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5章 新しい街の建設
5-4. 2本目の魔剣
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結局3日ベッドの住人になり、4日目にやっと普通に動けるようになった。アルの本気を見くびっていた。それとも僕の体力がないのか。両方かな。
翌日からシリウスのみんなとブロキオンに行くので、今日は買い出しだ。起きられてよかった。
「あれ?」
「ユウ、アルと痴話げんかしたんだって?心配して来てみたのに、ギルドでイチャイチャしてたっていうし」
「お久しぶりです。無事仲直りしました」
「みたいだね。前よりべったりだし。ブロキオン、俺たちも一緒に行っていい?アレックスにカークトゥルスの情報も聞きたいし」
シリウスのみんなと買い出しの待ち合わせ場所に行ったら、獣道の4人がいた。
心配してくれたのは本当みたいだけど、ここに来たのはカークトゥルスに行く途中だった。シリウスとばったり会って、明日から僕たちとブロキオンに潜ると聞いて、一緒に行きたいと、ここで待っていたそうだ。
シリウスもアルもブランも、みんないいみたいなので、一緒に行こう。
「痴話げんかだったのかなあ」
「深刻な悩みも、終わってみれば、ただの痴話げんかでしょ」
「コーチェロ、なんか容赦なくなったな」
「だってユウくん、遠回しに言ったって気付かないし。アルさんは甘やかすし」
「アハハッ、坊主よく言った。アレックス、お前も怒られてるぞ」
アルは苦笑しているし、ブランも同意している。なんでふたりとも僕の味方じゃないの。
今日はお日柄も良く、ブロキオンの攻略日和です。
僕はこのダンジョン、正確には最下層に行きたくないけど、ブランが気に入っているからしょうがない。
ダンジョンの入り口で周りから、あいつらより戻したんだなとか、結局元さやかよとか聞こえるけど、気にしない。アルの腕にぴったりくっついて、気にしないったら気にしない。
人がそれなりにいる上層は、向かってくるモンスターのみ倒して、進むことを優先し、中層から本格的にモンスターとの戦闘を始めた。
中層の最初はシリウスも単独で倒せるので、獣道もアルも、あまり手を出さずに見守っている。
シリウスの剣士であるスリナザルくんが使っている剣は、ここのドロップ品を僕たちが売ったものだ。今回いい剣があれば引き取りたいと、頑張っている。
戦闘が終わると、獣道からアドバイスをもらって、次の戦闘で試してみている。こういう真面目なところが、着実にランクを上げている理由なんだろうな。
下層に入ってからは、シリウスも僕と一緒に見学だ。
食事は、セーフティーエリアが空いている中層からは、カーペットを敷いて、真ん中に小さなテーブルを置いて食事を乗せ、カーペットに座って食べるガーデンパーティー形式だ。ハザコアで初めてシリウスと2つのパーティーとダンジョン攻略をした時に、このスタイルを見た冒険者にガーデンパーティーかと突っ込まれて以来、僕はガーデンパーティー形式と言っている。
カーペットはもちろん土足厳禁だし、カーペットに上がる前にクリーン必須だ。
この世界は、食事前に必ず手を洗うというだけで潔癖だと思われるくらい、衛生観念が低い。クリーンの魔法1回で終わるのにだ。
僕たちしかいないセーフティーエリアで、カークトゥルスの攻略情報を話している。
階層、フロアボスとボスの特徴や弱点、ドロップするマジックバッグの種類など、上層はギルドにたくさん情報があるはずだけど、下層はギルドの情報とアルの情報はそんなに変わらないはずだ。
獣道は、容量小の時間遅延があるものと、容量中を持っていて、容量大が欲しいそうだ。
「ユウ、どうした?お前のアイテムボックスに比べたら小さいかもしれないが、容量大は小さい部屋1つくらいは入るから、冒険者にとっては喉から手が出るほどほしいものだぞ」
