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続編/高宮過去編
知りたい気持ち、知りたくない気持ち(高宮)―1
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「今日電話があったならかけ直しても平気かな?」
緊張や戸惑いはないのか、彼女は大胆にも今晩電話をかけるようだ。
「はやくない?もうかけるの?」
「だって着信あったの今日でしょ?何時ごろ?」
「……定時過ぎた頃?」
「仕事終わるような時間を考えて電話してくれてるんだね、やっぱりそんな非常識さは感じないし、すっごくその時間まで待ってたと思うよ?お母さん」
なぜ会ったことも話したことさえない人物のことをそんな風に解釈できるのか謎でしかない。
「お母さんってお名前何て言うの?」
「――美羽さん」
「漢字は?」
この会話いる?また意味を考えてしまうけどどうせ言ったってまた言い返されるだけだから無駄なことは言わず素直に答えることにする。
「美しいの羽」
「素敵なお名前、なんかあれかな二人の名前は風とか軽やかなイメージをしてつけられてるのかなぁ、駿くんも颯くんもそんな感じじゃない?」
勝手に想像して頬を染めている彼女が不思議でならない。名前のことなんか考えたこともない、そんなこと意識したこともなかった。
「お父さんは?」
この流れだと聞くんだろうなとは思っていたが案の定聞く。彼女の知りたい精神はどんどん溢れてくるようでもう止めれる気がしなかった。
「――昇、昇降の昇」
「お父さんが一文字で二人も一文字に合わせられたのかな、素敵だね」
彼女がこんなに想像力がたくましいとは思わなかった。思い込みがすごい。女の子は想像や妄想が少し強めにあるのは付き合ってきた子たちにもよくあったからさほど不思議ではないけれど、彼女がこんなにいろんなことを想像するタイプなのは知らなかった。
(名前の由来とか、それこそ考えたところでなんの意味も見出せないし必要性を感じない、相手を知る情報にしては内容がしょうもなさすぎないか?)
「伝えてほしいこととか本当にないの?」
「うーん、別に。むしろ燈子さんがなに話すの?ってそれだけが気になるけど。チョコレートのことなんか本当は聞く気ないでしょ?」
「……それも聞きたい事のひとつだもん」
「あっそ」
彼女なりに思うことがあるんだろう。逃げる俺にそこだけ追及する権利もない気がするのでしつこくも聞けない。仕方なく携帯を差し出した。
「駿くんのでかけていいの?」
「あたりまえでしょ、まぁ電話口に女の人が出たら向こうがびっくりするのは同じだろうけど」
「本当に代わったりしなくていいのね?お母さんが話したいって言ったらどうする?」
「俺がかけてない時点で聞いてこないでしょ」
あっさり言ったらまた悲しそうな顔をする。そんな顔をさせたいわけじゃないけれど仕方ない、他に言いようがないんだから。
彼女が何を話すのかは知りたい気もするけど、電話をしている傍にいれるほどメンタルが強くなかった。
「俺、タバコ吸ってていい?」
ダサいけど、逃げる。
「……うん、いいけど……本当にかけるよ?いいの?」
念押しくらい聞いてくるから苦笑い。もう好きにしてくれという気持ちとあきらめの気持ちで頷く。
「ごめんね、任せて。頼りにしてるよ、ママ」
そう言ったら少し頬を膨らませて携帯を耳元にあてた。彼女は本当になかなか肝が据わっていると思う、俺よりもよっぽど逞しい。耳に当てた携帯からコール音が漏れて勝手に胸がざわついた。この電話口の向こうに避け続けた母親がいるのかと思うと勝手に鼓動が乱れる。
夕方にかかってきていた着信。あれはどんな気持ちでかけてきたのだろう。気づかなかったのが本音だけれど避けたと思われているだろうか。
(いや、連絡とりたいって俺から言い出してるんだからそれはないよな)
