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続編/高宮過去編

巡る記憶の中で(高宮)―1

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 中学生になったころは見た目優等生で中身はすっかり捻くれていた。
 コミュ力が高かったおかげでいろんな交友関係が広がって、悪い奴らとツルむこともあった。彼女にタバコは高校生から吸っていると言ったけれど本音は中三、怒られると思ってサバを読んだ。結局は怒られたけれど。タバコもそいつらから教わった。


 外ズラの良さはもう処世術だった。
 大人は簡単に見た目に騙されるし、笑顔一個で簡単に信用を得られた。


「高宮くんはなにも言うことがない、優秀、生徒の鑑です」

 学年主任に言われた言葉に心底白けて大人を馬鹿にし始めた。素行が悪い、見た目が派手、成績が悪い、クラスの輪を乱す、そんな奴らは簡単に線引きされて嘘の笑顔を張り付けた俺だけが高い評価を受ける。
 裏では柄の悪い奴らとタバコを吸って、学校にもろくに行っていない子たちと夜に遊んでいた。夜中に家を抜け出していても親は何も言わなかった、気づいてなかったのだと思う。その頃父親は出張が多くて家を空けていたし、母親は相変わらず颯のそばで寝ていたから。


 俺が中三、颯は小五。
 学校にもろくに通っていなかった颯もまた周りの同学年よりもずっと幼く、母親に依存していた。そんな二人が気持ち悪くて俺はますます家にいるのが嫌になっていた。


 全寮制の高校に行きたいと父親に言ったら反対された。母親と颯のそばにいてほしいと言う。


(俺がそばにいてなんになる、共依存している二人に俺なんか必要ないじゃないか)


 結局高校も家から通えるこの辺ではトップクラスの進学校。周りからの期待と評価だけを一心に背負って俺はまた嘘の笑顔を作りながら生活する。
 外では作り笑い、家では無機質な暮らし、つまらなくて満たされない。

 そんな時、初めて心から惹かれて好きになる子に出会う。好きになった子は、図書室に通って物語を書くのが好きなクラスメイトだった。


 たまたま訪れた図書室に落ちていたノートを拾って何気なく読んでしまったらそこには目を見張る世界が広がっていて無心でそれを読んでいた。
 面白いはそうだけど、胸がときめいた。物語に惹かれたのもだが、表現や描写、言葉の使い方がうまくて好きだと思ったのだ。


「高宮くん……それっ――」
「――これ?佐野さんが書いたの?」
「―――か、返して。それで……このこと、忘れてくれる?」
「どうして?すごいね、自分で書いたの?」
「――お願い、返して」
 真っ赤になってノートを引っ張るその姿がまず可愛かったのと、学年でもトップクラスに入るような真面目な子がこんな世界観を文字に出来る才能を持っていることに単純に惹かれた。


「すごいなー、他には書いてる?」
「高宮くんには関係ないでしょ」
 そんな風に突っぱねられたのは初めてで。どんな女の子もたいてい喜んで近寄ってきてくれたから余計興味がわいた。


「良かったら俺にも読ませて」
 好奇心もあったけど本音。本を読むのは昔から好きだった。一人の時間を過ごせるし、その時だけは……別の世界に行けたから……。

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