきイったから、このままじゃジュリの中に入れない」
ジュリさんは素直に従った。
俺はベッドのヘッドボードに背中を預けて座り、ジュリさんが舐めているのを見ている。
これ、視覚的刺激が強い。
さっきは翻弄されてなにがなんだかわからなかったけど、こんなにやらしい音を立てて舐めていたんだ。
これまでの後ろの準備も口でするのも、全部俺のためにしてくれている。
俺に気持ちよくなってほしくて、してくれている。
息が上がってくる。
ああ、気持ちいい。
だから、ジュリさん、あなたの中に入らせて。
あなたの中でイかせて。
「ジュリさん、ありがと。
も、いいから…」
俺はジュリさんの後ろに回り腰を上げてもらうと、小瓶の蓋を開けた。
花の香りが二人を包む。
手に取り温め、潤滑油を絡めた指でそっとジュリさんの孔の周りに触れる。
あ、よく見たら赤くなってる。
ごめん、あと一回だけ、ね。
俺はジュリさんのお尻のほっぺに軽くキスをすると、そっと指を一本、第一関節まで入れた。
それから少しずつ潤滑油を足して、指をなじませていく。
今夜もジュリさんは準備をしてくれていたみたいだし、二日連続でセックスしているせいか、いつもより随分柔らかで、熱くて、絡みついてくる。
ジュリさんの抑えた声も聞こえる。
俺、さっきあんなに喘いでしまったのに、ジュリさんはあんなふうにならない。
いつかもっと喘がしたい。
俺の名前しか呼べないくらい、ジュリさんを俺で一杯にしたい。
「あっ…はぁっ…リノ……」
「ほんとに今日は俺を煽りますね、ジュリさん」
「リノ、きて…」
もう、ばかぁ。
俺は三本に増やしていた指を引き抜き、ジュリさんの唾液で濡れている俺のに潤滑油をたっぷりとつけた手でしごきながら塗ると、ジュリさんの後ろにあてがった。
「ジュリアス、いくね」
「ぅんっ」
ジュリさんの返事を待たずに俺が挿れると、ジュリさんが呻いた。
「うわっ、すごっ」
俺も思わず声を上げた。
今までと全然違う、ジュリさんの中。
最初はまだお互いによくわからなくて、どちらも探り探りだったのに、今日は馴染んでる。
それも俺のだとわかっているみたいにぎゅっと包んで抱きしめてもらっている感じ。
そんな温かくて優しくて嬉しい気分になれる一方で。
蠢いて手でされるのとも口でされるのとも違う締め付け方で俺のを圧迫し刺激する。
ヤバい、持っていかれる!
俺は余裕がない中、深呼吸をした。
そして少し腰を引き、浅いところで出し入れしてみた。
「あっ、あっ、んっ」
声が変わった。
ジュリさんの感じ方が違う。
嬉しくなって小刻みに腰を動かす。
ジュリさんの腰も揺れている。
ね、気持ちいい?
今度はもっと奥にも行きたくて、今度はぐっと腰を進める。
ジュリさんの声が濡れた漏れる。
大きく腰を動かす。
ジュリさんの身体も揺れる。
左腕をジュリさんの腰に回し、右手を伸ばしてジュリさんのにさわる。
おっきい…
あ、手の中でびくびくってした。
俺の動きでジュリさんの腰も動き、手の中のジュリさんも反応している。
右手もそっと包むようにして上下に動かすと、ジュリさんの背中がしなった。
すぐに手が濡れる。
ジュリさんの先走りもいっぱいだね。
ああ、かわいいな。
動きを緩やかにして、背中に軽いキスをたくさんする。
俺の唇が背中に触れるたびに、ジュリさんの身体がぴくんぴくんと跳ねる。
なんて素直な人。
俺の動きにすべて反応する。
今なら、聞けるかな。
「ね、ジュリさん」
俺は背中に唇を寄せたまま言った。
「気持ちいい?」
ジュリさんの身体に力が入り、びくっと震えた。
え、これって…
しばらくして、小さな声で「…ああ」とジュリさんが言った。
「ほんと?」
確かめてみる。
「ああ」
「じゃあ、言って。
気持ちいい、って言って」
「き…もち…い…」
ぐんっと腰の動きが大きくなった。
仕方ないでしょ!
そんなかわいい言い方するとは思ってなかったんだから!
「ジュリさん、気持ちいい?」
「…ん…、きもちい…」
んああああああっ!
ごめん、ジュリさん!
