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続編/高宮過去編
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否定するように思わず言ってしまったせいか、彼も若干ムッとしたように眉をひそめて言い返してくるのだ。
「えー?俺がおかしい?向こうがおかしいだろ、何年音信不通だと思ってんの?いきなりかけてくるのおかしいじゃん」
「何年も音信不通だからかけて来てるんでしょ?普通だよ!」
「ええ?」
「私でもすぐかけてると思う、十三年連絡が取れなかった息子から連絡欲しいってきたらすぐかける!即かける!待ってられない!!」
「……ええ?そういうものなの?こわぁ……」
(なにが怖いの!!)
「もうでも番号見ただけでちょっと恐怖心あったもんなぁ……電話でもハードル高いかも」
「――そう……電話って案外声だけだから気持ちがバレやすいとか言うよね」
「無駄にハードルあげるのやめてよ」
「ごめん、そんなつもりじゃなくって」
「もう燈子さん直接かけてよ、俺挟まず燈子さんが話して?」
いきなり丸投げし始めた。
「ええ?それこそハードル高くない?私がいきなりかけたら向こうもビックリされるよ。私なんかより駿くんと話したいだろうし」
「そういうのホントいい、話したい事なんかないって。あの人も言ってた、もう自分は母親として何の役にもたたないだろうって」
「え?」
「今朝の夢の話、そんなことを家を出る前に言われたなぁって」
(そんな……夢はいい夢じゃなかったのか……)
「――そんな顔しないで」
彼に言われて自分がどんな顔をしていたのか想像が出来なかった。
「駿くんは……ないの?お母さんと話したい事」
「ないよ。何話したらいいかさえ分かんないし」
「そう……本当に私が話していいの?」
「え、いいの?」
「駿くんとお母さんがいいなら私は全然かまわない、私は話したい事も聞いてみたいこともあるし……」
そう言ったら彼が驚いたように私を見るからなんだか恥ずかしくなった。
「ごめんね、なんか厚かましい女で」
「いや、そうじゃなくって。嫌じゃないんだなぁって、俺はこんなに逃げ回ってることに向き合ってくれるんだね、すげー」
感心したように言うならもう少し自分でも向き合ったらどうだ、はもちろん飲み込んだけれど。
「何話したいの?」
「そりゃ駿くんのことだよ」
「俺のこと話すの?意味なくない?」
「駿くんはすぐ意味を求めるけどそれなんで?意味がないことなんかないと思うしどんなことにも意味はあるの、いろんなことに繋がってるんだよ?」
「へぇー」
明らかにバカにしたような返しにムッとした。彼はすぐ自分にとっての利点を算段して動くところがあるけれど些細なことがあとで自分にとって有意義なものとして返ってくることだってある。人生は長いのだ、無駄なことばかりではない、無駄だと思うことこそ大事なことだってたくさんある。
「駿くんがチョコレートに目がないとか本当に知らないのか聞きたいの」
「くだらねー」
バカみたいに笑われてまたムッとする。
「バカにしすぎじゃない?」
「わざわざ話すことじゃない、そこに意味があるって全く思えないですけど」
「私にはあるし、お母さんにだってきっとあるよ。話せばわかるの!」
「ふうん、まぁ何言われるか見当つかないけど……傷つかないでよ?」
彼にとっては傷がつくような心配をしないといけないことなのか、そんなことを言われるとまたモヤモヤとしてくる。
こんな風に諦めて冷めてしまった彼の気持ちは本当に間違いじゃないのか確かめたい。
自分が母親として役に立たないだろうと我が子に告げたお母さんの真意を知りたい。
チョコレートが好きで、寝起きが悪くて、甘えん坊で優しい彼のことをもっと知って?
知る時間がなかっただけではないのか、私はただそう思っていた。
「えー?俺がおかしい?向こうがおかしいだろ、何年音信不通だと思ってんの?いきなりかけてくるのおかしいじゃん」
「何年も音信不通だからかけて来てるんでしょ?普通だよ!」
「ええ?」
「私でもすぐかけてると思う、十三年連絡が取れなかった息子から連絡欲しいってきたらすぐかける!即かける!待ってられない!!」
「……ええ?そういうものなの?こわぁ……」
(なにが怖いの!!)
「もうでも番号見ただけでちょっと恐怖心あったもんなぁ……電話でもハードル高いかも」
「――そう……電話って案外声だけだから気持ちがバレやすいとか言うよね」
「無駄にハードルあげるのやめてよ」
「ごめん、そんなつもりじゃなくって」
「もう燈子さん直接かけてよ、俺挟まず燈子さんが話して?」
いきなり丸投げし始めた。
「ええ?それこそハードル高くない?私がいきなりかけたら向こうもビックリされるよ。私なんかより駿くんと話したいだろうし」
「そういうのホントいい、話したい事なんかないって。あの人も言ってた、もう自分は母親として何の役にもたたないだろうって」
「え?」
「今朝の夢の話、そんなことを家を出る前に言われたなぁって」
(そんな……夢はいい夢じゃなかったのか……)
「――そんな顔しないで」
彼に言われて自分がどんな顔をしていたのか想像が出来なかった。
「駿くんは……ないの?お母さんと話したい事」
「ないよ。何話したらいいかさえ分かんないし」
「そう……本当に私が話していいの?」
「え、いいの?」
「駿くんとお母さんがいいなら私は全然かまわない、私は話したい事も聞いてみたいこともあるし……」
そう言ったら彼が驚いたように私を見るからなんだか恥ずかしくなった。
「ごめんね、なんか厚かましい女で」
「いや、そうじゃなくって。嫌じゃないんだなぁって、俺はこんなに逃げ回ってることに向き合ってくれるんだね、すげー」
感心したように言うならもう少し自分でも向き合ったらどうだ、はもちろん飲み込んだけれど。
「何話したいの?」
「そりゃ駿くんのことだよ」
「俺のこと話すの?意味なくない?」
「駿くんはすぐ意味を求めるけどそれなんで?意味がないことなんかないと思うしどんなことにも意味はあるの、いろんなことに繋がってるんだよ?」
「へぇー」
明らかにバカにしたような返しにムッとした。彼はすぐ自分にとっての利点を算段して動くところがあるけれど些細なことがあとで自分にとって有意義なものとして返ってくることだってある。人生は長いのだ、無駄なことばかりではない、無駄だと思うことこそ大事なことだってたくさんある。
「駿くんがチョコレートに目がないとか本当に知らないのか聞きたいの」
「くだらねー」
バカみたいに笑われてまたムッとする。
「バカにしすぎじゃない?」
「わざわざ話すことじゃない、そこに意味があるって全く思えないですけど」
「私にはあるし、お母さんにだってきっとあるよ。話せばわかるの!」
「ふうん、まぁ何言われるか見当つかないけど……傷つかないでよ?」
彼にとっては傷がつくような心配をしないといけないことなのか、そんなことを言われるとまたモヤモヤとしてくる。
こんな風に諦めて冷めてしまった彼の気持ちは本当に間違いじゃないのか確かめたい。
自分が母親として役に立たないだろうと我が子に告げたお母さんの真意を知りたい。
チョコレートが好きで、寝起きが悪くて、甘えん坊で優しい彼のことをもっと知って?
知る時間がなかっただけではないのか、私はただそう思っていた。
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