68 / 72
第三章:来たる日に備えて
武術家は戦闘狂
しおりを挟む「さぁ、遠慮はいりませんヨ!
思いっきりドウゾ!
あ、ちなみに僕は、
ちょっぴり手加減して蹴りましたけどネ。」
ヤマトは終始笑顔で、
最後は、内緒話をする子供みたいに
コソコソと、派手男に語りかけた。
(あの豪快な蹴りが、手加減したもの…。)
本当なら、ヤマトの実力は、相当なものだ。
(本当、なんだろうな…。)
出会ったばかりだけど、
付箋を読まなくても、不思議と、
”ヤマトは本当のことを言っている”
そう、思えた。
「ふざけんのも大概にしろよ…!」
派手男は、怒りを隠すこと無くつぶやき
「戦う前に、一撃ドウゾだぁ?
お前ら卑怯者の言う事なんて、知らねーよ!
俺はもう、勝手にやらせてもらう。
勅令するーーナナ、滑り寄れ。」
ーービュン!!
派手男の勅令。
勅令と同時に、
オーバーのヘビが現れ、
怒ったように、激しく宙を舞った。
「いいですネ!
アナタ、やっぱり強い人の気配がスル!」
派手男の怒りに任せた勅令を前にしても
ヤマトは相変わらず、のんきな反応を見せた。
(ヤマト…大丈夫、なのか…?)
俺は、さっき受けたダメージ的に
今ヤマトに加勢することは、たぶん難しい。
何も出来ない、もどかしい気持ちで、
それでも何か出来ないか、と
ひとまず、派手男の付箋を読んでみる。
すると
【何が一撃だ。】
【もう手加減はしない。】
【一撃どころか、一気に片付けてやる。】
派手男の、容赦ない怒りが見て取れた。
「ヤマトっ!ヤツの攻撃は…っ!」
俺が、今読んだことを、
少し離れたヤマトに伝えようと、声を張り上げた時
「シオンっ!
ありがたいデスが、
僕の戦いに、口出しは無用デス!」
俺より、さらに大きなヤマトの声で
俺の助言は、見事に遮られた。
ヤマトの付箋には
【強い人との1対1!】
【山を出た甲斐があったネ!】
【チカラ…だったっけ?】
【僕の武術、通用するカナ?】
と、書かれていて。
文字だけでも、
戦いを楽しんでいることが、伝わってきた。
それに…
(チカラを…知らない…?)
「あくまで正々堂々のフリ、か?
俺は、そんなの関係ねーぞっ!!」
派手男は、激しく左手を振り下ろし。
ーーグォン!!
怒るヘビの周りに、
真っ黄色の、太い紐が現れて。
まるで、大蛇のように
ウネウネとトグロを巻いて、積み重なっていく。
「これが、”チカラ”…
圧倒的なパワーを感じマス!」
ヤマトは、嬉しそうにつぶやき
「まずは、一撃…。」
そう言って、静かに目を閉じた。
「…っ!おいっ!」
「バカがっ!」
俺と派手男が、同時に口を開いた瞬間
ーーギュン!!
「ぐっ!」
「ヤマトっ!!」
無抵抗なヤマトは、一瞬で
あの大蛇のような紐に巻き付かれて、
思いっきり、
その頑丈そうな身体全体を、締め上げられた。
「ははは!
ほんとに何もせず
ただ捕まるなんて、バカなやつだなーおい!
おいバカ!
一撃ってさー、
こういう締め上げてるやつは、どうなんだ?
まだ一撃ってことで、いいんだよなぁ?」
派手男は、まるで楽しむように
左手を、優雅に振ってみせて。
「ぐはっ!!」
そんな派手男の指示で、
締め付けが強くなったのか、
ヤマトの口からは
さっきより大きなうめき声と、少しの、血が。
(まずい…!内蔵にも、ダメージが…!)
俺が、何とか加勢しようと
身体に力を入れ、
立ち上がろうとした、その時
「一撃の定義、デスカ…っ。
こんな技は、初めてなので…
考えたことが、ありませんデシタ…っ。
この世界は、
まだまだ面白いことが、沢山…ですネ。
貴重な一撃、アリガトウ…っ!」
ヤマトは苦しそうに、
でも、ハッキリと声を出した後
「ヤァッ!!」
さっきまでの低音とは違った
少し高い声で、掛け声をしたかと思うと
ーードガァ!!
彼の、唯一、
締め上げかれていなかった…
頭で。
思いっきり、
大蛇のような紐に、頭突きを食らわせた。
『キュゥゥゥウ!!!』
紐のダメージが、
オーバーにも伝わったのだろう。
派手男の隣、オーバーのヘビが、
独特な鳴き声で、苦しそうに悶え
「ナナっ!!」
派手男の意識が逸れた、その瞬間
「まだまだ、デスっ!
ヤァッ!!」
緩んだ締め付けを見逃すことなく
ヤマトは、出会った時に見せた、
あの見事な蹴りを、また、紐にお見舞いした。
ーードンッ!!
離れている俺にも伝わる、
地響きのような衝撃。
その衝撃と共に消えていく紐を、悔しそうに睨んで
「くっそ!!!」
派手男は、思いっきり地団駄を踏んだ。
「ハァハァ…。
これが、チカラを使った実戦…!
内蔵が、ボロボロになってしまいマシタ…!」
口から、少し血を流したまま
ヤマトは、笑顔で、
でも苦しそうな呼吸のまま話す。
「でも…
勝負は、まだまだこれからですネ。
次は、僕からいきますヨっ!」
「おいっ!そんな身体でっ!」
俺の静止も虚しく、
ヤマトは口から血を流したまま、
嬉しそうに、派手男に突っ込んでいく。
「ちっ!
作戦も、練らせてくれねーのかよっ!
勅令するーーナナ、滑り寄れ!」
派手男の勅令と同時に、
また、あの黄色い紐が現れた。
さっきの大蛇サイズより、
一回り小さく感じる質量だが、
その分、素早いようで。
さらに、その本数も、1本ではない。
(3…いや、4本か?
速すぎて、目で追いきれないっ…!)
遠くから見ている俺でも、こんな状態だ。
近くで戦っているヤマトには、
とてもじゃないが、対応出来ないスピード…
だと、思ったが。
「ヤァッ!タァッ!!」
生き物のように、
それぞれが別の動きをする紐を
ギリギリで見極め、的確に
蹴りや、殴打を入れているのが見えた。
「まるで、山でしてきた修行デス!
他にも何か、無いんデスカっ?
チカラって、すごいんですよネっ!?」
ボロボロの身体で、
血を吐きながら、
それでも楽しそうに、目を輝かせながら、
ヤマトは子供みたいに、派手男に問いかける。
「こいつ、舐めやがって…。
そんなにお望みならなー…
俺のとっておきの技、見せてやンよっ!!」
そう言った派手男の周りを
今日1番の、濃い、黄色のモヤが包み込む。
(ハッタリじゃない、本気だ…!)
俺は、一気に変わった
ピリ付いた空気に、息をのみ…
「ハイっ!!
よろしくお願いしマスっ!!!」
ヤマトは、嬉しそうに
何故かその場で、深々とお辞儀をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる