世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 4章 この世界の一人として

14-4. ティグリス君と再会

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「ユウさん、ティガーのみなさんがいらっしゃいましたが、こちらにお通ししますか?」
「ティグリス君! お願いします」

 アルがダンジョンで会って声をかけてくれたティガーのみんなが、教会を訪ねてきてくれた。
 ティガーは僕がアルを戦闘奴隷として購入したときに、同じ宿に泊まっていた三人組のパーティーで、虎の魔獣ティグリスをテイムしているテイマーさんがいる。ギルドによってスキルをバラされてしまった僕たちがすぐに出発できるように、代わりに買い出しをして助けてくれた。
 ブランの正体を知っている彼らは、僕たちの借りているこの部屋の応接室に迎えても問題ない。ウキウキしながら待っていると、三人と一頭が案内されてきた。

「マーナガルム様、お久しぶりです」
「よお、久しぶり。なんかすごいところだな」
「お久しぶりです。ティグリス君も元気そうですね!」

 久しぶりのティグリス君は相変わらず大きくてかっこいい。普段のシルバーウルフに擬態しているブランよりも大きい身体を少し縮こまらせて、ブランを気にしている。

「モクリークはどうですか?」
「上級ダンジョンが本当に多いね。宿を取るのが楽で、助かってるよ」
「ブランも最初のころは入れてもらえなかったんですけど、特別に入れてもらっているうちに、何も言われなくなりました」
「そりゃ、お前らは有名人だからな」

 今ではモクリークのほとんどの宿で、従魔がいる場合には最初に保証金を渡しておいて、退室時に問題がなければ全額返してもらえる、というのが主流だそうだ。僕たちは保証金も取られないけど、それは今まで一度もトラブルを起こしていないのが知れ渡っているからだろう。
 聞きたいことが多すぎて、立ったまま話をしていると、お茶を持ってきてくれたツェルト助祭様と一緒に、あまり見慣れない司教様が部屋に入ってきた。

「突然お邪魔して申し訳ございません。マーナガルム様、可能でしたらそちらのティグリスに、マーナガルム様の加護をもらう前と後で何が変わったかなどを質問したいのですが、よろしいでしょうか?」
「ブラン、いい?」
『構わん』

 ブランの許可が出たので、司教様がティガーの三人に、依頼料を支払うので帰る前に話を聞かせてほしいと交渉している。
 ブランが加護をあげたオウルのウィズ君のご主人は、氷の魔法が使えるようになったこと以外は変わりがないと言っていたけど、すでに冒険者を引退しているので戦闘はしていない。でもティグリス君は氷魔法をメインに戦っているらしいので、氷魔法が使えるようになったこと以外にも違いが出ているか、調査がしたいそうだ。神獣の加護をもらった従魔に関する詳しい資料はないと聞いているから、この機を逃したくないのだろう。交渉が成立して、調査担当の司教様は満足した顔で部屋を出ていった。

「もしかして、加護をもらったのって、あの宿のオウルとティグだけ?」
「はい。あれからはそういう機会もなくて」
「ヴィゾーヴニル様は?」
「リネは、オリシュカさんのご飯が気に入ったみたいで、ブランが加護をあげてなかったらウィズ君にあげるのに、とは言っていましたけど」
「あー、あの神獣様ならありそう」

 アルとダンジョンで会ったということは、リネとも会っているんだから、リネのことも知っていて当然だ。リネはダンジョン内でも美味しいものに夢中なんだな。
 久しぶりに会った挨拶と、オマケの交渉も終わって、やっとソファに落ち着いたけど、ティグリス君の座る位置が気になる。僕の足元に座ったブランから、身体一つ分あけたところにティグリス君が座っているのだ。ブランに構ってほしくして仕方がないと全身で訴えているのに、ブランは全く気にも留めていないので、テイマーさんが苦笑いしている。

「ブラン、意地悪しないで、ティグリス君に声をかけてあげてよ」
『ふん』

 理由は分からないけど、ブランはネコ科を目の敵にしている。でもティグリス君には加護をあげたんだから、心から嫌っているわけではないはずだ。さっき僕がティグリス君を挨拶で撫でたのがいけなかったのかな。
 結局僕の謝罪と、ブラッシングと美味しいご飯の約束で、なんとか機嫌を直してくれたけど、なんでそんなにネコ科が嫌いなのかなあ。

 ブランのすぐ横にぴったりとくっついているティグリス君あらため、名前を呼んでいいと許可をもらったティグ君を見ながら、ソントで別れて以降何があったか、お互いの近況報告だ。と言っても僕たちのあれこれはうわさとして広まっているので、こんなことがあったって聞いたけど、というのを肯定したり訂正したりという感じだ。やっぱりカークトゥルスと、タペラのあふれの渦中にいた話については興味があるようで、身を乗り出して聞いていた。

「王都に来る前に、初めてあふれの対応に参加したけど、モクリークの冒険者は慣れてるな」
「大司教様が、ドガイに行く途中にミンギであふれのあった街の近くを通りかかって、結局指揮を取ることになったとおっしゃってました」
「ギルドと冒険者もだけど、領と教会も対応が早いもんな」

 二百年周期に入る前もあふれはあったが、二百年周期に入ったと言われる今は、毎月どこかであふれが起きている気がする。そのたびに重ねられていく経験は、次のあふれへと活かされているのだろう。
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