あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

文字の大きさ
上 下
55 / 145
番外編

2

しおりを挟む
 ぎゅっと彼に包まれた。

「燈子さんは俺のお母さんになりたいんですか?」
「……なりたいかなりたくないかだと、なりたいけど……それは例えみたいなもので、本気でお母さんになりたいわけじゃないですよ?」
「燈子さんみたいな人が母親だったらこんな風に育ってなかっただろうなぁ」
「いやいや、そんなに干渉もされずそこまで自立してしっかりした人になってる高宮さんが私みたいな人間に育てられてプラスになったとは思えませんけど」
「俺は中身が空っぽですよ、それを今燈子さんが満たしてくれてる」


(え――)


「自分で詰め込めるものは吸収してこれたけど、与えてもらえるものには飢えてるっていうか……それこそ母親からの愛情とかそういうのに疎いから根本的に足りてないんでしょうねぇ、満たされてこなかったのはそこが原因だったのかも、って今気づきました」
 そう言ってニコッと微笑んで頬に手が触れてくる。


「なんで燈子さんに本能的に惹かれて離したくなかったのかやっと理解できましたよ。この甘い匂いは母親みたいな愛情が俺にあったからなんですね」
 頬に触れた手が首筋に回って彼がまた耳の裏あたりに鼻を寄せてスンッと匂いを嗅いでくる。この行為も最初は本気で恥ずかしくて何度もやめてほしいとお願いしたけど聞いてくれることはなく、慣れたらもう抵抗もなくなった。息をするくらい自然に私から感じるらしい甘い匂いをいつも心地よさそうに嗅いでいるからもう咎めることもしなくなった。


「でも俺は燈子さんに母親にはなってほしくないな」
「え?」
「そりゃそうでしょ。その気持ちは嬉しいですけど、俺はあなたに母親を求めたことはないですから」
「――ですよね」


(そりゃそうだよね……ショックを受けるべきではないけれど内心はショック)


 その気持ちを読んだのか耳元でくすくす笑うから恥ずかしくなる。


「ごめんなさい」
「謝るところじゃないですよ、そういう意味じゃなくって……」
 抱きしめられていた体が引きはがされて、まっすぐに見つめられてそれを見つめ返した。


「一番そばにいれる人になれるでしょ?燈子さんなら」
「……え?」
「今は仕事のこともあるからそんなことは考えられないのかもしれないけど、落ち着いたら考えてくださいね」


(それって――)



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...