あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/高宮過去編

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 いつも一方的に送られてくる父親からのメールに初めて自分から投げた。

【母と連絡がとりたいから連絡先を知りたい】


 色々迷って何回も文面を書き直してどれも納得できなくて、結局送ったメール文がこれだった。彼女や結婚のこと、いろんなことを書いてもどれもなんだか宙に浮くような感じがして文字に出来なかった。
 文面は自分の気持ちを必ず相手が同じように受け取ってもらえるものでもない、勝手に独り歩きされるのは困る、だから伝えたい一番の内容だけを送った。

 打ち合わせが長引いて定時を過ぎていた。事務所に戻る前に喫煙ルームに寄ってタバコを咥えてなんとなく携帯を取り出したら知らない番号から着信がある。


(え、もう?)


 しかもいきなり着信がかかってきている、気持ちが全然追い付きそうにない。


(え、え、いきなりかけてくんの?怖いな、これがあの人の番号ってこと?)


 受信メールを見ても父親から返信がない。


(えー、返信ないとかなに、おかしいだろー、てか番号教えてくれるだけでいいのになんで向こうからかけてくんだ、こっちに主導権を握らせろ)


 銜えタバコのまま携帯に夢中だった俺に声をかけてきたのは和泉だった。


「火、ついてないけど」
「あ、あー、あぁ……」
「なに?火ないの?」
「あるけど、それどころじゃなかった」
 そう言ったら自分の分と一緒に俺のにも火をつけてくれる和泉。友達が多い方ではないけれど、職場で気の合うヤツらと知り合えたのはラッキーだったと思う。
 無駄なことは言わず、一定の距離があるのに分かり合える仲、それはなかなか手にいれたくても縁がないと得られない。


「結局どーなった?家族会議」
「あー、まだ半逃げ」
「久世とか佐藤ってさー、家族とこじれた経験が絶対なさそー」
 それはなんとなく思う。


「俺も家族とかマジめんどーって思うから高宮の気持ちよくわかるしなおさら結婚興味なくなった」
「親とこじれてんの?」
「俺は親って言うより兄貴かなー、マジ無理」
「へぇ、和泉って弟なんだ」
 でもなんかそんな感じ。世渡り上手だし下特有の甘え方と器用さを持っている気がする。


「兄弟ってすげーうざいわ」
 和泉の言葉に颯を思い浮かべる。俺の記憶の中にいる颯はもうずっと幼くて子供のころのまま。弱弱しくて、いつも咳き込んで母親にごめんねと泣いて謝っていた。


「ぼくのせいでごめんね、いつもごめんね」


 そうやって母親に謝り続ける弟がやたら鼻について俺を苛つかせた。その言葉を言ったところで誰も救われない、事態が変わるわけでもないし、お前の咳は止まらない。


(気休めみたいな言葉を吐くな)


 いつも俺は咳き込む弟にそんな乱暴な気持ちを抱いて見つめていた。
 ぜぇぜぇ吐き出す息の中で見つめる弟の瞳は潤んでいた、幼い弟はその瞳でまっすぐ俺を見つめながら純粋な声で問いかけてきた。


「お兄ちゃんは、僕のことが嫌いなんでしょ」


 嫌いになれたら楽だった、なのに弟は俺にそう言ったのだ。



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