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世界を越えてもその手は 5章おまけ 魔石集め

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◆サネバのギルド

「ユウさん、魔石を拾うのにとても便利なものをお持ちと聞きましたが、見せていただけますか?」
「あ、これですか?」
「なるほど。これでかがまず掴んで、背中の籠に入れるんですね。これは安価ですし、ギルドで用意して貸し出したいのですが、よろしいですか?」
「え、僕の許可はいらないですよ」
「これで魔石の買い取りがはかどります。腰が痛くなるからと拾ってくれないんですよ」


◆カークトゥルス

「アレックスは同じことを繰り返すのがあまり苦にならないのか?」
「子どものころ、毎日農作業だったのに比べれば、なんともない」
「農家の子どもか?」
「問題のある孤児院で、農作業に行かないと食事がもらえなかったんだ」
「ああ、そういえばドガイの教会に逃亡してたな」
「あれは里帰りだ」


◆モクリーク冒険者ギルド長会議

「氷花と獣道がカークトゥルスで消息を絶ったと」
「何があった」
「分からない。2か月の予定で合同で攻略に行ったまま、2か月を過ぎたが戻ってこない。1か月前に軍が中層の最後で会ったときは元気そうだったと」
「まだ下層にいるかもしれません。もうしばらく様子を見ましょう」
「食料がもつか?」
「ユウさんはかなり慎重です。水も食料もポーション類も、おそらく1年分くらいは持っていると思います」
「ならば何か理由があって戻ってこないのかもしれないな」

「氷花と獣道が戻った。それで78個のマジックバッグが買取に出された」
「は?78?」
「内訳は?」
「下層1つ目で15、全て容量中、下層2つ目で63、容量中の時間停止が1、容量小の時間停止が5、容量中の時間遅延が3、残りは容量大だ」
「なぜそんなに下層2つ目が?」
「獣道が4人だけでフロアボスを倒せるようになるまで粘ったらしい。それで予定を伝えていたのを忘れていたと謝っていた」
「それに氷花が付き合ったのか」
「氷花は合間に魔石を集めていたようで、買取には出さなかったが、魔石大を1000個以上集めたようだ」
「アイテムボックスがあるとやることが派手だな」
「よくユウさんが付き合いましたね。ダンジョンはお風呂に入れないのがイヤだと言っていましたが」
「この後温泉に行くそうだ。その後に王都に買い物に行く予定があるそうなので、急ぎでなければ王都までのマジックバッグの運搬を請け負ってくれる」
「サネバの軍が欲しいというもの以外は、すべて王都へ送ってもらいましょうか。西の方は先日のゾヤラで氷花が売ったものがあると思いますが、要望はありますか?」
「商会から入れば買うという話は入っていますが、それは王都でも同じでしょう」
「こちらも貴族から時間遅延が欲しいという話は入っているが、王都でいいだろう」
「では、サネバの軍と調整して残りは氷花に王都ギルドへ運んでもらってください。こちらでも軍に話は通しておきます」


◆モクリーク王都の軍本部

「ギルドマスター、何かあったのか」
「氷花と獣道がカークトゥルスを攻略して帰ってきました」
「そうか。消息を絶ったと噂が流れていたそうだが、無事でよかった。それでまたとんでもないものを持って帰ってきたのか?」
「いえ、今回は普通ですが、大量に。時間遅延等のない容量大が54個」
「……、彼らは何をしていたんだ?」
「下層2つ目のフロアボスを獣道が単独で倒せるまで粘ったようです」
「それは、サネバにいる軍に発破をかけなければならないな」
「サネバの軍で使うのであれば、容量大を5つ融通しますが」
「もう少し回してもらえないか。あふれにも使いたいのだが」
「サネバの軍が効率よく攻略できるようになれば手に入るでしょう」
「そうだが」
「いずれ軍が攻略した暁には同じ量をギルドに売ってくださると約束してくださるなら、あと15は軍に回しましょう」
「残りはどうするんだ?」
「オークションにかけます」
「貴族がこぞって参加するな」
「大手商会もですね」