ベランダに出たら日中には感じない涼しい風が吹いていた。季節はもう夏になろうとしている。
弟の誕生日は確か八月だったな、とぼんやりと思い出した。
緊張や戸惑いはないのか、彼女は大胆にも今晩電話をかけるようだ。
「はやくない?もうかけるの?」
「だって着信あったの今日でしょ?何時ごろ?」
「……定時過ぎた頃?」
「仕事終わるような時間を考えて電話してくれてるんだね、やっぱりそんな非常識さは感じないし、すっごくその時間まで待ってたと思うよ?お母さん」
なぜ会ったことも話したことさえない人物のことをそんな風に解釈できるのか謎でしかない。
「お母さんってお名前何て言うの?」
「――美羽さん」
「漢字は?」
この会話いる?また意味を考えてしまうけどどうせ言ったってまた言い返されるだけだから無駄なことは言わず素直に答えることにする。
「美しいの羽」
「素敵なお名前、なんかあれかな二人の名前は風とか軽やかなイメージをしてつけられてるのかなぁ、駿くんも颯くんもそんな感じじゃない?」
勝手に想像して頬を染めている彼女が不思議でならない。名前のことなんか考えたこともない、そんなこと意識したこともなかった。
「お父さんは?」
この流れだと聞くんだろうなとは思っていたが案の定聞く。彼女の知りたい精神はどんどん溢れてくるようでもう止めれる気がしなかった。
「――昇、昇降の昇」
「お父さんが一文字で二人も一文字に合わせられたのかな、素敵だね」
彼女がこんなに想像力がたくましいとは思わなかった。思い込みがすごい。女の子は想像や妄想が少し強めにあるのは付き合ってきた子たちにもよくあったからさほど不思議ではないけれど、彼女がこんなにいろんなことを想像するタイプなのは知らなかった。
(名前の由来とか、それこそ考えたところでなんの意味も見出せないし必要性を感じない、相手を知る情報にしては内容がしょうもなさすぎないか?)
「伝えてほしいこととか本当にないの?」
「うーん、別に。むしろ燈子さんがなに話すの?ってそれだけが気になるけど。チョコレートのことなんか本当は聞く気ないでしょ?」
「……それも聞きたい事のひとつだもん」
「あっそ」
彼女なりに思うことがあるんだろう。逃げる俺にそこだけ追及する権利もない気がするのでしつこくも聞けない。仕方なく携帯を差し出した。
「駿くんのでかけていいの?」
「あたりまえでしょ、まぁ電話口に女の人が出たら向こうがびっくりするのは同じだろうけど」
「本当に代わったりしなくていいのね?お母さんが話したいって言ったらどうする?」
「俺がかけてない時点で聞いてこないでしょ」
あっさり言ったらまた悲しそうな顔をする。そんな顔をさせたいわけじゃないけれど仕方ない、他に言いようがないんだから。
彼女が何を話すのかは知りたい気もするけど、電話をしている傍にいれるほどメンタルが強くなかった。
「俺、タバコ吸ってていい?」
ダサいけど、逃げる。
「……うん、いいけど……本当にかけるよ?いいの?」
念押しくらい聞いてくるから苦笑い。もう好きにしてくれという気持ちとあきらめの気持ちで頷く。
「ごめんね、任せて。頼りにしてるよ、ママ」
そう言ったら少し頬を膨らませて携帯を耳元にあてた。彼女は本当になかなか肝が据わっていると思う、俺よりもよっぽど逞しい。耳に当てた携帯からコール音が漏れて勝手に胸がざわついた。この電話口の向こうに避け続けた母親がいるのかと思うと勝手に鼓動が乱れる。
夕方にかかってきていた着信。あれはどんな気持ちでかけてきたのだろう。気づかなかったのが本音だけれど避けたと思われているだろうか。
(いや、連絡とりたいって俺から言い出してるんだからそれはないよな)
ベランダに出たら日中には感じない涼しい風が吹いていた。季節はもう夏になろうとしている。
弟の誕生日は確か八月だったな、とぼんやりと思い出した。
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