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続編/燈子過去編
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割れたのはお揃いのカップ。持ち手が折れてしまった、あっさりと――。
「なんか割れた音したけど大丈夫?」
リビングから席を外していた彼がその音に気づいて戻ってきたら割れたカップではなく私の手を取って心配そうに見つめてきた。
「手、切ってない?破片とか触った?」
「どうしよう……これ、駿くんと暮らすときに一緒に買ったカップなのに」
「あー、でも物って壊れるししょうがないよ。それより怪我してないの?」
その通りだけれど、ドライな彼のセリフが今は全然素直に響かない。そんな風に当たり前に受け入れないでほしかった。
壊れるからしょうがない、そんなセリフを今一番聞きたくない。
「やだ……」
「え?」
どうして壊れるの?
どうして今持ち手が外れて折れてしまうのか。粉々にもならず、綺麗に外れてしまった持ち手が余計に悲しくなった。
まるであの時、あっさりと手を離されたときのようだ。
あんな風にまた彼にも手を離されてしまうのか、その不安がいきなり目の前に襲ってきて怖くなった。
「買いに行ってくる」
「え?今から?」
「買ってくる」
「待って待って、どうした?」
腕を掴まれて彼の顔がまっすぐ向かい合って見つめてくる。その瞳に見つめられると心の中を見透かされそうでつい反らしてしまったが、彼はそれを許してくれない。反らした顔を一瞬で掴まえた手が頬に添えられている。
また深く見つめられて名前を呼ばれた。
「燈子さん?」
「……大事なの、大事にしてた……なのに私……」
「だからって今すぐ買いに行かないといけないほど大事なこと?」
「大事なの!私には……」
壊れてほしくないから、当たり前のものが変化するのが怖い。結局その気持ちがずっと私を縛り付ける。
そんな風に割れたカップ一つに執着する私に彼が異変を感じるのなんか当たり前だった、それでも気持ちが波立ってとても冷静でいられない。
「お願い、失くしたくないの……駿くんのカップがないと嫌……」
そこまで言ったら彼が深いため息をこぼして気持ちを察してくれたようだけれど告げてくる言葉は冷静だった。
「気持ちは分かったし、同じやつをちゃんと買いに行こう。でももう今日は20時も回ってるし買いに行くような時間じゃないよね?明日、仕事終わりに燈子さんの店に寄るからそこで一緒に買いに行く、それじゃダメ?明日でも待てない?」
「……待てる」
「じゃあ、決まり。明日は残業もせずすぐに帰るよ。店で待ってて?」
「……はい」
彼に諭されて少し落ち着いた私に安堵したようなため息をこぼして頭を撫でられたと思ったらそのまま抱きしめられる。彼の腕の中に包まれて目頭が熱くなった。
もう一人では生きていけない。
彼とずっといたいから、今のまま波風も立てず幸せに暮らして生きたい、それだけなのに。
織田さんは今さら私にどうして会いたいのか。あんな風に別れた私に何を話すつもりなんだろう。
会いたくない、そう思っていても記憶がどんどん呼び起こされて気持ちが荒れ始める。
気になりだすと止まらない、もし彼が先に織田さんと何かを話して私との関係に感づいてしまったらと思ったら夜も眠れなくなった。
「……連絡を、取ろうかと思う」
「え?」
麻里奈にポロリと打ち明けたら驚いた表情。
「……会うの?」
「会わない、会えないけどどうして突然メールをしてきたのか……無視してたらいいって今でも思っているけど不安で。駿くんとどんな風に付き合いがあるのかわからないから余計に……」
「うん、そうだね。燈子は今幸せに暮らしているからもうやめてってちゃんと言った方がいいよ。そうしないと燈子が不安でしょうがないんでしょ?」
麻里奈の言葉に頷いた。そうだ、私が不安なだけ。
彼がじゃない、私が楽になりたい、この悩みから解放されたい。
織田さんとの過去をちゃんと終わりにさせたい。蓋を開けたら自分の気持ちだけで嫌になったがそれが私の本音だったのだ。
「なんか割れた音したけど大丈夫?」
リビングから席を外していた彼がその音に気づいて戻ってきたら割れたカップではなく私の手を取って心配そうに見つめてきた。
「手、切ってない?破片とか触った?」
「どうしよう……これ、駿くんと暮らすときに一緒に買ったカップなのに」
「あー、でも物って壊れるししょうがないよ。それより怪我してないの?」
その通りだけれど、ドライな彼のセリフが今は全然素直に響かない。そんな風に当たり前に受け入れないでほしかった。
壊れるからしょうがない、そんなセリフを今一番聞きたくない。
「やだ……」
「え?」
どうして壊れるの?
