オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

文字の大きさ
19 / 39
ガリア王国王宮編

1. 新生ロビンバル

しおりを挟む
 オレは今とっても悩んでいる。
 見るべきか、入るべきか、それが問題だ。

 オレはオコジョに生まれ変わった元日本人だ。生まれてすぐ冒険者で魔法使いのご主人フレッドことフレデリクに保護されて使役獣になった飼いオコジョだ。今はご主人の生まれたミリアル王国の隣国、ガリア王国で、治癒魔法の使える可愛い使役獣として活躍している。ご主人は事情があって籍は抜いたけど元貴族なので、オレは手間もお金もかけてご主人の家族にも可愛がられている。いい人に拾ってもらえてラッキー。

 そんなオレには悩みがある。
 ご主人たちはガリアで仲良くなった『ロビンバル』というパーティーに加わったんだけど、そこにはもともとジルというオオカミの使役獣がいた。オオカミって言われてるけど、オレから見るとご主人さま大好きなハスキー犬だ。オレはこのジルに気に入られちゃって気に入られちゃって、毎日べろんべろんされている。愛情表現って分かってるんだけど、綺麗好きな元日本人としてはお風呂に入りたくなっちゃうのだ。
 けれど、こちらでお風呂のついている部屋は、リビングと寝室が別になっているようなとても高級な部屋だ。

 つまり、お風呂を選ぶと、オレは寝室から追い出されて、ご主人の恋人であるキースとの夜のむふふを覗けない。普通の宿にするとお風呂がついていない。
 これは由々しき事態である。

 こらそこ、そんなことかって言うな。
 恋人のキースと上手く行っているか、ちゃんと身も心も満たされているか確認することは、ご主人の心身の健康のために、とってもとっても大切なオレの使命なんだ。趣味でやってるわけじゃないよ。ちょっとはオレの楽しみのためだけど、ほんのちょっとだけだよ。


 そんな深い悩みを抱えるある日、解決策が目の前に提示された。
 ジルの飼い主さんであるリュードは水魔法が得意だが、なんとリュードはお湯を出せるのだ。
 野営中、ジルにべろんべろんされた後にご主人に水で洗ってもらっているのを見たリュードが、お湯出せるよ?と何でもないことのように言ったのだ。早く教えてほしかった!
 ご主人は上級魔法をバカスカ撃てる代わりに、細かい調整が苦手だ。お湯にしようと火魔法を合わせたら、水が蒸発しちゃうくらいには苦手だ。ノーコンって言ってあげないで。オレも心の中では思ってるけど、魔力量が多いから調整が大変なんだよ、多分。
 ご主人にオレ用の桶を買ってもらったので、リュードがいればどこにいてもお風呂に入り放題だ!ロビンバルに入って良かったね!

 ってことで、いつもの宿の庭で、オレとジルのお風呂タイムだ。
 ジルは、洗ったら宿の部屋に入れるぞ、とリュードに言われてやる気満々だ。ジルは大きさもあって、宿の部屋には入らず、庭で過ごしていた。でもオレがいつもご主人と一緒に部屋に入ってるのが羨ましかったらしい。
 ここの宿、最初に2倍払えば部屋に使役獣を入れてよくて、部屋を汚したりしなければ退室時に半分返ってくるのだ。だけど、森を駆け回って泥だらけのジルを部屋に入れるのははばかられるし、保証金も返ってこなさそうだからね。

「キリくん、熱くない?」

 お湯の温度はばっちりだ。リュード、流石だね。
 ご主人がまず桶に張ったお湯で石鹸をつけて洗ってくれるけど、泡風呂みたいになっている。あ、そこもうちょっと、そこ痒いの、うんうん、そこそこ。
 オレの身体を洗う石鹸は、オレ用にお母さんが用意してくれたもので、ご主人が使っているものとは違って低刺激らしい。貴族ってすごいよね。

「石鹸かよ、すげえな。いくらするんだ」
「母がキリのために用意したものだから値段は知らない。ジルにも使ってくれ」

 洗ってすすいだら、新しくリュードにお湯を入れてもらった桶の中で、泡まみれにされているジルを見ながら、念願のお風呂タイムだ。ああー、きもちいー。
 石鹸という高級品にちょっとしり込みしていたリュードも、貴族ならこんなの大したことないかって開き直ってジルに使っている。
 大丈夫だよ、オレのお友達を綺麗にするのに使ったって言ったら、きっとお母さん怒らないから。