◆モクリーク中央教会

「珍しい方がいらっしゃいましたね」
「大司教様、お忙しいところ申し訳ございません。内密にお話がありまして」
「なんでしょう。お力になれるといいのですが」
「氷花が他のパーティーと協力して、カークトゥルスより大量のマジックバッグを持ち帰りました。全部で78個になります」
「それはまたずいぶんと多いですね。それと教会が何か?」
「オークションにかける予定ですが、もし教会でご入用でしたらその前に融通いたします」
「それは有難いですが、予算がありませんね」
「お支払いはいつでも。氷花が王都まで運んでくれる予定ですが、おそらく春になりますので、それまでにご検討ください」
「お気遣いありがとうございます。検討いたしますね」

「マジックバッグですか。大司教様、あるとあふれの時に便利ですね」
「物資を運ぶのに欲しいですね。炊き出しも楽になりますし。何とか購入できるようにしましょう」


◆モクリークのとある教会

「お、今日は寄付たくさん入ってるな」
「容量小さいのでもいいから、1枚くらい買えるといいな」
「バッグが入ってるぞ。って中身は空だ。ここはゴミ箱じゃないっての」
「ちょうどいい、袋がいっぱいになったから、そっちに入れて運ぼう」
「あれ?入れたお金どこ行った?」
「え、穴あいてたか?」
「空いてない。あれ?」
「は、これ、もしかして……」

「司教様、大変です!」
「どうしました。騒々しいですよ」
「マジックバッグの寄付にマジックバッグが!」
「落ち着きなさい。何を言っているか分かりません」
「これです。マジックバッグの寄付の箱に、マジックバッグが入ってたんです」
「はい?」
「お金を入れたら、なくなって。でも手を入れてお金どこって思ったら出てきたんです。これってマジックバッグですよね?!」
「ギルドに連絡を。いえ、私がギルドに行きましょう」

 ~ ギルド ~

「いらっしゃいませ。これは、司教様、ギルドにご用事ですか?」
「内密に鑑定していただきたいものがあるのですが……」
「では会議室へどうぞ。鑑定士を向かわせます」

「お待たせしました。鑑定してほしいものがあると伺いましたが」
「はい。あの、これですが、マジックバッグ購入費用の寄付箱に入っていたのですが……」
「失礼します。……、マジックバッグですね。それも、容量大の時間停止です」
「じ、時間停止?!」
「少々お待ちください。ギルドマスターを呼んできますので」

「お待たせいたしました。教会にマジックバッグが寄付されたと聞きましたが」
「はい、このバッグが、マジックバッグ購入費用の寄付箱に入っていました」
「いつですか?」
「3日前に回収したときにはなく、今日回収したときに助祭が見つけました」
「氷花がこの街に来ています。2日前に着きましたので、おそらく彼らでしょう。聞いておきましょうか?」
「いえ、何もおっしゃらなかったということは、聞かないほうが良いのでしょう。ありがたく使わせていただきます」

 ~ 2日前 ~

「あれ、マジックバッグを購入するために寄付をお願いしますって書いてある」
「大量に買い取りに出したのを、ギルドが教会に教えたんだろう」
「小銭しか持ってない。ギルドカードにお金入れてると、こういう時に困るね」
「買い取りに出してないマジックバッグを寄付すればいいだろう」
「確かに。箱に入るかな?クルクル丸めて、入った」
(直接渡せばよかったのに。まあ入ったからいいか)


◆モクリーク王都の冒険者ギルド

「これは薬師ギルド長、いらっしゃいませ」
「急に済まない。ちょっと噂を耳にしたので無理を承知で来させてもらった」
「なんでしょう」
「近々マジックバッグが入ると聞いたが」
「情報源はどちらでしょう」
「教会からだ。ポーションの関係で。私しか知らない」
「ああ、なるほど。それで?」
「1つ、薬師ギルドにも回してもらえないか。ポーションの運搬に使いたい」
「中の時間遅延か、普通の大のどちらがよろしいでしょう」
「いいのか!」
「現場へ運ぶのは冒険者ですので」
「そうだな。あふれに使うポーションはどれも多少時間経過しても問題ないから、大を頼む」
「分かりました。届き次第ご連絡します」
「この200年周期、なんとしても乗り切らねばな」
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