どうして今持ち手が外れて折れてしまうのか。粉々にもならず、綺麗に外れてしまった持ち手が余計に悲しくなった。
まるであの時、あっさりと手を離されたときのようだ。
あんな風にまた彼にも手を離されてしまうのか、その不安がいきなり目の前に襲ってきて怖くなった。
「買いに行ってくる」
「え?今から?」
「買ってくる」
「待って待って、どうした?」
腕を掴まれて彼の顔がまっすぐ向かい合って見つめてくる。その瞳に見つめられると心の中を見透かされそうでつい反らしてしまったが、彼はそれを許してくれない。反らした顔を一瞬で掴まえた手が頬に添えられている。
また深く見つめられて名前を呼ばれた。
「燈子さん?」
「……大事なの、大事にしてた……なのに私……」
「だからって今すぐ買いに行かないといけないほど大事なこと?」
「大事なの!私には……」
壊れてほしくないから、当たり前のものが変化するのが怖い。結局その気持ちがずっと私を縛り付ける。
そんな風に割れたカップ一つに執着する私に彼が異変を感じるのなんか当たり前だった、それでも気持ちが波立ってとても冷静でいられない。
「お願い、失くしたくないの……駿くんのカップがないと嫌……」
そこまで言ったら彼が深いため息をこぼして気持ちを察してくれたようだけれど告げてくる言葉は冷静だった。
「気持ちは分かったし、同じやつをちゃんと買いに行こう。でももう今日は20時も回ってるし買いに行くような時間じゃないよね?明日、仕事終わりに燈子さんの店に寄るからそこで一緒に買いに行く、それじゃダメ?明日でも待てない?」
「……待てる」
「じゃあ、決まり。明日は残業もせずすぐに帰るよ。店で待ってて?」
「……はい」
彼に諭されて少し落ち着いた私に安堵したようなため息をこぼして頭を撫でられたと思ったらそのまま抱きしめられる。彼の腕の中に包まれて目頭が熱くなった。
もう一人では生きていけない。
彼とずっといたいから、今のまま波風も立てず幸せに暮らして生きたい、それだけなのに。
織田さんは今さら私にどうして会いたいのか。あんな風に別れた私に何を話すつもりなんだろう。
会いたくない、そう思っていても記憶がどんどん呼び起こされて気持ちが荒れ始める。
気になりだすと止まらない、もし彼が先に織田さんと何かを話して私との関係に感づいてしまったらと思ったら夜も眠れなくなった。
「……連絡を、取ろうかと思う」
「え?」
麻里奈にポロリと打ち明けたら驚いた表情。
「……会うの?」
「会わない、会えないけどどうして突然メールをしてきたのか……無視してたらいいって今でも思っているけど不安で。駿くんとどんな風に付き合いがあるのかわからないから余計に……」
「うん、そうだね。燈子は今幸せに暮らしているからもうやめてってちゃんと言った方がいいよ。そうしないと燈子が不安でしょうがないんでしょ?」
麻里奈の言葉に頷いた。そうだ、私が不安なだけ。
彼がじゃない、私が楽になりたい、この悩みから解放されたい。
織田さんとの過去をちゃんと終わりにさせたい。蓋を開けたら自分の気持ちだけで嫌になったがそれが私の本音だったのだ。
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