「Bランク昇格祝いに、シリウスのみんなに容量大のマジックバッグを1つずつあげたんだけど、もしかしてやりすぎだった?」
「まじか?!」
「ユウ、それバレたらシリウスの命が危ないよ?」
「アレックス、お前なんで止めないんだ」
「その時アルはいなかったんだけど、でもアルは容量特大の時間遅延をあげるつもりだったよね?」
「俺は3人に1つのつもりだったんだ」
「どっちにしろ、お前らアイテムボックスに慣れすぎだ」
それからどうやって偽装すべきか、どれに何を入れておくかをみんなで議論して、通常使うものは全て小のマジックバッグに入れて、大のマジックバッグは、非常用の食料や水、予備の予備の武器、日ごろ使わないものなどを入れ、宿の部屋などでしか使わないのがいいだろう、という結論になった。ドロップ品も、人がいない場所でしか大のマジックバッグには入れないほうがいいだろう。
容量大を、容量小として使うという案もあったが、どれくらい入るのか把握していないと、そんなに入るはずがないとバレる可能性があるので、それはボツになった。
カークトゥルスのドロップ品で、今後マジックバッグがもっと出回れば状況も変わるだろうから、それまでは隠しておく必要がある。
「めんどくさくなっちゃって、ごめんね」
「ユウくんの気持ちは嬉しかったよ」
そう言ってキリシュくんが慰めてくれた。コーチェロくんに怒られる訳だ。ほんとごめん。
最下層のボス部屋を前に、シリウスと僕の護衛について、ひと悶着あった。
獣道がひとりは残るべきだと4人でくじ引きし始めたのが、アルと僕はブランがいれば平気だと思っている。
「ブランが結界張ってるから平気だよ」
「は?結界?!」
「ユウくん、それは言ってもいい情報?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
コーチェロくんに冷静に突っ込まれてしまった。このメンバーはすでに知っていると思っていたけど、そういえば言ってない気もする。
結界は空間魔法に属すると言われているが、人には使えない。空間魔法を持っている従魔は今まで報告されていないらしい。
「なあ、ドロップ品の鑑定しているの、ユウのアイテムボックスで分かるのかと思ってたが、もしかして、その、ウルフか?」
「うん。内緒でお願いします」
「なんかいろいろ規格外だと分かったから、護衛は任せた」
獣道のリーダーが強引に話し合いを切り上げた。これ以上触れてはいけないと思ったらしい。こういうところが、獣道のすごいなと思うところのひとつだ。豪快なのに、細やかに気を遣う。
さて、僕がとても入りたくない最下層のボス部屋だ。
ブロキオンのボスは、首なしの馬に乗った首なし騎士だ。何体いるかはその時によって違う。
僕はこの部屋に入りたくないくらい、首なし騎士が嫌いだ。その持ってる頭、腐ってるよね。部屋ごと燃やして火葬してほしい。
ボス部屋に全員入り、扉が閉まったところで、光が集まりボスが現れる。
「ええ?!」
「なんだよこれ!」
「無理だろ!」
獣道のメンバーが叫んでいるが、僕も叫びたい。首なし騎士の団体様がいる。ただでさえ正視したくない見た目なのだ。ほんとやめて。
隣でシリウスの3人が真っ青になっている。分かるよ。
「気持ち悪いよね。なんであんなにうじゃうじゃいるの」
「ユウくん、そうじゃなくて……」
「ブラン、俺たちじゃ全部は無理だ。倒してもらえるか」
『(任せろ)』
アルがブランに助けを求めたけど、前回もブランがここで楽しくなっちゃったんだよな。今回は控えめにお願いしたい。
ブラン曰く、それなりに骨のあるヤツが集団で出るのは珍しい、らしい。なのでブランはここが気に入っている。
ブランは飛び出して行くと、片っ端から、咥えて投げ飛ばしたり、爪から斬撃を飛ばしたりし始めた。
ひゃっはーって言ってそうなくらい楽し気に、首なし騎士を飛ばして、光に変えている。
ひいっ、ブラン、やめて、手とか足とか飛ばさないで!腐った首を咥えるのはやめてーっ。それ絶対虫がわいてるよね。ばっちいから!
アルと獣道の4人が、僕たちのところまで下がってきた。あまりのブランのはっちゃけぶりに、みんなドン引きだ。
それからもちぎっては投げ、ちぎっては投げして、さんざん暴れまわった後、5体残してブランが帰ってきた。
『(1人に1体残しておいたぞ)』
「止まって!クリーン、クリーン、クリーン」
「ユウ、お前、それは、倒してもらったのに、それはさすがに、」
「1人に1体ずつ残してくれたらしい、行こう」
「あ、ああ、まずは倒そうか」
ブランにクリーンをかけまくって、口の中にもかけて、満足がいったところで、僕の横に来てもらった。シリウスの3人が呆れているが、これだけは譲れないのだ。
ブランありがとうね。抱き着きたいけど、クリーンしたけど、モンスターだから全部光になって消えるけど、あれに触れたと思うと抵抗がある。
獣道とアルで残った5体を無事倒しきり、宝箱が現れた。
「ユウ、開けるか?お前の従魔がほとんど倒したんだし」
「ユウはここのドロップ品には絶対に触らない。クリーンをかけないと、アイテムボックスにも入れてくれない。スリナザル、開けてみるか?」
「えっ、俺何もしてませんが」
「坊主、開けてみろ、罠はない」
宝箱には9本の剣が入っていた。全部にクリーンをかけてから、アルがブランに鑑定をお願いした。
鑑定の結果、スリナザルくんがもっているのが魔剣で、あとはSランクの剣だった。
ほとんどブランが倒したのだから、ドロップ品は全部僕たちのものだというが、僕は可能な限りアイテムボックスに入れたくない。誰か引き取ってくれるなら引き取ってほしい。
アルが、使える剣があれば引き取ってくれ、ユウはこのボス部屋のドロップ品には触りたくないんだ、と獣道とスリナザルくんに言ってくれた。
今度の魔剣はアルと相性が良く、形も少しの慣れは必要だが使えるようなので、アルのものになった。僕がアルの持った剣から逃げているのを見て苦笑している。
獣道の4人もそれぞれ1本ずつ、気に入ったものがあったようだ。獣道は4人とも剣を使う、珍しいパーティーだ。
スリナザルくんも、残りから1本選んだ。何もしていないのにもらえないという主張は、獣道4人による俺たちだって1体しか倒してないんだから気にせず選べよプレッシャーに負けた。シリウスの中で僕だけもらえない、という言葉も、お前がここでいい剣を手に入れれば、残りのメンバーの装備に金をかけられるだろう、という反論に負けていた。
残りの3本は、僕たちのものになるのだが、僕の触りたくないという思いを汲んで、アルが自分のマジックバッグに入れてくれた。あの騎士が使っていたものがドロップしているかもと思うと、絶対に触りたくないのだ。
ここのボス部屋は、入る人によって難易度が変わり、入る人が強いほど難易度が上がり、難易度が高いほどドロップ品もいいのではないか、と獣道が推測した。
僕たちは2回魔剣をここで出しているが、他には聞いたことがない。しかも首なし騎士の団体というのも聞いたことがないそうだ。ブランがいるから難易度がMAXになって団体になるのか。
ブランは今回も楽しかったみたいでまた来るぞと言っているが、僕は嫌だ。でもブランの望みはできる限り叶えたい。
むくれている僕を宥めようとアルが近寄ってくるけど、腰が引けた僕に、アルが苦笑しながら自分にクリーンをかけたので、僕もアルに満足のいくまでクリーンをかけてから抱き着いた。
翌日からシリウスのみんなとブロキオンに行くので、今日は買い出しだ。起きられてよかった。
「あれ?」
「ユウ、アルと痴話げんかしたんだって?心配して来てみたのに、ギルドでイチャイチャしてたっていうし」
「お久しぶりです。無事仲直りしました」
「みたいだね。前よりべったりだし。ブロキオン、俺たちも一緒に行っていい?アレックスにカークトゥルスの情報も聞きたいし」
シリウスのみんなと買い出しの待ち合わせ場所に行ったら、獣道の4人がいた。
心配してくれたのは本当みたいだけど、ここに来たのはカークトゥルスに行く途中だった。シリウスとばったり会って、明日から僕たちとブロキオンに潜ると聞いて、一緒に行きたいと、ここで待っていたそうだ。
シリウスもアルもブランも、みんないいみたいなので、一緒に行こう。
「痴話げんかだったのかなあ」
「深刻な悩みも、終わってみれば、ただの痴話げんかでしょ」
「コーチェロ、なんか容赦なくなったな」
「だってユウくん、遠回しに言ったって気付かないし。アルさんは甘やかすし」
「アハハッ、坊主よく言った。アレックス、お前も怒られてるぞ」
アルは苦笑しているし、ブランも同意している。なんでふたりとも僕の味方じゃないの。
今日はお日柄も良く、ブロキオンの攻略日和です。
僕はこのダンジョン、正確には最下層に行きたくないけど、ブランが気に入っているからしょうがない。
ダンジョンの入り口で周りから、あいつらより戻したんだなとか、結局元さやかよとか聞こえるけど、気にしない。アルの腕にぴったりくっついて、気にしないったら気にしない。
人がそれなりにいる上層は、向かってくるモンスターのみ倒して、進むことを優先し、中層から本格的にモンスターとの戦闘を始めた。
中層の最初はシリウスも単独で倒せるので、獣道もアルも、あまり手を出さずに見守っている。
シリウスの剣士であるスリナザルくんが使っている剣は、ここのドロップ品を僕たちが売ったものだ。今回いい剣があれば引き取りたいと、頑張っている。