俺は暴走し始めた。
腰が止まらない。
「お…俺も、気持ちいいよ、ジュリ…っ」
もっと奥へ。
もっと深く。
優しくしようなんて思っていたのが、また吹き飛んでしまった。
それに、ジュリさんの中はひどく動いてねっとりと絡みついて、刺激がたまんない。
ジュリさんがずっと俺の名前だけを呼んでいる。
俺、ここにいるよ。
あなたの中、入ってる。
あなたの中は熱くて、気持ちよくて、俺、とろけそうだ。
このままあなたを内側から溶かしたい。
「ジュリ…ジュリ…、俺、もイきそ…」
「リノ…」
そんなふうに呼ばれたら、俺。
「愛してる、ジュリ」
俺の中から溢れる思いと熱は、言葉になり出て行く。
ジュリの中が大きく大きくうねり、俺をぎゅっと締め付けて離さない。
気持ちい…
あっ、それ、も…
「んああああっ、イくっ、俺…くっっっ!」
イくときに腰をこれまでにないくらい、打ちつけた。
ジュリさんも弾けて、俺の手の中で果てた。
この夜は一回だけだったけど、とても満ち足りた。
離れたくなくて、嫌がるジュリさんをなだめて一緒に風呂に入った。
俺が中に出したのを掻き出さなくちゃいけなくて、俺に先に上がるように言う。
「見たい!」って言ったら、すっごい力の入った目で「だめだ」と言われた。
でも「どうしても離れたくないから」と言って、俺は湯船に入りジュリさんには背中を向け、ジュリさんは洗い場でそれをすることになった。
時々漏れてくるジュリさんの声にまた反応しそうになった。
けど。
「うっわああああああっ!!」
ジュリさんの後始末も終わり、ジュリさんに後ろから抱きつかれる格好で二人で湯船に浸かっていたとき、気がついた。
「どうした?」
「ジュリさん、これ…
また増えてない…?」
最初に身体中につけられていた赤い痕の数が増えてる。
「あ、こんな服を着ても隠せないところにまで?!」
「大丈夫だ、そこはぎりぎり見えない」
「ぎりぎり、ってジュリさん!」
「俺がいなくても、俺を感じることができるだろう?」
ぎゃあああああああっ!
やめてよっ、のぼせちゃう!
そ、そんな恥ずかしいこと、平気で言っちゃえるの?!
「リノ、大丈夫か?
湯あたりした?」
「い、いや…ジュリさんには勝てないです…」
「?」
「もういいです」
二人でさっぱりして、二人で照れながらシーツを替えて、そして二人で抱き合って寝た。
ジュリさんのお休みの最後の日は、クラディウス様の庭を二人で散歩したり、たくさんおしゃべりしたり、ちょっと昼寝をしたりして穏やかに過ごした。
夜はきちんと俺は自分の考えを言った。
ジュリさんも「ありがとう」と言い、小さなキスをいっぱいして眠った。
寝る前に休みが終わりになり「寂しいな」と呟いたら、「俺もです」とジュリさんが言った。
夢のような三日間が終わった。
翌朝、ジュリさんのお茶から一日が始まった。
俺もユエ先生のところに行く。
今日から二人で仕事だ。
玄関までジュリさんを見送りに行くと、クラディウス様とインティアがいた。
そして、インティアはジュリさんを見るなり俺に怒鳴った。
「ちょっと、リノ!
これってどういうことなのっ!」
「あ…え?なに?」
「自覚ないの?」
ジュリさんと俺は顔を見合わせ、首を傾げた。
「ジュリさん、なにかおかしい?」
「いや、別に変ったところはありませんが」
だよね?
クラディウス様もおかしそうにしていたけれど、ジュリさんを伴って王宮に向かわれた。
夕方、ユエ先生が気を遣って少し早めに上がらせてくれた。
インティアも一緒。
するとクラディウス様もジュリさんももうすぐ帰ってくるというので、玄関のところに出迎えにいった。
え?
いつもはクラディウス様が前を歩き、その斜め左後ろをジュリさんが歩いているのに、今日は反対だった。
「ど、どうかしたのっ?」
俺はジュリさんに駆け寄った。
「どうもこうもないよ、リノ。
なんとかしてくれないか」
クラディウス様が疲れたようにおっしゃった。
え、なにが?
「今日は仕事にならなかったぞ。
みんな、ジュリアスの色気にやられてふらふらして失敗ばかりして」
「そんなことはない。
あの失敗の原因はそれぞれだ。
俺のせいじゃない」
「ではなにか?
おまえの尻を何気なくさわろうとした輩はいなかったというのか?
俺が何度いなしたか、教えてやろうか?
それもさわろうとした輩のせいだというのか?」
えええええ!
ジュリさんのお尻…さわる…?!
「だーかーらー、僕が朝、言ったでしょう!
ジュリアスの色気が半端ないから危険だ、って!
どうやって赤熊をあんなふうにしたの、リノ!
ちょっとやりすぎだよ!」
「や…、そんな…。
昨日はなにもしてないし…」
「ああ、当分なにもしないでくれ」
クラディウス様があくびをしながら行ってしまう。
インティアがついていきながら、
「初めてだから止まらないとは思ってたけど、あれはすごいよね。
三日間籠りっぱなしだったけどさ。
ジュリアスの色気にやられた騎士ってどれぐらいいたの?」
「騎士だけじゃないぞ。
大臣だの貴族だの、それはもううじゃうじゃと。
ジャスティが面白がっていたから、今度聞いてみるといい」
なんて会話していた。
残されたのはジュリさんと俺。
そ、そんなにジュリさんが色っぽかったかな?
いや、色っぽいですよ!
熱を孕んだ視線とか、かわいい声とか。
でもそこまで…?
俺はちらりとジュリさんを盗み見た。
うわっ!ジュリさんと視線が合った。
「ただいまかえりました、旦那様」
「おおおおおかえりなさい。
大変でしたね」
「騒ぐほどではありませんでしたよ」
「そ、そうなんですか?」
「そういうことにしておいてください。
さ、食事に行きましょう。
お腹空いたでしょう?」
促されてジュリさんの隣を歩き出す。
少しして、俺はぎゅっとジュリさんの手を握る。
ジュリさんが俺を見る。
「浮気、しないでください」
「しませんよ、あんなに愛してくれるのはリノだけです」
ば、ばかぁっ!
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