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第二章:新しい世界
黒の悪魔が死ぬまで
しおりを挟む「まあ、そういうわけよ!」
ノヴァンも、ニヤッと笑って。
椅子から立ち上がり…右手を、サクヤと同じように、俺に差し出した。
そして…
「だから言ったろ、
うちに入らなきゃ、…危険分子ってことで、”死刑”、なんだって。
要するに…黙って入ればいいんだよ、入れば。黙って俺に、任せとけ!」
ハハハ!と、心底楽しそうに笑うノヴァン。
「ほんっと、アナタって…緊張感のない人ですね。」
サクヤが、振り返って、呆れた様子でノヴァンに告げる。
俺も…同じことを思ったから、キレイに代弁してくれて、スッキリした。
「サクちゃんが、考えすぎなだけだって~。
ま、大丈夫大丈夫!
組織に入ったら、俺がちゃ~んと、”監視”してやるからさ。あっ!”保護”…だったっけ!てへっ。」
「サクちゃんって呼ぶな!あと、その仕草もキツイ!」
…そんな、楽しそうな2人やり取りを、見つめる。
俺…
この人たちを、信じても…良いのかな。
俺は…
…死ななくて、良いのかな。
でも…。
「アオ兄…。」
色々なことを考えながら、無意識に…そう、つぶやいていた。
「…ヨウ君。」
サクヤが、俺のつぶやきを聞いて…悲しそうに、目を伏せる。
俺は…、俺だけが…。
生きていて、良いんだろうか?
大切なひとのいない、この世界で。
この人たちの手をとって…それで…。
少しの、沈黙。
薄暗い部屋で流れた…重い空気を、やぶったのは、
「お前さ…。」
サクヤの少し後ろに立つ、ノヴァンだった。
「さっき、俺が、
『生きたくて、”ああ”なったんじゃ、ないのか』って聞いた時、
…『みんなのためなら、死んでもよかった』って、言ったよな?」
真剣な表情で、ノヴァンは、真っ直ぐに俺を見つめる。
俺は、そんなノヴァンの視線から、目をそらせないまま…黙って話を聞く。
「誰かのために…死ぬ覚悟ができるやつはさ、
”誰かのため”なら……生き続ける覚悟だって、できるだろ?
”黒の悪魔”の被害者を、これ以上出さないために。
お前にしかできないこと、俺たちと一緒にさ。
頑張ろうぜ、
”誰かのため”に、”黒の悪魔が死ぬまで”。」
(誰かの、ために…。黒の悪魔が、死ぬまで。)
「そうですよ。
ヨウ君の、”ニセモノの黒の悪魔のチカラ”は
ホワイトノーブルの、ブレイズによって、引き起こされたようなものです。
君は被害者です。責任を感じる必要は、ないんですよ。
それに、これは…きちんと確認をとってから、言おうと思ったのですが。
君の幼馴染の…ヒマリ・プリマナは、生きている可能性が、高いです。」
「えっ!ヒマリが…!?」
俺は、信じられない事実に耳を疑った。
「ええ。ホワイトノーブルは…当初の目的通り、
”禁色”の彼女を、あの場から連れ去ったようです。」
「そう、なのか…!良かった…ほんとうに…。」
「それに、これもまだ調査中ですが…
あの日の惨劇…いつの間にか、世間では【黒の再来】と、呼ばれるようになりましたが…
…あのミタ山での【黒の再来】で、亡くなったのは…ヒュー・ブレイズの攻撃を直接受けた、2人だけです。
つまり、君のチカラで、犠牲者は、出ていないんですよ。」
「え…。」
俺は…。誰も…?
本当に…?
「君の発現したチカラは、7年前の【黒の誕生】には、遠く及びません。
7年前、リビ山は…その全て、山まるごと1つ、一瞬で吹き飛ばされましたが…
今回、同じような大きさのミタ山は、せいぜい、その斜面が…3分の1ほど、削り飛ばされた位です。
あとは、目撃者によると…君が、最後に爆発させた”紅色の光”も、そのほとんどが…空中に、放電していったそうです。
こういった、チカラの弱さや、使い方も、
ヨウ君が、本当の意味で”黒の悪魔ではない”という、根拠になっているんですよ。」
サクヤが、優しく微笑む。
そうか…俺は…、みんなを…。
「良か、たっ…!
俺、みんなを…殺し、ちゃったのかって。おれっ…。」
安心したのか、それとも嬉しかったのか…
頬を伝う涙の理由が、俺には、ハッキリとは分からなかった。
「ネタバラシ、早いんだからなー全く。」
調査結果、確定前なのにいいの~?と。
ノヴァンは、少し面白くなさそうに言う。
「だって…!これ以上…、ヨウ君の…傷つく顔が…見れなくて…。」
サクヤは、少し申し訳無さそうに、ノヴァンを振り返った。
「お前なぁ…。ほんと、優しすぎるのも程々にしとけよ?ったく…。
…ヨウにはさ、
”俺のせいで死んだやつらの分まで…、俺、頑張る!!!”…みたいな。
アツ~イ覚悟、期待してたんだけどな~。」
ノヴァンは、頭をくしゃくしゃと掻きながら。
顔は伏せているため、その表情は、分からなかった。
そしてそのまま、椅子に座る俺の目の前に立ち。
上から覗き込むように、こう言った。
「じゃあ、まぁ!こうなったからにはさ、
せっかく生きてた幼馴染も…ついでに、世界も。
全部まとめて、お前が救ってやれ!
”誰かのために、死ぬ覚悟ができるやつ” は、
そんくらいおっきな、”生き続ける覚悟”も…できんだろ?」
ノヴァンが、ニヤッと笑った。
(俺が、ヒマリを…みんなを…守る…!)
(…全ての元凶、”黒の悪魔が死ぬまで”!)
そう、胸に…湧き上がる想い。
その、新たに湧き上がったアツイ想いを、2人に伝えようと。
口を開きかけた…その時。
「あ!そういや、サクにも言い忘れてたことがあったんだった!」
俺が、口を開く前に。
ノヴァンが、片方の手で、”ポンッ”と、もう片方の手のひらを叩いて、こう言った。
「さっきのお前の説明、間違ってる所があるわ。
ヒュー・ブレイズの攻撃で、”本当の意味で”、亡くなったのは…1人、だけだぞ。」
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