「泡が茶色になってるな。ジル汚れてたんだなあ」
「尻尾を洗うぞ」
「あ、やめろ!こらっ!」

 大人しく洗われていると思ったら、ジルがぶるぶるして茶色い泡が飛んできた!もう、お湯が汚れちゃうじゃないか!
 洗っていたキュリアンとブノワは泡まみれになって笑っている。

 そんな風にわちゃわちゃしていたら、宿に泊まっている他の冒険者も見学にきた。「イタチがお湯につかってるぞ」とか「あいつら石鹸使って俺らより贅沢だろ」とか聞こえるけど、気にしない、気にしない。


 ちょうどいいので、ご主人たちが加わった、新生ロビンバルのメンバーを紹介するね。
 リーダーは剣士のキュリアン。しっかり者のリーダーだ。コミュニケーションをとるのが上手だからリーダーをやっているらしい。ジルはキューと呼んでいる。
 もう1人の剣士はブノワ。寡黙な剣士だけど、ジルには優しいからきっともふらーだ。今も優しい手つきでジルのことを洗っている。オレのことは遠慮して触ってこないけど、ときどきおやつをくれるいい人だ。
 ジルの飼い主さんがリュードで、魔法使い。攻撃はあんまりだけど、水の魔法が得意で、森の中でも飲み水に困らない。ジルを溺愛してる。
 ジルは風魔法をまとって敵に突っ込んでいく攻撃力もすごいけど、ご自慢の耳と鼻で魔物を見つける能力がすごい。索敵っていうんだよね。今までは見つけても細かく伝えられなかったけど、今はオレが通訳するから、魔物がいるってことだけじゃなくて、数や大きさ、どっちに向かっているかも伝えられるようになった。ロビンバルがオレたちと組みたがった一番の理由はここなんじゃないかとオレは思ってる。
 そこに剣士のキースと、攻撃魔法撃ちまくりのご主人と、治癒なら任せてのオレが加わった。
 この5人と2匹、最強パーティーじゃない?

 そしてそんなオレたちのパーティーに加わりたいと熱烈にアピールするやつがいる。そう、オレのファンクラブ会員番号1番のデレマッチョだ。いや、自分のパーティーどうすんだよ。
 今もちょうど休暇で街にいたらしくって、オレたちのお風呂タイムを聞きつけてやってきた。オレたちのために、もともと定宿にしていた宿からここに宿を変えたんだよ。パーティーメンバーもリーダーの暴挙に口では文句を言いながらも、裏ではたまにはリーダーのために一緒に討伐行ってくれと言ってくる、仲良しパーティーだ。

「キリちゃん、ショコラとクッキーどっちがいいかな?」
「クッキーがいいそうだ。いつもすまないな」

 デレマッチョがクッキーをくれたので、お風呂に入ったままクッキーを食べる。うまうま。美味しいクッキーに温かいお風呂、至福の時だね。
 オレとジルは、デレマッチョからは直接食べ物を貰ってもいいと、ご主人たちの許可が出ている。パーティー以外の人はダメだけど、デレマッチョは別格なのだ。
 毛が濡れているけど、撫ででもいいよ。デレマッチョとの触れ合いを楽しんでいたら、ジルが突然こちらに向けて走って来た。

「わっ、こら、ジル、待て!」
「ウォフッ!」

 ジルが泡まみれのまま、止めようとするキュリアンとブノワを振り切って、デレマッチョに飛び掛かってべろべろ舐めてる。いつも干し肉くれる人だもんねえ。洗い終わるの待てなかったんだねえ。

「悪い。急で止められなかった」
「構わん。ジルくん、洗うのが終わったらあげるから、ご主人さまの言うことを聞こうね」

 泡まみれになっちゃったのに、顔中ヨダレまみれなのに、デレマッチョが笑顔だ。ジルに言い聞かせている言葉の最後にハートマークがついている気がする。さすが、真正のもふらーだな。
 デレマッチョのパーティーメンバーがそんな自分たちのリーダを見て大笑いしている。
 平和だねえ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

処理中です...