87 / 145
続編/燈子過去編
3
しおりを挟む
「母が倒れて……その時の気持ちやこれからの不安を聞いてもらった。別に何って解決してもらえたわけじゃない、でも話を聞いてもらえて誰かに打ち明けられる気持ちを知ったら楽になれて、勝手に織田さんのこと信頼するようになった。連絡先を交換して連絡をくれて、最初は本当にそれだけの関係。滅多に二人で会うこともなかったし何ってなかった、でも……」
気づいたら私は好きになっていた。
織田さんを思わない日がないくらい、考えるようになっていた。
私にとっては信頼できる良き相談相手、でも向こうからしたら私はなんなんだろう。お金にもならない、得にもならない女とのメールのやりとり。
私たちの関係は一体なんなのか。
それだけが引っかかっていたが、織田さんから連絡が途絶えることはない。
いつまでもこんなふうに甘えていて良いんだろうか、私だけが得をしている気がして居た堪れなくなってもう私は大丈夫、織田さんと色々話が出来て心に余裕が持てた、だからもう平気ですと終わりのメールを入れた。
すると織田さんはすぐに会いにきた。
「大丈夫ってなにが?平気ってどう言う意味?」
言葉の通りだ。もう私の不安や悩みを聞いてもらう必要はない、私はもう大丈夫、そう伝えたら織田さんが言う。
「僕はもう大丈夫じゃないんだけど」
「え?」
「君からくるメールを待っているのにやめられたら平気じゃない」
それはどう言う意味ですか、そう聞いたら言葉の通りだと返してくる。
「好き以外ないだろう?もうずっと、君のことが好きなのに、離れていかれたら困る」
その日を境に変わり始める私たちの関係。もっと会うようになって、手も繋ぐようになった。私を燈子と呼び、私は真司さんと呼ぶようになった。
一年ほど付き合って、また梅雨の季節がやってきた。ブルートパーズを見つけてくれた時のような霧雨のよく濡れる雨が降った日を二人で思い出して笑っていたら、織田さんは言ってきた。
「結婚しようか」
今すぐじゃなくても、いつか。
遠くない未来に一緒にいれる約束をしよう、そう言った。
「はい」
私はそれに頷いてそのいつかを夢見て待っていた。
「でも知らなかったの……織田さんに婚約者がいたこと」
「婚約者?」
「取引先のクライアントで、有名な社長さんの娘さんだった、その人が私のところにきたの。人の婚約者を盗むなって」
突然のことで色々気持ちが追いつかなくて本人に確認するまでもできないくらい気持ちが落ち着かないときに、その詳しい詳細は週刊誌で知ることになった。
メディアにもよく出ている社長だから娘も顔を出していた。その娘が記事に堂々と載っていて婚約と発表されていた。相手は顔も名前も晒されてはいない一般人、けれど記されている年齢と職業で勝手にその人物の正体がわかる。
”結婚しよう”という発言だけで婚約になるかは疑問だと言う。婚約とは夫婦になる身分関係を成立させることを約束する行為、これが成立したというためには、将来婚姻することについての確実な合意が客観的に認められる必要があるらしい。
私と彼の婚約は付き合った二人のただの口約束、誰も証明することのできないもので、しかも漠然とした未来での約束で。しかし、こんな風に大々的に発表された婚約は客観的合意が得られた正式な婚約であり、私は婚約している人にちょっかいをかけている女という立場になってしまったのだ。
気づいたら私は好きになっていた。
織田さんを思わない日がないくらい、考えるようになっていた。
私にとっては信頼できる良き相談相手、でも向こうからしたら私はなんなんだろう。お金にもならない、得にもならない女とのメールのやりとり。
私たちの関係は一体なんなのか。
それだけが引っかかっていたが、織田さんから連絡が途絶えることはない。
いつまでもこんなふうに甘えていて良いんだろうか、私だけが得をしている気がして居た堪れなくなってもう私は大丈夫、織田さんと色々話が出来て心に余裕が持てた、だからもう平気ですと終わりのメールを入れた。
すると織田さんはすぐに会いにきた。
「大丈夫ってなにが?平気ってどう言う意味?」
言葉の通りだ。もう私の不安や悩みを聞いてもらう必要はない、私はもう大丈夫、そう伝えたら織田さんが言う。
「僕はもう大丈夫じゃないんだけど」
「え?」
「君からくるメールを待っているのにやめられたら平気じゃない」
それはどう言う意味ですか、そう聞いたら言葉の通りだと返してくる。
「好き以外ないだろう?もうずっと、君のことが好きなのに、離れていかれたら困る」
その日を境に変わり始める私たちの関係。もっと会うようになって、手も繋ぐようになった。私を燈子と呼び、私は真司さんと呼ぶようになった。
一年ほど付き合って、また梅雨の季節がやってきた。ブルートパーズを見つけてくれた時のような霧雨のよく濡れる雨が降った日を二人で思い出して笑っていたら、織田さんは言ってきた。
「結婚しようか」
今すぐじゃなくても、いつか。
遠くない未来に一緒にいれる約束をしよう、そう言った。
「はい」
私はそれに頷いてそのいつかを夢見て待っていた。
「でも知らなかったの……織田さんに婚約者がいたこと」
「婚約者?」
「取引先のクライアントで、有名な社長さんの娘さんだった、その人が私のところにきたの。人の婚約者を盗むなって」
突然のことで色々気持ちが追いつかなくて本人に確認するまでもできないくらい気持ちが落ち着かないときに、その詳しい詳細は週刊誌で知ることになった。
メディアにもよく出ている社長だから娘も顔を出していた。その娘が記事に堂々と載っていて婚約と発表されていた。相手は顔も名前も晒されてはいない一般人、けれど記されている年齢と職業で勝手にその人物の正体がわかる。
”結婚しよう”という発言だけで婚約になるかは疑問だと言う。婚約とは夫婦になる身分関係を成立させることを約束する行為、これが成立したというためには、将来婚姻することについての確実な合意が客観的に認められる必要があるらしい。
私と彼の婚約は付き合った二人のただの口約束、誰も証明することのできないもので、しかも漠然とした未来での約束で。しかし、こんな風に大々的に発表された婚約は客観的合意が得られた正式な婚約であり、私は婚約している人にちょっかいをかけている女という立場になってしまったのだ。
13
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる