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続編/高宮過去編
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彼女が母親から聞かされてきた幼少期の話を聞いてからやたら思い出す。
繋がれた手の温もりを、抱きしめられた母親の腕の中の柔らかさを、頭を撫でられた大きな父親の掌を、俺にさし伸ばされてくる小さな小さな弟の手を――。
「どれも俺が勝手に突き放してきただけだったのかなって」
いまさら会いたいなどと虫が良すぎる。自由になりたいと飛び出した自分の勝手さを誰よりも知っている。
逃げ出した俺が帰れるなんて思ったこともなかったから――。
「会いたいって、会わせる顔がないからってお母さんは泣いてらしたよ?でも会いたいって……会いに行こうよ、駿くん」
「――なんで燈子さんが泣くの」
「嬉しいからに決まってるでしょぉ!」
彼女はどうしてこんなに人のために泣けるのか、お節介もここまで来たら度が過ぎる。
頬を伝う涙をぬぐう彼女の手を掴んで握りしめたら彼女が見上げてくる。目に涙をいっぱい溜めて八の字のような眉毛で鼻をすすり上げている。その幼くて可愛い顔がたまらなくて握りしめた手を自分の頬に持ってきた。
「会わせる顔がないのは俺の方。颯にひどい感情を持ったこと、自分が嫌になるほどひどい感情だった、そんな思いを抱いて普通に暮らしている俺が本気で気持ち悪くてさ。言葉にするのが怖くて謝ることも出来ない、でも抱いた気持ちをなかったことにも出来なくて……それが余計苦しくて逃げるしかなかった、颯から。そんな颯を傍で守り続ける母親にこの気持ちがバレたらもう傷つけるどころじゃない。だからどんどん距離を取った、怖かったから」
これ以上、母親が自分を責めるようなことをさせたくない、ただそれだけの気持ちだった。
「でも離れることが解決になんかならなかったし、母親はずっと自分を責めてた……だからもう俺が飛び出せばいいと思ったんだよ。いなくなればいい、家を出たいって我儘を通せば俺の勝手で終わるだろうって……そう思ってたけどそんなでもないんだな」
彼女の指先が熱っぽい、包むように掴んでいた手のひらから彼女の指先が伸びてきて頬をそっと撫でられる。
「俺だけが――ずっとガキのままじゃん。だから嫌だったんだよ、家族と絡むのはさ」
なのに彼女の傍にいると自分がどんどん幼稚になる。抱き締められる熱の心地よさに酔って、守られている安堵を知ったら受け入れざるを得ない。
「颯から逃げて、母親からも逃げ続けてきたこと……謝りたいなって思ったんだよね」
それが解決にはならない、ただの自己満足なんだと思う、それでも――。
会いたい理由に変わりはない。
繋がれた手の温もりを、抱きしめられた母親の腕の中の柔らかさを、頭を撫でられた大きな父親の掌を、俺にさし伸ばされてくる小さな小さな弟の手を――。
「どれも俺が勝手に突き放してきただけだったのかなって」
いまさら会いたいなどと虫が良すぎる。自由になりたいと飛び出した自分の勝手さを誰よりも知っている。
逃げ出した俺が帰れるなんて思ったこともなかったから――。
「会いたいって、会わせる顔がないからってお母さんは泣いてらしたよ?でも会いたいって……会いに行こうよ、駿くん」
「――なんで燈子さんが泣くの」
「嬉しいからに決まってるでしょぉ!」
彼女はどうしてこんなに人のために泣けるのか、お節介もここまで来たら度が過ぎる。
頬を伝う涙をぬぐう彼女の手を掴んで握りしめたら彼女が見上げてくる。目に涙をいっぱい溜めて八の字のような眉毛で鼻をすすり上げている。その幼くて可愛い顔がたまらなくて握りしめた手を自分の頬に持ってきた。
「会わせる顔がないのは俺の方。颯にひどい感情を持ったこと、自分が嫌になるほどひどい感情だった、そんな思いを抱いて普通に暮らしている俺が本気で気持ち悪くてさ。言葉にするのが怖くて謝ることも出来ない、でも抱いた気持ちをなかったことにも出来なくて……それが余計苦しくて逃げるしかなかった、颯から。そんな颯を傍で守り続ける母親にこの気持ちがバレたらもう傷つけるどころじゃない。だからどんどん距離を取った、怖かったから」
これ以上、母親が自分を責めるようなことをさせたくない、ただそれだけの気持ちだった。
「でも離れることが解決になんかならなかったし、母親はずっと自分を責めてた……だからもう俺が飛び出せばいいと思ったんだよ。いなくなればいい、家を出たいって我儘を通せば俺の勝手で終わるだろうって……そう思ってたけどそんなでもないんだな」
彼女の指先が熱っぽい、包むように掴んでいた手のひらから彼女の指先が伸びてきて頬をそっと撫でられる。
「俺だけが――ずっとガキのままじゃん。だから嫌だったんだよ、家族と絡むのはさ」
なのに彼女の傍にいると自分がどんどん幼稚になる。抱き締められる熱の心地よさに酔って、守られている安堵を知ったら受け入れざるを得ない。
「颯から逃げて、母親からも逃げ続けてきたこと……謝りたいなって思ったんだよね」
それが解決にはならない、ただの自己満足なんだと思う、それでも――。
会いたい理由に変わりはない。
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