戦闘が終わると、獣道からアドバイスをもらって、次の戦闘で試してみている。こういう真面目なところが、着実にランクを上げている理由なんだろうな。
下層に入ってからは、シリウスも僕と一緒に見学だ。
食事は、セーフティーエリアが空いている中層からは、カーペットを敷いて、真ん中に小さなテーブルを置いて食事を乗せ、カーペットに座って食べるガーデンパーティー形式だ。ハザコアで初めてシリウスと2つのパーティーとダンジョン攻略をした時に、このスタイルを見た冒険者にガーデンパーティーかと突っ込まれて以来、僕はガーデンパーティー形式と言っている。
カーペットはもちろん土足厳禁だし、カーペットに上がる前にクリーン必須だ。
この世界は、食事前に必ず手を洗うというだけで潔癖だと思われるくらい、衛生観念が低い。クリーンの魔法1回で終わるのにだ。
僕たちしかいないセーフティーエリアで、カークトゥルスの攻略情報を話している。
階層、フロアボスとボスの特徴や弱点、ドロップするマジックバッグの種類など、上層はギルドにたくさん情報があるはずだけど、下層はギルドの情報とアルの情報はそんなに変わらないはずだ。
獣道は、容量小の時間遅延があるものと、容量中を持っていて、容量大が欲しいそうだ。
「ユウ、どうした?お前のアイテムボックスに比べたら小さいかもしれないが、容量大は小さい部屋1つくらいは入るから、冒険者にとっては喉から手が出るほどほしいものだぞ」
「Bランク昇格祝いに、シリウスのみんなに容量大のマジックバッグを1つずつあげたんだけど、もしかしてやりすぎだった?」
「まじか?!」
「ユウ、それバレたらシリウスの命が危ないよ?」
「アレックス、お前なんで止めないんだ」
「その時アルはいなかったんだけど、でもアルは容量特大の時間遅延をあげるつもりだったよね?」
「俺は3人に1つのつもりだったんだ」
「どっちにしろ、お前らアイテムボックスに慣れすぎだ」
それからどうやって偽装すべきか、どれに何を入れておくかをみんなで議論して、通常使うものは全て小のマジックバッグに入れて、大のマジックバッグは、非常用の食料や水、予備の予備の武器、日ごろ使わないものなどを入れ、宿の部屋などでしか使わないのがいいだろう、という結論になった。ドロップ品も、人がいない場所でしか大のマジックバッグには入れないほうがいいだろう。
容量大を、容量小として使うという案もあったが、どれくらい入るのか把握していないと、そんなに入るはずがないとバレる可能性があるので、それはボツになった。
カークトゥルスのドロップ品で、今後マジックバッグがもっと出回れば状況も変わるだろうから、それまでは隠しておく必要がある。
「めんどくさくなっちゃって、ごめんね」
「ユウくんの気持ちは嬉しかったよ」
そう言ってキリシュくんが慰めてくれた。コーチェロくんに怒られる訳だ。ほんとごめん。
最下層のボス部屋を前に、シリウスと僕の護衛について、ひと悶着あった。
獣道がひとりは残るべきだと4人でくじ引きし始めたのが、アルと僕はブランがいれば平気だと思っている。
「ブランが結界張ってるから平気だよ」
「は?結界?!」
「ユウくん、それは言ってもいい情報?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
コーチェロくんに冷静に突っ込まれてしまった。このメンバーはすでに知っていると思っていたけど、そういえば言ってない気もする。
結界は空間魔法に属すると言われているが、人には使えない。空間魔法を持っている従魔は今まで報告されていないらしい。
「なあ、ドロップ品の鑑定しているの、ユウのアイテムボックスで分かるのかと思ってたが、もしかして、その、ウルフか?」
「うん。内緒でお願いします」
「なんかいろいろ規格外だと分かったから、護衛は任せた」
獣道のリーダーが強引に話し合いを切り上げた。これ以上触れてはいけないと思ったらしい。こういうところが、獣道のすごいなと思うところのひとつだ。豪快なのに、細やかに気を遣う。
さて、僕がとても入りたくない最下層のボス部屋だ。
ブロキオンのボスは、首なしの馬に乗った首なし騎士だ。何体いるかはその時によって違う。
僕はこの部屋に入りたくないくらい、首なし騎士が嫌いだ。その持ってる頭、腐ってるよね。部屋ごと燃やして火葬してほしい。
ボス部屋に全員入り、扉が閉まったところで、光が集まりボスが現れる。
「ええ?!」
「なんだよこれ!」
「無理だろ!」
獣道のメンバーが叫んでいるが、僕も叫びたい。首なし騎士の団体様がいる。ただでさえ正視したくない見た目なのだ。ほんとやめて。
隣でシリウスの3人が真っ青になっている。分かるよ。
「気持ち悪いよね。なんであんなにうじゃうじゃいるの」
「ユウくん、そうじゃなくて……」
「ブラン、俺たちじゃ全部は無理だ。倒してもらえるか」
『(任せろ)』
アルがブランに助けを求めたけど、前回もブランがここで楽しくなっちゃったんだよな。今回は控えめにお願いしたい。
ブラン曰く、それなりに骨のあるヤツが集団で出るのは珍しい、らしい。なのでブランはここが気に入っている。
ブランは飛び出して行くと、片っ端から、咥えて投げ飛ばしたり、爪から斬撃を飛ばしたりし始めた。
ひゃっはーって言ってそうなくらい楽し気に、首なし騎士を飛ばして、光に変えている。
ひいっ、ブラン、やめて、手とか足とか飛ばさないで!腐った首を咥えるのはやめてーっ。それ絶対虫がわいてるよね。ばっちいから!
