あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/燈子過去編

愛おしいだけの夜(高宮)―1

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 玄関の扉が開いたのは21時前だった。俺が遅くなる日はだいたい21時は回るからそれまでに帰ってこようと思ってくれていたんだろう、俺が先に家にいたから驚いていた。

「ごめん、遅くなっちゃった。思ってたより早く帰れたんだね、ごめんね」
「全然いいよ、おかえり。楽しかった?」
 そう聞くと少し戸惑いつつも頷く。心なしか表情が硬いのは気のせいか。逃げるように洗面所に行くから何となく気になって追いかける。


「燈子さん?なんかあった?」
「ううん、なんにもない」
 手を洗いながらそう答えるけれど俺の方は全然見ない。手を洗っているだけ、そう言われたらそうなんだけど、いちいち彼女のことには敏感に反応してしまう俺としては気になるとなんとなく勘繰ってしまう。
 丁寧に泡立てて指先を洗っているその後ろ姿にくっついて腰に腕を回すとぎゅっと抱きしめた。


「楽しかった?何食べてきたの?」
 同じことを聞いた。さっきは頷いただけだけど、今度はためらいながらも言葉を落とす。

「楽しかったよ……イタリアンのお店で、パスタ食べた。麻里奈がワイン頼んで私も一杯だけ……」
「ワイン?珍しいね、酔ってない?」
「――ちょっとだけ、フワッとはしてる」
 ぽつぽつ話し出してくれるからそこまで気にすることはないかな、そんな風に思ったら洗い終わった手をタオルに伸ばして少し身をよじる。腕の拘束を緩めたら恥ずかしそうに見上げてくるから可愛くて。
 キスしようと顔を近づけたらタオルで押し返された。

「うがい、してないから」
 素直にうがいを待っているとまた恥ずかしそうに見上げてくるから待てのサインが解かれたのがわかる。


(俺、完全に躾けられた忠犬)


 以前に燈子さんにゴールデンレトリバーみたいだと言われた。

 犬扱いは初めて受けたが不思議と不快感はなかった、それよりもそう思われる自分に衝撃の方が大きかった。ガキ扱いされていると思っていたらまさかの犬扱い、自分の崩壊がよくわかる。もはや人でもない俺にでも彼女は頬を染めて可愛いと抱きしめてくるからもうどう思われてもいい、むしろなんでもいい。

 彼女の目に俺が映って俺のことで頭がいっぱいになるのならなんにでもなる。


「ん――」
 キスに応える彼女の瞳は熱っぽくて、やはりどこか憂いを感じる。でもそれはキスのせいか、なんとなく感じた違和感の正体は掴めない。ジッと見つめたらそれを見つめかえされて体の奥が熱く疼き始める。抱きたいな、このままさせてくれるかな、そんなことをぼんやり考えてまた口に触れようとしたら……。


「駿くん、ごはん何食べた?」
「え?」
 いきなり雰囲気をぶち壊された。



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