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続編/燈子過去編

割れてしまった心の隙間(燈子)―1

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 人との出会いはどんな風に転んでいくかわからない。運命だと思っていてもそんなことはないことや、何気なくすれ違っている人と深い関わりになることもある。


 私とその人、織田さんはまさにそのどちらとも言えた。
 ただ本当に偶然が起きた出会いで知り合って、その出会いに運命を感じたけれど結局運命なんかはどこにもなかった。再会したあの時に夜19時に駅のローターリーで待ち合わせとだけ約束された。なんとなく並ぶベンチに腰かけて待っていたら目の前に黒の高級国産車が横付けされて身構えたら窓が開いて中に知った人が乗っていた。歩いてくるものだと思っていたからまずは驚いてそのまま動けずにいたら急かすような声をかけられる。


「ここ路駐出来ないんで早く乗って下さい」
 そんな風に言われたら慌てて立ってしまって扉に手をかけて助手席に乗り込んだ。


「すみません、遅くなって」
「いえ、お車とは思わなくて……びっくりしました」
「基本車移動です、むしろこの間がレアでした。だから美山さんとあんな風に会えたのは奇跡に近いですね」


 ――奇跡、そんな言葉を軽々しく言わない方がいい。


 その時はそう思った。
 こんなスマートで知的で落ち着いた素敵な人が高級車の助手席に乗せた女に吐くセリフではない。だれでもときめくし、だれでも恋に落ちてしまう。恋愛経験が多い方ではない私は簡単にときめいてしまったし、変に勘違いまでしかけそうだった。


「元気そうでよかったです」


(え……)


「気になってました、前に別れるときに泣ていたから。ピアスを失くして見つかったから泣いたわけではないですよね。あの涙はそんな感じはしなかったから」
 織田さんの性格を映すように丁寧な運転は乗り心地も良く静かな車内でそんな言葉を落とされて気持ちがどんどん揺れ出した。


「あの時は……ご迷惑をおかけしたうえにあんな恥ずかしいところまで見せてすみませんでした」
「違います、ごめんなさい。謝らせたくて言ったんじゃないんですよ?ただ……」
 信号が黄色になって速度が落ちて、赤になったから車が静かに止まる。車内の中もひどく静かだ。織田さんはまっすぐ前を見たまま一瞬言葉を切ってぽつりとこぼす。


「本当に……気になっていました」



 ――パリン、と音がしてハッとした。

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