アルと獣道の4人が、僕たちのところまで下がってきた。あまりのブランのはっちゃけぶりに、みんなドン引きだ。
それからもちぎっては投げ、ちぎっては投げして、さんざん暴れまわった後、5体残してブランが帰ってきた。
『(1人に1体残しておいたぞ)』
「止まって!クリーン、クリーン、クリーン」
「ユウ、お前、それは、倒してもらったのに、それはさすがに、」
「1人に1体ずつ残してくれたらしい、行こう」
「あ、ああ、まずは倒そうか」
ブランにクリーンをかけまくって、口の中にもかけて、満足がいったところで、僕の横に来てもらった。シリウスの3人が呆れているが、これだけは譲れないのだ。
ブランありがとうね。抱き着きたいけど、クリーンしたけど、モンスターだから全部光になって消えるけど、あれに触れたと思うと抵抗がある。
獣道とアルで残った5体を無事倒しきり、宝箱が現れた。
「ユウ、開けるか?お前の従魔がほとんど倒したんだし」
「ユウはここのドロップ品には絶対に触らない。クリーンをかけないと、アイテムボックスにも入れてくれない。スリナザル、開けてみるか?」
「えっ、俺何もしてませんが」
「坊主、開けてみろ、罠はない」
宝箱には9本の剣が入っていた。全部にクリーンをかけてから、アルがブランに鑑定をお願いした。
鑑定の結果、スリナザルくんがもっているのが魔剣で、あとはSランクの剣だった。
ほとんどブランが倒したのだから、ドロップ品は全部僕たちのものだというが、僕は可能な限りアイテムボックスに入れたくない。誰か引き取ってくれるなら引き取ってほしい。
アルが、使える剣があれば引き取ってくれ、ユウはこのボス部屋のドロップ品には触りたくないんだ、と獣道とスリナザルくんに言ってくれた。
今度の魔剣はアルと相性が良く、形も少しの慣れは必要だが使えるようなので、アルのものになった。僕がアルの持った剣から逃げているのを見て苦笑している。
獣道の4人もそれぞれ1本ずつ、気に入ったものがあったようだ。獣道は4人とも剣を使う、珍しいパーティーだ。
スリナザルくんも、残りから1本選んだ。何もしていないのにもらえないという主張は、獣道4人による俺たちだって1体しか倒してないんだから気にせず選べよプレッシャーに負けた。シリウスの中で僕だけもらえない、という言葉も、お前がここでいい剣を手に入れれば、残りのメンバーの装備に金をかけられるだろう、という反論に負けていた。
残りの3本は、僕たちのものになるのだが、僕の触りたくないという思いを汲んで、アルが自分のマジックバッグに入れてくれた。あの騎士が使っていたものがドロップしているかもと思うと、絶対に触りたくないのだ。
ここのボス部屋は、入る人によって難易度が変わり、入る人が強いほど難易度が上がり、難易度が高いほどドロップ品もいいのではないか、と獣道が推測した。
僕たちは2回魔剣をここで出しているが、他には聞いたことがない。しかも首なし騎士の団体というのも聞いたことがないそうだ。ブランがいるから難易度がMAXになって団体になるのか。
ブランは今回も楽しかったみたいでまた来るぞと言っているが、僕は嫌だ。でもブランの望みはできる限り叶えたい。
むくれている僕を宥めようとアルが近寄ってくるけど、腰が引けた僕に、アルが苦笑しながら自分にクリーンをかけたので、僕もアルに満足のいくまでクリーンをかけてから抱き着いた。
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